おこもりレシピ_分とく山 野﨑洋光さんのやり過ごしたい日のごはん
新生姜の醤油漬けをごはんにのせるだけでいい。
トマトと和えたり、温泉卵を添えても美味しい。
「料理屋の料理は酒に合う料理、家庭料理はごはんに合う料理。目指す方向が違います。家庭料理のよさは、シンプルに調理して食べられること。やりすぎないからこそ、美味しい。みなさんは自信がないから、情報に振り回され、〝こうでなければならない〞と思い込んでしまっているのでしょう。情報を知っていることと、自分が美味しいと思うのはまったく別です。他人の美味しいではなく、自分が美味しいと思うものを好きに食べればいい。それがごはんに何かをのせただけのひと皿でも、十分満たされると思います」
そんな野﨑さんが「毎日これでいい」というのが、白いごはんと新生姜の醤油漬けです。
「私が一番好きな食べ物は白いごはんです。ただし、ごはんは一瞬で酸化するので、ごはんだけで食べると胸焼けがします。なので、アルカリ性の食べもので中和することが必要で、昔から梅干しを食べるのは、そういう理由があるんです。生姜もアルカリ性食品です。大切なのは、なぜ、そうするのか? を自分で考えること。理由がわかれば、料理はおのずとシンプルになります」
新生姜の醤油漬けは作り置きができ、そのままごはんにのせたり、トマトと和えたり、温泉卵と合わせたり、とアレンジも自由自在。ねぎや大葉などの薬味を添えると「なお体にいい」と野﨑さんはアドバイス。
「食べることの本質は、病気にならない体を作ること。自分の体は自分で守るしかありません。何を食べればいいのか。正解は自分の中にあります。自分が家元になればいい」
新生姜の醤油漬けの作り方
保存瓶に新生姜約500g を幅1㎝ほどのぶつ切り にして入れ、ひたひたの 醤油300 ~ 400 ㎖を注いで3 日ほど漬けておく。冷蔵庫で約1 カ月保存可能。
野﨑洋光さん
1953 年福島県生まれ。武蔵野栄養専門学校を卒業後、数店で修業の後、1980 年に東京・西麻布「とく山」の料理長に就任。1989年に「分とく山」を開く。近著に『おいしいごはんの 勘どころ』(学研プラス)がある。https://waketoku.com/
写真/長野陽一 取材・文/和田紀子 構成/松本朋子
※2019年8月号掲載