40歳で母になったMartミセス。育児と仕事を両立する今の想いとは

仕事と子育てを両立しているMart世代の女性にフィーチャーする「働くMartミセス」。今回、お話を聞かせてくださったのは、サーティワン アイスクリーム株式会社のPR室でマネージャーをしている御園生(みそのう)久美さんです。自分が育ててきたやりがいのある仕事にまい進し、キャリアを積み重ねてきた御園生さんは、40歳を目前にしたとき母になることを決意。息子を育てながら仕事も両立させるようになった現在の思いをうかがいました。

【プロフィール】

B-R サーティワン アイスクリーム株式会社 PR室 マネージャー 御園生(みそのう)久美さん
23歳で入社。社内で自身が立ち上げたPRの仕事に取り組む。ワイワイお酒を飲むのが好き。息子が生まれてからたまに学生時代の友人を家に招き、自宅で飲むのが楽しみに。最近は自宅での飲み会専用にたこ焼き器を購入。夫と息子(2歳)の3人家族。

背伸びしてまで無理しない。でも、相手が求めることは、的確に丁寧に寄り添う。

皆を幸せにするアイスクリームだから笑顔で仕事ができる

「自分でテレビ局などに提案した企画が実際に放映され、テレビを観た人から『初めて来ました』とか『懐かしくてひさびさに』と言って店舗に足を運んでもらえるとうれしくてやりがいを感じます」

「サーティワン アイスクリーム」(以下サーティワン)でPRとして働く御園生さん。商品をテレビ番組や雑誌で紹介してもらうための提案や交渉に日々取り組んでいる。そんな御園生さんが仕事をしていて感じるのは「アイスクリームは皆をワクワクさせてくれる」ということ。

「新商品を持って雑誌の編集部やテレビ局などを訪問すると、一口食べるだけで皆笑顔になって、私が説明しなくても、商品を理解してもらえるんです。そういう魔法のような商品のPRに携われていることに幸せを感じています」

プライベートでは〝イヤイヤ期〞真っ盛りの2歳の息子のママ。仕事と育児の両立ができているのは、アットホームな職場の人たちのおかげだと話す。

「夏のアイスクリームシーズンはとくに忙しく、私一人ではとても地方のメディアまで回り切れない量。そこで、各エリアの営業担当にお願いすると快く引き受けて協力してくれるので、本当に助かっています。子どもが生まれてから出張も行きにくくなりましたが、円滑な人間関係に本当に助けられていて日々感謝です」

PRの仕事を立ち上げ育ててきた信念は自分の足で動くこと

「昔から、サーティワンの思い出は楽しくてキラキラとしたものばかりだったので、純粋にこの会社で働いてみたいと思ったんです」

店舗が増えていったのを機に、PR活動をしていくという方針が打ち出され、御園生さんが担当を任された。

「PRを立ち上げろと言われても、右も左もわからないという状況からのスタートでした」

PRを専門にする外部のPR会社にイロハを教えてもらいつつ、手探りでのスタート。徹底して取り組んだのは各メディア特性への理解だった。

「メディア側も面白い企画につながる情報を欲しているので、準備なくやみくもに訪問しても意味がないんです。同じテレビでも情報番組なら新商品情報が好まれるし、バラエティならランキング情報。雑誌でも、主婦誌とティーン誌では好まれる情報の種類が異なるので、それぞれに合った情報を準備して行くようにしています」

PRを外部の会社に丸投げする企業も多いなか、彼女は自分の足で動くことにこだわる。そこにあるのは、「サーティワンを最も理解しているのは自分」という信念。

「『20年前のあの味がさ〜』と言われたときに『あのフレーバーですね』とその場で話を広げられることが大切だと思っているんです」

こうしてPRひと筋に15年が経過し、PRのプロとなった今、最も苦労しているのがネタ探しだ。

「サーティワンは、皆さんに知ってもらえていることが強みですが、だからこそ皆が知らないようなネタを探して持って行くのが大変なんです」

昔の資料に目を通したり、マーケティングリサーチに出かけ、今の動向を知る。そんな毎日が苦にならないのは、「頑張った分、大きな反響を得られるPRという仕事にハマっているから」

夫の単身赴任で人生について出た結論はもっと〝家族〟になりたい

プライベートでは28歳で結婚。結婚後も仕事に夢中だった彼女にとって、出産は現実的なことではなかった。考えが変わったのは40歳を目前に控えたときのこと。

「私が36歳のとき、夫が海外転勤になりました。夫は一緒に来てほしかったのだと思いますが、私は仕事を辞める決断ができず、単身赴任してもらいました。でも、赴任先に同行することも、夫を父親にしてあげることもなく、いつも自分の都合ばかり優先することに『このままでいいのか?』と悩むようになりました」

口では何も言わない夫は大の子ども好き。内心は子どもが欲しいという思いを抱えているのだろう。御園生さん自身もそれに気づいていた。夫と離れ、そうしたことを考えて過ごすなかで行き着いたのは「結婚して家族になったのだから、夫ともっと絆を深めたい」という気持ちだった。

