【第1回】大学入試、どこが変わった?

今月からコラムを担当いたします、政治ジャーナリストの細川珠生です。

私も15歳の息子を持つ母として、教育は最大の関心事。世の中も制度もコロコロ変わるし、また母親を取り巻く環境も大きく変わ っている中で、それでも我が子には、いい教育を与えたい!リッ パに育ってほしい!という思いでいることは、世のママたちと同 じ。このコラムを通じて今の教育がどうなっているのか、どうしていかないといけないかということを読者の皆さんと考えていきたいと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。

 

さて、世の中のママたちの関心事で、1、2位を争うといってもいいのが、大学入試のことではないでしょうか。2020年度から、 基本的に国公立大学の入試である「大学入試センター試験」が大きく変わるとアナウンスされたのが、今から7年ほど前でした。それがいよいよというわずか1年前にな って、「ちょっと待って! 見直し!!」となったのだから、それに向けて準備してきた中高生にとっ ては、こちらの方が「ちょっと待ってよ」と言いたいところですね。

 

そもそも、この見直しは義務教育、プラス高校の教育を変えるには、その出口ともいえる大学入試を変えないことにはできないという考えから始まったものです。当初は「高大接続改革」と呼ばれ、教育再生実行会議が2013年に「高等学校教育の質の確保・向上、大学の人材育成機能の抜本的強化、能力・意欲・適性を多面的・ 総合的に評価しうる大学入学者選抜制度への転換」と提言したことに始まりました。

簡単にいうと、学力のみならず、意欲やポテンシャルを評価すること、一発勝負の試験ではなく、何回もチャレンジできる大学入試に変えようというものでした。そのために「大学入学共通テスト」(以下、共通テスト)として、「センター試験」に代わる新しい選抜方法を行うことになったのです。昨年6月に、「共通テスト」の出題方法と問題作成方針が公表され準備が進んでいました。具体的なテストとして、英語の民間資格・検定試験の活用や、数学や国語で、マーク式のみならず、記述式の問題が取り入れられることになったのです。

しかしながら、実施約1年前になって、英語の民間試験の活用は2025年1月実施まで延期(今の中学1年生が高校3年になるとき)、その間によりよい制度になるよう今年末まで検討することになりました。数学と国語の記述式問題については、導入そのものが見送られることになりました。

英語は、民間テストを〝活用〞するということでしたから、もともと作成予定であった共通テストでの試験問題を受けるということになっただけで、内容も、従来通りの「読む」「聞く」の問題だけです。しかし、数学と国語は、試験時間(国語は100分が80分に変更)や問題の傾向も少しだけ変更されることになりました。さらに、2021年度以降については、その都度、公表される大綱に基づ いて決めることになっています。

 

新しい選抜方法はこれだけではなく、主体性、つまり自ら学ぶ意欲をどれだけ持っているかということを評価するために、たとえば「〇〇大会で入賞」とか、「海外留学やボランティアに参加した」などの活動記録を大学が求めるようにもなります。そのために、「JAPAN e‐Portfolio」というポータルサイトが設けられ、ここに活動の記録を蓄積していく方法がとられています。

 

ずっと前から「日本の大学は入るのは大変だけど出るのは簡単」と言われていますが、海外の大学だって入るのはそれなりに大変です。でも、大学入学段階で求められることは、かなり違います。大事なことは、大学入試改革でも当初のねらいであった、「思考力・判断力・表現力を発揮」できる人間に育てること。そのためには、大学入試のためだけではなく、もっと早い段階から、世界標準に近い教育に、それも早く変えてほしいと思っています。

Profile

細川 珠生

政治ジャーナリスト。聖心女子大学英文科卒業。政治全般や地方自治、教育に関する知見 を活かしてさまざまなメディアで活躍。三井住友建設株式会社社外取締役、星槎大学非常 勤講師なども務める。15歳男子の母。https:// blog.excite.co.jp/tamaohosokawa

編集/羽城麻子 デザイン/attik

VERY NAVY4月号『細川珠生さんのNEWSなエデュケーション』から
詳しくは2020年3/6発売VERY NAVY4月号に掲載しています。