「うちの子が本当に食べなくてツラい!」 ママの不安と悩みを小児科医にぶつけてみた

「うちの子、本当に食べなくて」という悩み、よく耳にしますよね。

VERYライターKの子供(3歳女の子)は、筋金入りの「食べない子」。出産後から母乳&ミルクを飲まず、NICUへ入院…。離乳食はろくに食べないまま、時間だけがいたずらに過ぎて、3歳となった現在も小食&偏食に悩まされる日々です。

 

「食べない」子育ての辛さを具体的に挙げるとするなら、

1. 作っても即拒否がツラい

2. 遊び食べの片づけが空しくツラい

3. 発育が心配でツラい

4. 食事を残す罪悪感がツラい

5. もったいないから食べたくない幼児食を食べて太るのがツライ

6. ヒントを求めに幼児食レシピコーナーへ行くと意識が高くて傷つくのがツライ

どんな育児本にも「食卓は笑顔ファースト」と書いてあるけど、我が家の食卓は不機嫌マックス。笑顔のために、栄養指導や本で学んだ水準を目指すのは諦めましたが、成長への不安や焦りは消えません。そこで、3人の子育てをしながら現役小児科医として活躍されるママ小児科医の保田典子先生に「食べない子育て」の向き合い方やヒントを聞いてみました!

お話を伺ったのは…

保田典子先生

医療法人財団アドベンチスト会東京衛生病院小児科医、小児科専門医、医学博士、「子どもの心」相談医。「ママパパが安心して育児ができるように」をモットーに病院での育児相談や漢方治療の他に子育て学級の開催やブログでの発信も行う。3歳女・5歳男・7歳男の子を育てながら、現役で活躍するママ小児科医。

子育て学級:http://www.tokyoeisei.com/lecture/lecture05/

ブログ:https://ameblo.jp/kanoppe21

インスタ:https://www.instagram.com/atama4970_yasuda/?hl=ja

―<ライターK>うちの子、とにかくぜんぜん食べないんです。

 

「食べない子」には、3つのパターンがあります

「食べない子の代表的なパターンは3つ。1.エネルギー必要量が少ない、2.燃費がいい、3.のんびり屋さん。1.と2.は、必要が少ないから、小食に。3.はこだわりが強いので、偏食が出やすく、食べないことが多いです。

チェックポイントは、身長が伸びているか。ある程度伸びていたら、成長に必要な量はある程度まかなえている証拠だから、そこまで神経質にならなくて大丈夫ですよ。身長が伸び悩む場合、医師に相談してみてください」

 

―<ライターK>「食べない子」育て、私は離乳食の時期がいちばん辛かったです。

 

「食べない子」育ての悩みが顕在化するのが、離乳食期

「乳幼児前半でも、体重増加がのんびりな子はいます。患者さんでも2パターンあり、ある子は、あんまり飲みたくない子だったので気にしなくてOK。ただ、別の子は、食いしん坊なのにママが母乳育児にこだわっていて体重が増えていないパターンでしたので、ミルクを足してとアドバイスしました。このように、子どもによって体重が増えない理由は違うことがあります。

離乳食が始まると、食べる子と食べない子の差が歴然と出て、焦ってしまうお母さんも多いです。WHOのガイドラインでは、0歳児の離乳食はミルクや母乳の補助で、栄養の基本は母乳orミルク。離乳食は食べなくても、何とでもなります。1歳になり歩くようになってからは、ご飯がメインに切り替わってくる。これも、歩くようになれば、液体だけだとカロリーが足りなくなるので、どんなに食べない子でも、ある程度は自然と固形物を食べるように。日本では、初期・中期・後期・完了期など分かれていますが、海外ではないし、個人差があるから食の固さが進まなくても気にしなくてOK。

離乳食になって、「食べない」と相談にきた子の血液検査をしてみると、貧血なことはほぼないし、身長も伸びています。ほんのちょっとずつでも前進していれば大丈夫」

 

―<ライターK>とにかく偏食で、「食べられるもの」がおもに米とパンなのも気になってしまって…

 

母乳・白米・牛乳ばかりの偏食は要注意

「日本で乳幼児が足りなくなりやすい栄養素は、鉄分とカルシウム。我が家でも、この2つとたんぱく質は意識して摂るようにしています。

母乳は鉄分が少ないことが多いため、完全母乳育児にこだわりすぎると、子どもが貧血になることも。牛乳好きでお腹が満たされて、他の食事を食べない子も要注意。牛乳はカルシウムはありますが、鉄分は非常に少ないためです。白米ばかりだと、貧血や脚気(ビタミンB1欠乏症)になることも。貧血になると、風邪をひきやすかったり、イライラしやすかったり。脚気は、倦怠感や食欲不振が出やすくなります。

ちなみに、わたしの子にも、「食べない子」がいます。知り合いと食事を共にしたとき、あまりの食べなさっぷりに引いていたレベル(笑)。彼の栄養補給で意識していることは、玄米は食べないですが、7分つき米なら食べてくれるので、胚芽で栄養をプラス。大麦をこっそり混ぜることも。これだけ食べればオールOKという食べ物はありません。偏食の子は、例えば卵を平飼いのものにする、など、ちょっとでも栄養価が高くて質の良いものを選ぶことを意識しています」

 

―<ライターK>こだわりが強い子には、シンプルな味づけのほうがいいんですか?ちなみに私、実は料理好きで。病院で栄養指導を受け、本屋で幼児食本を買い、離乳食作りをがんばっても、まったく受け入れてもらえなかったため、かなり凹みました。

