スクールロイヤー制度で学校は安心できる場所になる?

文部科学省は2020年度より、全国に約300人のスクールロイヤーを配置する方針を発表しました。 もし学校で何かトラブルが起きたときに、 相談できる専門家がいることで学校生活がよりよいものになっていくか、期待が高まっています。今回はこの「スクールロイヤー制度」について、経済学者の安田洋祐さんに解説していただきました。

学校で起こる問題を法的な視点で解決に導く

学校でのいじめや保護者とのトラブルなどを弁護士が法的に解決する 「スクールロイヤー制度」。2018 年のNHKドラマ『やけに弁の立つ弁 護士が学校でほえる』に登場し、大阪 府などの自治体ではすでに取り入れられている制度です。文部科学省は、来年4月から各都道府県の教育事務 所や政令指定都市など全国に約300人を配置する方針を決めました。
各地域で指定されている弁護士は、 弁護士会と教育委員会の連携のもと、 相談の都度スクールロイヤーとして学校に派遣されます。主な業務は、暴力を伴ういじめや体罰、モンスターペアレントへの法的な対応など。早めに問題に介入することで。トラブルを未然に防ぐこともできるでしょう。
学校という閉鎖的な環境にスクールロイヤーという外部の目が入ることにより、隠ぺいなどが起きにくくなる効果も期待できます。

中立の立場を守れるかなどの課題解決がカギに

一見するといいことずくめのスクールロイヤー制度ですが、懸念点もあります。まず、弁護士は法律のプロであって、教育のプロではありません。 学校でのトラブルは教育的観点を踏まえて解決されるべきですが、弁護士が法的な視点に偏った判断を下してしまう危険性があります。まずは、スクールロイヤーとしての経験をどう蓄積していくかが大きな課題となるでしょう。
また、教育委員会からの依頼で派遣される形となるため、学校側と保護者、児童・生徒側が対立したときに中立的な立場を守れるのかという疑問もあります。特に裁判に発展する可能性があるような場合、学校側の肩を持つのでは、と不安に思われる方もいるのではないでしょうか。スクールロイヤーの言動を監督する機関などが今のところないため、スクールロイヤーの発言によって保護者や児童・生徒が一方的に弱い立場へ追いやられるリスクも否定できません。
制度を導入する利点と懸念とがどちらもありそうな、スクールロイヤー 制度。以前から実施している地域の事例を精査しながら、導入後に出てくるであろう課題に関するフィードバックをていねいに行い、ぜひ慎重に運用を進めてほしいものです。

そもそもスクールロイヤー制度とは?

いじめや虐待などの問題について、学校における法的相談に対応する弁護士を「スクールロイヤー」として配置する制度。文部科学省は全国に約300人を配置し、学校で起こるさまざまな問題に的確に対応したり早期解決をはかることをめざしている。

安田さんが考えるスクールロイヤー制度のメリットと課題は? 

メリット
・弁護士が介入することでトラブルの早期解決が期待できる
・外部の目が入ることで隠ぺいなどが起きにくくなる

■導入後の課題
・法的視点に偏らず教育的観点で解決できるか
・弁護士が中立の立場を保てるかどうか
→ていねいなフィードバックを重ねた運用が必要


安田洋祐さん
経済学者。専門はゲーム理論。政策研究大学院大学助教授を経て、2014年4月から大阪大学准教授に就任。『報道ランナー』(関西テレビ)や『情報ライブ ミヤネ屋』(読売テレビ)にコメンテーターとして出演するほか、財務省「理論研修」講師、金融庁「金融審議会」専門委員等を務めるなど多方面で活躍。 ユニークな視点での経済解説に定評がある。

※掲載中の情報はMart誌面掲載時のものです。

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イラスト/熊野友紀子 構成/長南真理恵

Mart2020年1月号
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