揺れる思春期親子の心に、 道東・弟子屈の「自然」と「人」が響く -Vol.2-|STORY

学校終わりの金曜日の夜から訪れた、モデル佐藤純さん親子の道東・弟子屈旅。1日めは食事をしてゆっくりと宿泊し、2日めは屈斜路湖のカヌー体験、そして和琴半島をトレッキング、夜は摩周湖の展望台で星空体験を――。大自然と人との出会いを楽しむ道東・弟子屈旅3日めは……。


モデル佐藤純さん親子の道東・弟子屈旅3日め――。まず、最初に訪れたのが、子供たちが楽しみにしていた渡辺体験牧場。渡辺体験牧場は、摩周山麓の草原に70haの土地と120頭の乳牛を持つ牧場です。

案内してくれたのは、牧場の社長・渡辺隆幸さん。

原始林を開拓してこの土地に牧場を作った両親から受け継ぎ、2代目社長となった渡辺さんは、「多くの人に、牛や酪農について知ってもらいたい」と体験型の牧場作りました。乳しぼり体験やエサやり体験、トラクターでの壮大な牧場散歩にバターやアイスクリーム作り……、子供だけでなく大人も体験に加わり、満面の笑みでそれを楽しんでいる様子を目にします。

まずは、トラクターで牧場散歩。トラクターの横で牛たちがのんびりと日向ぼっこをしています。

弟子屈町は、この土地に住む6,900人弱の人口より、牛の数のほうが断然多いのだそうです。だから、最初は「わぁ! 牛!」とはしゃいでいた12歳の長女も、「あっ、あそこにも!」「ここにも!」「いーっぱい!」と指をさすのに疲れるほど。

そして、「自由時間でーす。牧場の広さを、是非体感してみてください」という渡辺さんの声と共に、トラクターが牧場の真ん中で止まりました。すると、どこまでも続く広い草原を、子供たちがが「わーっ!」と駆け出し、それに純さんも加わって、鬼ごっこが始まって……。そして、「気持ちいい!」と草の上に寝転がって空を見上げたりと、それはもう、都会にはない解放感に浸ることしばし……。14歳の長男君は、「広いなぁ!」と何度も感嘆の声をあげていました。

そして、次はエサやり体験。牧草を手に柵に近寄ると、牛がぬーっと顔を出します。

「牛は草だけを食べて生きているから、獰猛じゃなく優しい性格なんだよ。さぁ、エサをあげてごらん」という渡辺さんの言葉に、動物好きのJちゃんは、「可愛い!」と牛の顔をなでながらエサやりに挑戦! そして、牛たちも、ゴム手袋をしたXちゃんの手を、「ありがとう」と言わんばかりにベロベロとたっぷり舐めていました。

その後は、乳しぼりにトライ。まずは、渡辺さんが見本を見せてくれます。

「ここにいる120頭の牛たちは、みんな雌牛です。雄牛は、食肉として育てられますが、雌牛はそのお乳が皆さんの飲む牛乳やバター、アイスクリームとなり、そのために育てられます。 ここにいる牛たちはみんな家族。一頭、一頭名前を付けて、大事に大事に育てています。皆さんは、1日に牛がどのくらいのお乳を出してくれるか知っていますか? 1日20リットルから50リットルもの量を出してくれるんですよ。雌牛は、4歳までに平均5回子供を産みます。その子牛のためのお乳を、半分ほど分けてもらい、牛乳やバターにします。そして、お乳が出なくなった牛は、最後には売られて、ハンバーグなどのミンチになってしまいます。毎回、大切に育ててきた牛とサヨナラするのは、心が痛いですね」

そんな牛への感謝と愛がひしひしと伝わってくる渡辺さんの言葉を聞いたXちゃんは、牛のお乳を搾りながら、「ありがとう」と、牛のお腹をなでていました。

乳搾りのあとは、バター作り、アイスクリーム作りを。専用の瓶を10分ほど振ったり、容器をクルクル回したりすると、バターやアイスクリームが出来上がります。「牛乳が原料だって知っていたけれど、こうやって自分でバターやアイスクリームを作ると、ホントだ! って実感するね」と、T君の目も真剣。