 

少しずつでいいので、シンプルな単品食材を試してみて
「都会では、高齢出産だったり、一人っ子だったりで、かなり真面目なお母さんが多い印象。離乳食講座に通って、栄養素も○gと測って。
こだわりが強い子の中には、シンプルな味つけの方が食べる子もいます。かぼちゃをふかすだけ、枝豆を茹でるだけ、とか。
小児科医としては、少しずつで大丈夫なので、食材の量は増やしていってほしい。でも、あれこれ1つの料理に混ぜるのではなく、労力かけずにシンプルな単品食材もありです。
我が家の食べない子も、卵かけご飯と枝豆、とか、そんな感じです。シンプルがいいか、普通の料理がいいかはお子さん次第。試してみていい方を続けてみてください。大人はそれでは物足りない場合、お子さんにはおかずの一部だけをあげる、という作戦もあります」

―<ライターK>「食べない子」って栄養が偏っているから体が弱いというイメージがあって。これって本当ですか?

 

「食べない子」でも体を強くしたいなら、運動を!

「食べない子でも体が弱いということはありません。必要量が少ない子に無理やり与えると、却って風邪をひきやすくなったりもします。体が弱くなることが心配なら、運動で体力づくりを意識してみては。例えば、最近また関心が高まっている「ビタミンD欠乏症くる病」。これは、食べ物からもビタミンDは摂れますが、冬でも1時間程度の外遊びで十分まかなえます。食べない子でも運動が好きなら、外遊びを楽しんで。食べないことに悩みすぎず、他の解決策に目を向けるのも手。

ディスプレイタイムが1時間未満で、1時間以上運動していて、睡眠が9時間以上の子は、キレにくい、という研究データもあるので、運動は大事です!」

 

―<ライターK>ビスケットは一袋食べるほど大好物。遅めのおやつで1袋食べてしまい、夕飯がほぼ食べられない…なんてことも。また、朝食で野菜入り菓子パンだけ、という日も

 

お菓子を食事代わりにするのはNG

「子どもも生活習慣病になります。診療にくる不健康な肥満の子の場合、ご飯の食べすぎなことはなくて、お菓子の食べすぎが原因と個人的には思っています。野菜入りと書かれた菓子パンやスナック菓子があると思いますが、冷静によく成分を見てみると、ほとんど野菜は入っていないことも多いです」

 

―<ライターK>ちなみに、砂糖を摂りすぎると子供もキレやすくなるんですか?

 

空腹時にお菓子を食べると、血糖値が乱高下して、キレやすくなります。

「これは、大人だけでなく、子供も同じ。食事の代わりにお菓子を食べると、血糖値が急激に上がって、インシュリンが沢山出ます。それから急激に低血糖になると、体調が悪くなって、イライラに。お菓子は食べてもOK。我が家の子も大好きです。ただ、食事のあとがオススメ。血糖値の上がり方はゆるやかになります。食べないからといって、お菓子を食事代わりにするくらいなら、ほんの少しの食事の方がマシです。野菜入りお菓子やジュースより、ひとかけらの野菜を食べる方がオススメ」

 

<ライターK>食に関心が薄いので、食卓についてもすぐに遊びたがります。うろつきながら食べさせる状態。理想のマナーとは、ほど遠く…。

 

幼稚園に入るまでに、ある程度スプーンやフォークが使えて、年長さんまでにお箸が使えるようになれば、十分。

「この頃には手づかみ食べは少しずつ減ってきます。個人的には、幼稚園時代からは、食べなくてもできなくても良いから、少しずつマナーも意識しています。親が行うことで、目で見て意識してくれればいいや、という程度。しつけを頑張りすぎて、食卓が殺伐とするくらいなら、しなくてOKだと思いますよ。最初はちょっと座ったらOKなど、完璧をめざさず少しの「できた!」を増やして次につなげていくのがオススメです」

 

―<ライターK>「食べない子」育てに悩んで、本屋の幼児食コーナーへ行くと、食事が子供の賢さや成長、成功のカギ、的なタイトルが目について、意識の高さに凹みます(笑)。食べない子育てを頑張らなかったせいで、体が弱くなったり、勉強ができなくなったりする可能性があるの…?と不安になることも。

 

個人の体験に正直エビデンスはありません!

「いろいろこの手の本を読みましたが、ほとんどが個人的な成功例であって、小食や偏食の子が大人になってどうなった、というデータはあまり見かけたことがないです。

医師としてエビデンスがしっかりしているな、と感じた食事の本は、幼児食のコーナーにはなかなか見かけませんが、『世界一シンプルで科学的に証明された究極の食事』津川友介著(東洋経済新報社)。医師が身体に良いことを科学的に証明された食事法をエビデンスと共に紹介しています」

 

―<ライターK>食卓は、やっぱり笑顔ファーストなんですね!

 

多くのママが枠にはまっていないと不安になると思いますが、子供の発育はみんな違って、当たり前。食べない子を変える、という考えは捨てて、食べない子なんだと受け止めて、おおらかに見守りましょう。

「ちゃんとした食卓にしようとがんばって不機嫌になるより、シンプルな味付けで手抜きして食事の時間を楽しむ方が大事です。身長が伸びていれば、大丈夫。食事も子育ても枠にはめようと頑張りすぎず、いっしょの時間を楽しむことに注力しましょう」

撮影/相澤琢磨 取材/亀井友里子