「ふと気がついたら『子どもを産みたい』と思うようになっていましたね」

そして39歳で妊娠。会社に報告すると、会長からすぐに連絡が入り、「君が戻って来やすいようにPR室をつくろう」と言ってくれた。思いがけない言葉に驚いたが、本当にうれしかったという。無事に男の子を出産し、0歳の4月に保育園に入園、PR室に復帰した。

「PR室をつくってもらえたという励みもあり、復帰に迷いはありませんでした。仕事と育児を両立する毎日は慌ただしいですが、出産して得たものはあっても、失ったものはないですね」と言い切る。

御園生さんが出産して得たのは人の優しさとつながり。

「子連れで歩いているだけで『かわいいね、何歳?』と声をかけてもらったり、近所の人からお下がりの絵本を頂いたりと、世の中に溢れる優しさに驚きました」

今ではクライアント先でも妊娠した人に声をかけ、妊娠中や育休中に辛い思いをしていないか連絡するなど、自然と同じ親として励ます関係ができていくように。

「私自身、妊娠中はつわりに苦しみ、育休中はまだ言葉を話せない息子との二人きりの生活に孤独感を感じてきたので、他のママたちも同じような思いをしているのではないかと思うと、つい声をかけたくなってしまって。親になり、人への共感力がUPしたことで、これまで以上にいろいろな人とつながり、仲良くなれることがうれしい」と語る。

「息子が元気に生まれてきてくれて、大好きな仕事もできて。これ以上望むものはありません。この先もみんなが健康で仕事と育児が幸せに回っていけばそれで十分」

積み上げてきた仕事と満を持して得た最愛の息子を心から大切に思うこの言葉に、御園生さんのすべてが詰まっていた。

【御園生さんの仕事の日のスケジュール】

5:00 起床・身支度と朝食準備
6:10 息子起床・着替え
6:20 家族で朝食
7:10 息子をバス停まで送る
8:00 出社
17:00 退社
17:45 スーパーで買い物
18:00 帰宅・夕食準備
18:30 バス停にお迎え
19:00 風呂
19:30 夕食
20:10 洗濯等の家事
20:30 息子と一緒に就寝

「帰宅したらお風呂に直行」で時短と健康を実現


毎日帰宅すると、子どもを玄関からお風呂に直行させるというのが御園生さん流の時短技。「息子は一度リビングに入ると遊び始めてしまうのですが、そうなると『お風呂入るよ』と仕切り直すのが大変。でも、まずお風呂に入れてから食事という段取りにすると、流れがスムーズなんです」。そのせいか、息子さんが体調を崩すことはほとんどないという。「帰宅後すぐに全身洗っているため、菌を家に持ち込まずに済んでいるのもあるのかなと思っています。息子がいつも元気でいてくれると、私も精神的に健康でいられるし、仕事も休まずに行けるので、ある意味いちばんの時短かも(笑)」。ほかにも「朝食を固定メニューにする」ことで時短に。「いつも決まったメニューなら買い物も楽ですし、息子も好き嫌いやその日の気分を挟み込まずに『朝食はこういうもの』とサッと食べてくれるので朝食も早く済むんです」(御園生さん)

育児は日々「トライ&エラー」。心強い味方は保育園の先生とママ友


御園生さんにとって、保育園の先生やママ友が育児の強力なサポーターだそう。「息子が物を投げたり、叩いたりすることに悩んでいたときに、先生が息子に『あさひくんのお手ては優しいお手てだよ』と言ってくれたのがすごくいいヒントになったんです。自宅でも息子に『お手て見せて』と言っては『わぁ~! 優しいお手てだね。みんなにいい子いい子するお手てだね』と言うことで、息子はうれしそうにはにかみながら、物を投げるようなことが減り、同時にそう言っている私自身も優しい気持ちになれるということに気づいたんです」。御園生さんは「育児は毎日がトライ&エラー」だと言う。「育児書のアドバイスが息子に合うとは限らないし、今日伝わったことが明日また息子に伝わるとは限らない。だからこそ、『トライ&エラー!』というポジティブな言葉で自分を励ましながら、先生やママ友からのいろいろなアドバイスをあれこれ試す毎日です」(御園生さん)

家族が笑顔でいるためには「無理はしない」の割り切りが大事


息子さんとの関わりで大切にしているのが季節行事。でもそこには「無理をしない」という御園生さん流のスタイルがある。「季節行事は大切にしたいですが、あくまでも私が無理せずできる範囲でやっています。たとえば七夕なら家族でプラネタリウムに行ったり、スーパーに飾られた笹に短冊をつけたり。行事の意味を伝えるという意味ではそれで十分だと思うので、家で笹を飾ったり、七夕プレートを用意するようなことまではしません」。家事も育児も、背伸びしてキャパシティ以上のことはしないというのがポリシー。「無理をすればイライラしてしまいますが、家で母親がイライラするのはよくないなと思うんです。レジャーも家事も無理はしない。お掃除も毎日と決めず、気づいたときや時間が少しあるときにやればいい。何事も割り切って無理をせずにいれば、家族みんなが笑顔で過ごせると思っています」(御園生さん)

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撮影/平林直己(BIEI) 取材・文/須賀華子 構成/タカノマイ(Mart編集部)

Mart2019年10月号 「働くMartミセス」より

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