「それでは、腰に手を当てて斜め45°に体を向けてー。牛さんに感謝して、いただきます!」

渡辺さんの合図とともに、最後は渡辺牧場で朝一番に搾った「牛のおっぱいミルク」にゴクゴクと喉を鳴らして――。牧場体験の数時間、子供たちは、多くの牛たちはもちろん、「どこで身に着けたの!?」というお笑い芸人並みの渡辺さんのトーク術に、すっかり魅了されていました。

帰路へと女満別空港に向かう前、「ここは、噂に聞いて絶対行きたい!」と、純さんの強い希望で訪れたのが、弟子屈の町の人たちに愛されるお菓子屋さん「風月堂」。40年お菓子作りをする鈴木信一さんと由美子さんご夫婦が営むお店です。

店のウィンドウに並ぶお菓子を見て、純さんが「何だか懐かしい感じのするお菓子ばかりですし、お店のパッケージやウィンドウの文字も全部手書きで何だかほっこりしますね」と純さんがお店の中の由美子さんに話しかけました。

「地場産品のお菓子に限っては、私がパッケージに文字や絵を書いているんです。いやぁ、どこかにお願いすると、デザイン料がかかっちゃうでしょ(笑)。朝5時からお菓子を作っているお父さんに対して、私ができるのはパッケージ作りやPOP作り。私は、お父さんのお菓子の一番のファンだから」

風月堂に並ぶお菓子の懐かしさと温かさは、そんなご夫婦二人が作るハーモニーが醸し出すもの。結婚して45年になるというご夫婦に、「仕事もプライベートも、ずーっと仲良くいられる秘訣は?」と尋ねてみると、「一つ年上のお母さんが、毎日一生懸命やっている姿を見ているからね」と信一さん。そして、「お父さんは、面白くて優しいから。特にダジャレがね(笑)」と由美子さん。

すっかりご夫婦のファンになってしまった純さんは、クルクルとしたパーマに白襟を覗かせ、花柄のエプロンをするキュートな由美子さんに「オシャレですね!」と興味津々に話しかけます。「お店にどんなスタイルで立とうかしらなんて、一応考えるのよ」と、はにかみながら応える由美子さん。

年齢を重ねてもなおオシャレ心を失わず、ご主人をイキイキとサポートする由美子さんは、同じ女性として、とても魅力的。「もっと、お話お聞きしたいです!」と、女同士しばし立ち話を始めました。

「お父さんは、お菓子作りにしか興味がなくて……(笑)。でも、そんなお父さんの作るお菓子の良さを一番知っているのが、私。だから、それをお客様に伝えるのが私の役目。でも、ときどきお父さんもコントロールが効かない時があって……。そんな時は、私も爆発する時がありますよ。それで、一人で摩周湖や硫黄山を観に行くの。そうすると、何だか心がスッキリして、皆が観光に来るような壮大な自然の中に住める私は幸せだな、と思えてくるんです。そしてまた、お父さんと笑顔で向かい合える」

そんな由美子さんの言葉に、「40代も半ばを迎えた今、由美子さんの言葉は、とても心に響きます。20年後、私も由美子さんのようにチャーミングでイキイキとした女性でいたいです」と純さん。

そして、ご夫婦お二人の温かさのこもったお菓子をたんまりと買い込んだ純さんは、「信一さん、由美子さんご夫婦のお話に、美味しいお菓子、旅の最後に、私にとって最高のお土産が出来ました!」と、とても満足そうでした。

弟子屈は、壮大な自然に加え、魅力的な人に出会える町。「帰りたくなーい!」と空港で駄々をこねる二人に、「私も!」と答える純さん。子供も大人も、時には日常から解放され、こんな時間を持つのも大切。これから迎える美しい冬の季節も、出会う人々がポッと心を暖かくしてくれるに違いありません。

 
撮影/BOCO ヘア・メーク/久保フユミ スタイリスト/大碕ちほ 取材・文/河合由樹

<佐藤純さん>ジャケット¥47,300ニット¥26,400(ともにラコステ)<長男>ジャケット¥17,600ハット¥5,280(ともにニューエラ)カットソー¥8,500(エルキュールギア)<長女>ベスト¥28,600(エーグル)パーカ¥7,920キャップ¥3,520(ともにニューエラ)

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