【衆院選2021】ママ友や夫と、政治や選挙の話ができないのってなんでだろう
10月31日に投票が迫った衆院選。
私たち・子どもたちの生きるこれからの社会がどうあってほしいか。その意思を直接示すことができるのが、投票行動です。ただ、投票は荷が重いと感じている方もいるかもしれません。「私の1票じゃ何も変わらない」と思っている方もいるでしょうか。そこで国政選挙直前の今回、VERYでは社会や行政に声を届けようと活動をしている3人のお母さんを取材。私の生きづらさを、私だけの問題にさせないためにできることはなにか。また、衆院選で注目したい政策などについて聞いた今回の企画。担当ライターが、3人の取材を終えて感じたこと、自分の体験を踏まえての想いを編集後記としてまとめました。(前回までの記事はこちら)
子どもを選挙活動に巻き込んでいいのか?
私は「小泉なつみ」という旧姓で仕事をしており、戸籍上は「平田なつみ」です。普段の生活では「小泉9:平田1」くらいの割合で生きており、「平田さん」と呼ばれるのは保育園の送り迎えと病院、マンションでのご近所付き合いくらい。
つまり戸籍上の「平田なつみ」は、「ママ友」や「〇〇号室に住む平田さんの奥さん」という、これまでの自分の人生にはなかった「ママ」や「妻」としての顔なんです。
ええと、原稿の内容がどんどん「政治」から遠くなっている気がするでしょうか。ところがどっこい、これが私の社会活動に大きな影響を与えていたことが最近、発覚したのです……。
衆院選の日程が決まってから、「立候補者Aさんの選挙応援を手伝ってくれないか」と地元の市議さんから連絡がきました。市議の方とはその数カ月前、市政に関する問い合わせをしたことをきっかけに時々、連絡を取っていたのです。
私は立候補者Aさんへの投票をすでに決めていて(我が地元は選択肢が少ない)、その方が所属する政党の選挙公約についても納得できるものが多かったので、応援したい気持ちがありました。
とはいえ、これまで選挙活動などまったくしたことのない、ただのフリーランサー。具体的にどんな活動をするのかまったくわかっていませんでした。
そんなある日、市議さんからお手伝いの件で選挙事務所に呼ばれました。その時はちょうど子どもが家にいたため、一緒に連れて行こうかなと思った瞬間、「子どもを選挙運動に巻き込んでいいのか?」とふと、迷いが生じたのです。
ならば夫に子どもを預ければいいわけですが、彼もフリーランスで自宅作業をしているので、彼に子どもを見てもらえばその分、仕事を中断することになります(それは私も同じですが)。ただその政党を支持しているわけでもない彼に子守りをお願いするのも気が引けて、この日は結局、子どもを連れて選挙事務所に行きました。
そこでお願いされたのは、選挙ハガキの協力。近所に住む知り合いに、私の名前で「Aさんをどうかよろしくお願いします」といった趣旨のハガキを出せないか、ということです。
結婚を機に今の街に引っ越してきた私にとって、同じ選挙区に住む知人は「平田なつみ」の付き合いの人しかいません。つまり、ママ友や同じマンションの住人です。
ママ友に自分の仕事の話すらできない私が、政治の話なんて、とてもじゃないけど勇気がありません。それにママ友相手ではやはり子どもが巻き添えになる可能性もあり、申し訳ないですがお断りしてしまいました。
選挙で離婚!? 政治への思いがまさかの展開に……
さらに後日、家庭内で火種が生じます。
今度は選挙事務所の人から、「駅前での応援演説に市民の一人として出てもらえないか」というお願いがきたのです。時々演説を聞きに行っていた私は、「応援演説」といえど、それがとても小規模な、ささやかなものであることを知っていたので、「面白そうだし一回やってみよう」と思っていました。
しかしここで夫が猛反対。理由は、「自分の妻が“そういう人”だと近所の人に思われたくないから」……。たしかにここ数日、私が選挙事務所に出入りしていることを苦々しい顔で見ていたので、いつかはこうなるだろうという予感もありました。
それでも、彼が私のやりたいことを拒否し、妨げたのは、これがはじめてのことでした。いつだって彼は私のやりたいことを応援してくれたし、賛同できなかったとしても、ほっておいてくれた。だから我々夫婦は仲良くやっていたのです。
まさかの「選挙(政治)離婚」……?
