「夢を見ない人の傾向」「寝言に返事はNG?」睡眠と夢の疑問6つ

私たちが日々見る夢。大半は忘れてしまうけれど、時に鮮明に覚えていたりすることも。夢に登場するキーワードには実はメッセージが隠されているようで…。その気になる内容や疑問を深堀りしてみました。

Q. 夢は何のために見るのでしょうか?

鳥類や哺乳類は夢を見る睡眠があり、進化の過程で発達し大きくなった大脳が毎日五感を使って情報をフルキャッチしているため、それらを整理するために夢を見るようになったと考えられています。心理学的な見解では、①日中に得た膨大な量の情報をきちんと記憶する記憶の整理②強い感情をともなう記憶、感情処理のためと考えられています。夢は記憶の固定にも大切で、重要な情報を再整理、将来必要な事態に備えて記憶情報をもとにシミュレーションや準備をすると考えられています。

Q. 悪夢は何かの警告ですか?

夢は記憶がベースになっていて、その人の性格やこれまでの体験が関係するため、誰かに見せられるのではなく、あくまでその人自身から出ているサインと心理学ではとらえています。自分が何かに心理的に追い詰められるような現実的ストレス、また、鼻づまりの人が息のしづらさからプールで溺れる夢を見たりするような身体的な状況も夢のトリガーに。夢は主に心理的か生理的な理由で見るので、自分が今、何を気にしているのか、体の調子はどうかを知るいい手がかりになります。

Q. いい夢や見たい内容はどうすれば見られますか?

そもそもいい感情の夢というのは、記憶に残りにくいものです。焦っていて困ったり、とてつもない恐怖など、感情がはっきりしているほうが記憶に残るし思い出しやすい。まったりと幸せ…というような心理状態の夢の想起は少ないし、残りづらいです。むしろ、起きた時に夢を覚えていないほうが、幸せな夢を見ているのかもしれません。思い出すだけの強さがそれだけないということは、ある意味、適正に睡眠中の情報処理が完了したと捉えられます。ストーリーまではコントロールできませんが、寝る前に夢で見たいものに関わる映像や画像、音楽などの情報にふれることで関連する夢が見られるかも。ただし、望むような結末までは残念ながら期待できません。

Q. 夢をあまり見ない=よく眠れているということですか?

あまり夢を見ていない時のノンレム睡眠の方が浅いものから深いものまであり、必ずしも夢を見ている睡眠が浅いわけではない。眠りはノンレム睡眠とレム睡眠を合計90分周期で繰り返します。鮮明でストーリー性のある夢をみるのがレム睡眠。最初のレム睡眠は5~10分と短いですが、何回も繰り返していくとレム睡眠自体が長くなっていくので、後半(明け方)になるにつれて鮮明な夢を見ている時間が長くなります。眠りの深さは関係なく、たっぷり寝るほど鮮明な夢を見る時間が長くなっていくため思い出しやすくなる(覚えている)と言えます。

Q. 夢を見る人・見ない人の違いはなんですか?

実はみんな一晩に3~4つは夢を見ているんです。ただ、覚えているか覚えていないかの違い。そもそも夢は覚えているようにできてはいないですし、よく覚えている人は性格的なものが関係していて割と神経質、心配性で細やか、繊細な人が多い。クリエイティブな仕事に関わっていたり睡眠時間が長い人もよく覚えている傾向に。クリエイティビティが高い人ほどよく眠るというデータも。悩みがあってストレス負荷がかかっていたり、少しネガティブな心理状態の人ほど覚えているかもしれません。反対に夢を見ない人は楽観的でのんき、悩みが少なく物事がうまくこなせている状態と考えられます。

Q. 寝言を言っている人に話しかけてはいけない?

これは迷信。寝言を言うのは眠りが浅い段階にねぼけて喋っているということ。全く夢を見ないというわけではなく断片的な映像や思考がよぎり、それに反応して寝言を言っているだけなので、睡眠を中断させないで。ただ、悪夢を見て途中で叫んで起きてしまったような人には、もう起きてしまっているので「大丈夫?」と声をかけてあげて問題なし。

教えてくれたのは

松田英子先生 お茶の水女子大学

松田英子先生
お茶の水女子大学大学院人間文化研究科修了。博士(人文科学)。公認心理師・臨床心理士。2015 年より東洋大学社会学部社会心理学科教授。著書に『夢と睡眠の心理学』(風間書房)などがある。現在朝日出版社のウェブマガジンで『夢をデザインする―夢の世界の住人―』を連載中。

イラスト/沼田光太郎 取材/田村宣子