“なんとなく調子悪い”のはなぜだろう? 「死にたいけどトッポッキは食べたい」は自分を愛するヒント本

あなたのモヤモヤを筆者が代弁

 

寝る前にインスタを開いて、可愛い友達を見てため息を吐く。自分の生活がものすごく地味に感じて嫌になるけど、気が付いたら広告で表示されたECサイトで春服をカゴにいっぱい入れている……。

「死にたいけどトッポッキは食べたい」(ペク・セヒ著)は、そんな、なんだか常にモヤモヤして毎日憂鬱を感じているのに、未来の楽しいことを考えているという矛盾を抱える方におすすめの本です。

 

 

筆者は「はじめに」として、

‐ひどく憂鬱なわけでも、幸せなわけでもない、捉えどころのない気分に苦しめられていた。

 

と語ります。「死にたい」という絶望感と、「トッポッキは食べたい」という生きる欲求が同時に起きている筆者は、まるで死にたいのに次の季節の洋服を買っている私達のよう。

この本は、「気分変調性障害」という、軽い憂鬱症状が続く障害にかかった筆者が、心療内科でカウンセリングを受ける記録です。

私達と同じように人間関係や容姿にコンプレックスを抱える筆者が、具体的な苦しみを語り、それに対し先生が原因や考え方の修正を指摘する形式で進みます。

 

あくまで個人の会話の記録なので、先生が100%の答えを返せないことももちろんあります。

しかし個人の会話だからこそ、筆者の苦しみをリアルに共感でき、私達が日々感じる「なんとなく辛い」の言葉にできない「なんとなく」の正体に迫りうるのです。

 

憂鬱感を解消するモノの見方

 

SNSのフォロワー数でお金を稼げている(ように感じる)人を見たり、可愛いだけで異性にモテている(ように感じる)人を見たり……、私達のモヤモヤはこんな時に爆発しがち。不調の原因の一つは、常に「誰か」と自分を比べた時に起こっているのではないでしょうか?

筆者はこの不調を、先生にこう相談をします。

 

(筆者)

‐家に一人でいると憂鬱になります。インスタのせいだと思います。私が羨ましいと思う人たちのアカウントに行くと、さらに憂鬱になるんです。

 

大学を卒業し、出版社で広報営業の仕事をしている筆者は、就職活動時に第一志望だった会社で活躍している人をSNSで見ると劣等感を感じてしまうと訴えます。

これに対し先生は、

 

(先生)

‐何かを羨ましいと思った時にしても、もし20歳のあなたが今のあなたを見たらどうおもうでしょうね?「大学を出て、出版社に通ってるんだね?」と思いますよね。

‐子供の頃の基準からすれば、今の自分はとても成功しているともいえるんです。

他人と比べるのではなく、自分自身と比べることで憂鬱が消えることもある。要するに憂鬱感もモノの見方次第だということ。

私達だって毎日それなりに仕事をして、恋愛をして、着飾って、生きている。子供の頃の自分が見たら「素敵なお姉さん」だと思うかもしれません。

 

このように、「モノの見方を変えれば幸せが見えてくる」という、わかるようでわからないアドバイスも、筆者の具体的で赤裸々な経験談を通して先生からアドバイスをもらうことで、再現性が増して、理解ができるのです。

読み進めるうちに、まるで筆者を通して自分もカウンセリングを受けているような効果が得られます。

 

少しずつ自分を愛せるヒントが

他人と比べ、憂鬱の無限ループに陥っている筆者に対し、先生はこんな言葉を投げかけます。

 

(先生)

‐もう少し自分中心に、他人を意識しないで、自分のしたいことをしてください

 

結局「他人から自分がどう見られているか」を気にしすぎてしまい、自分で自分の本心がわかっていないから憂鬱感が拭えないのではと指摘します。

私達も、他人からの評価を気にしなければ、本当にしたいこと、行きたい場所、言いたいことが見えてくるかもしれません。

そんな丸裸の自分を愛せるかどうか。愛せた先には、憂鬱感の無い、穏やかな日々が待っているのではないでしょうか。

 

(筆者)

‐些細な問題に執拗にこだわった結果の終着駅は自己肯定感だった。

 

「おわりに」で筆者はこう結論付けます。

 

筆者は私達と似ていても、私達ではないし、私達は必ずしもあなたではない。残念ながらすべての人に当てはまる自分の愛し方の答えがこの本に書かれているわけではありません。

筆者に共感しながら、私による、私自身の愛し方を見つけるヒントにこの本はなると思います。

いつの日か、無防備にトッポッキを食べられるその日まで。自分を愛することを諦めないために、読んでみてはいかがでしょうか。

 

Edit・Text _Emiko Hishiyama