「50代と同じように焦っている」今の大竹しのぶさんが思う未来予想図とは?

私たちの未来予想図

HERS世代のこれからは、自分のからだの衰えや、親の介護など、避けて通れないことが迫ってきます。
でも不安やマイナス面ばかり気にしても仕方ありません。私たちには今まで積み重ねてきた経験や感覚があるのだから。10年後、20年後も笑顔で穏やかに暮らせていたらいい。

いろいろな世代や立場の方々の意見を聞きながら、未来について前向きに考えてみました。
今回は前回に引き続き、HERS2月号「姉たちに聞く、50代からの人生」より、大竹しのぶさんのお話を一部抜粋してご紹介します。

 

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[女優・歌手]大竹しのぶさん

やりたいことをやらなくちゃ!→ やりたいことは何だろう? 60代の今も焦ってます(笑)

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介護した96歳の母が最期まで教えてくれたこと

50代後半、仕事が充実する一方で、大竹さんの生活の中、大きな比重を占めることとなったのが、お母様の介護。

「母に教えてもらうことは、多かったんです。一番は、生きること、死んでいくこと、それを私や子供たちに見せてくれたことです。母は、96歳にもなっているのに、最後まで〝生きたい、生きよう〟としていました。そして、最後まで人のために役立ちたい、そう思っていた人です。

亡くなる2カ月前の母の誕生日、息子の友人たちが集い、『これが最後になるかもしれないから最高のプレゼントをしたい』と96本の薔薇を母へと届けてくれました。結局、それが本当に最後になってしまったのですが。

母の答えはその96本の薔薇だったと思います。誠実に優しく厳しく生きてきた母の。人とのつながりが人生を豊かにしてくれる、母はそれを目の前で教えてくれたのです。

介護の数年間は、母に縛られていた部分もあったけれど、私自身に与えられた課題のような気がしました。

人生は、次々課題が与えられるものですね。でも、自分に嘘をつかず、真剣に考えていれば、きっと答えも見つかる。それに、その課題から思いがけないことを教えてもらったりもするから」

 

 

 

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やりたいことは何だろう?---70代になる前にやらなくちゃ!

「私これまでの人生で、一人暮らしをしたことがないんです。いい人と巡り会ってほしいと子供たちに望む一方で、一人で生きていかなくてはならない自分に不安を感じたり・・・・。本当は、大好きな人とともに歳をとって、『こんなふうに歳とっちゃったね』というのが幸せの形なのだと思うから。それがない今、どうしたらいいんだろう、と。

そう、50代と同じように焦っているんです。70代になる前、今のうちにやりたいことをやらなくちゃ、と。

そして自分のやりたいことは何だろう―――そんなふうに考えるようになりました。

ここ10年長い休みをとっていないから、ゆっくり旅行に行きたいし、編み物もしたいし、美味しいゴハンも作りたい。そいて、私の歌で元気になってくれる人がいるなら、その人のために歌も歌いたい。それに女優としては、若い役はもうできないけれど、今の自分にできる役を精一杯やりたい。

考えてみたら『50代だから』『60代だから』と、自分が思うほど、周囲の人たちは年代で区切ったりしないのかもしれません。悩みを打ち明け、相談してくれる20代や30代の友人たちは、私の年齢など気にしていないようだから。

私も、彼らと一緒に考えることで生きることに真剣になれる。そうやって、一人であろうとも豊かに心美しく、穏やかでありたいと思います。

〝自由な人〟---素の大竹さんは、そんなイメージを覆すほど、正直で真っすぐで地に足が着いた人。年齢も性別も問わず、多くの人々を惹きつける所以は、そこにあるのかもしれません。

 

 

 

おおたけ しのぶ
1957年、東京生まれ。’73年ドラマ『ボクは女学生』でデビュー。’75年映画『青春の門 筑豊編』で初主演。同年、NHK朝の連続テレビ小説『水色の時』でもヒロインに。以降、舞台、映画、ドラマなど幅広く活躍。2003年のモスクワ国際映画祭最優秀女優賞、日本アカデミー賞優秀主演女優賞、読売演劇大賞など数々の賞を受賞。舞台「桜の園」4月4日~Bunkamura シアターコクーンにて上演予定。

 

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撮影/須藤敬一 ヘア&メーク/新井克英(e.a.t・・・) スタイリング/山本ちえ 取材・文/河合由樹 構成/川原田朝雄 撮影協力/セルリアンタワー東急ホテル