大げさでなく、お互いそれほどまでに譲れない気持ちでした。ただ一点、私も子どものことに関しては気がかりだったので、今回は泣く泣く断念をし、離婚は免れた、というのが現状です。まさか衆院選をきっかけにこんな体験をしようとは思ってもみないことでした。
とりあえず今は、夫や子どもに影響のない平日や家から遠い場所で、「小泉なつみ」として活動できる範囲でやっています。しかし今後選挙の度に、同じ問題が起こる予感がバリバリしております……。
市井の人々が教えてくれた「政治の見方」
最終回にご登場いただいたフラワーデモ群馬を主催するの田嶋みづきさんは、身近な人を巻き込んでの社会活動について、こう語られていました。
「自分の身近な社会すら変えられないなら、大きな意味では何も変わらないだろうと思ったんです。自分が変わって、家族が変わって、友だちが変わって……みたいに、小さなさざなみを起こし続けることでいつかその波が大きなものになって、社会全体が変化するのではないでしょうか」
田嶋さんの言葉、まんまこの数週間の私の悩みやん……。あまりに共感しすぎて涙がちょちょぎれました。
と同時に、話はそれますが、社会活動をしている皆さんのほとんどが現状、手弁当です。第一回に登場いただいた「みらい子育て全国ネットワーク(miraco)」代表の天野妙さんも、「(miracoでの活動は)ペイフォワードだと思ってやっている」と話されていました。
私も最近少しだけ社会活動に参加していますが、交通費やコピー代といった実費だけでなく、自分の仕事の時間を削って日中に活動をすることがひとつのハードルだなと感じました。
ほんの少ししかお手伝いしていない自分ですら両立の難しさを感じたので、今後こういった社会活動が持続可能なかたちに変わっていくといいなと思います。
投票前に見たい「みんなの未来を選ぶためのチェックリスト」
天野さん率いるmiraco の「#GoTo候補者」キャンペーンなど、市民の皆さんが行っている活動には本当に素晴らしいプロジェクトがたくさんあります。問題にぶち当たった当事者だからこその発想、工夫、熱意だと感じます。
そして個人的に、衆院選の投票にとっても役立つと感じたサイトが、「みんなの未来を選ぶためのチェックリスト」です。
このチェックリストは市民運動などでつながった有志の皆さんによるもので、19項目、67問の質問を各政党に投げ、「○か☓」で回答を示してもらったもの。
なんといっても原則、「○か☓」の二択で各政党の答えが見比べられる、そのわかりやすさは本当にありがたい……! ので、ぜひ興味のある分野だけでも各政党の回答を見てほしいなと思います。
さらに、さまざまな角度から投げかけられた質問を見れば、社会で今、どんなことが問題になっているかも知ることができます(たとえば「入管問題」だけでも5問ありました)。
自分の選挙区の立候補者を見比べる際には、「news zero」による候補者アンケートも見やすいのでおすすめです。
私の「政治活動」は夫との対話から
VERYの選挙特集に手を挙げ、今夏から「センキョ割」という投票率アップのための社会活動にも参加していた自分ですが、これまで市民運動に携わったこともなく、特定の政党を応援したことも、政治について考えたこともありませんでした。
そんな自分がなぜ市議会議員に連絡をしてみたり、応援演説をしようと思ったのか……。それはChange.orgの武村若葉さんが指摘されていたように、コロナ禍によって、当たり前の生活が、実はものすごく政治と密接に関わっていたことがわかったからかもしれません。
「政治」というと何やら難しくて偉そうで近寄りがたい感じがしますが、私が関わっていきたいのは、「誰もが生きやすい社会づくり」なんだと、取材を通して改めて感じました。
私やあなたや、未来を生きる子どもたちが健やかに、ハッピーに暮らせる社会を目指し、私はまず、夫との対話からはじめていきたいと思います……!
あ、でも、夫はこれまで投票にも行かなかった人ですが、結婚後は私の説得でしぶしぶ、一緒に行くようになりました。小さな小さな投票率アップに貢献できたことは胸を張りたいです。
文/小泉なつみ
▼あわせて読みたい
天野妙さん「#子育て政策聞いてみた」でわかったこと【ママだって、こんな風に政治とかかわっていける!】❶
武村若葉さん「オンライン署名で生活と政治をつなぎたい」【ママだって、こんな風に政治とかかわっていける!】❷