全国的な臨時休校が解除され、地域によって異なりますが6月から多くの学校が再開しました。「新しい生活様式」のもと、学校生活はどう変化しているのか、この1週間を振り返りつつ、お子さんのいる家庭にその様子を伺いました。
やはり気になる「3密」と「マスク」
地域や学校判断によりますが、多くは短時間授業や、分散登校、教室の人数を減らしての授業など、3密をつくらない対策をしっかり備えて再開しました。
スタート直後、小学生の子を持つ母親に心配事を聞くと「外出自粛生活の中で手洗い、密を作らない重要性は学んでいると思うのですが、子どもはくっついて遊ぶことが多いので、学校では難しいのでは?」(小3男子母)、「雨が降り蒸し暑い日に自分も部屋の中でもずっとマスクをしてみたのですが、蒸し暑くて外したくなりました。苦しい時は外してもよいのか、熱中症にはならないのか、気になることが多いですね」(小6と小3男子母)と、生活面=新しい生活様式の定着への関心が強いことが伺えます。
Mart編集部が6月第1週に、新しい生活について読者会員にアンケートを実施したところ多くの保護者からの回答がありました。上記のようなマスクや3密への不安のほか、「授業の進み具合が気になる」「この状態で定期テストは厳しい」と学習面を心配する回答や、「学校行事がなくなってしまい残念」と、幅広い心配ごとがある一方で「久しぶりに友達と会えてうれしそうだった」「先生方、学校が頑張ってくださっているのでありがたい」という回答も多数挙がりました。
新入学の1年生のいる家庭は? 学校スタートで感じた幸せ
小1、中1、高1と、この春に入学した“1年生”のお子さんがいる家庭では、より戸惑いが多かったのではないでしょうか。聞いてみると「分散登校で学校滞在時間は1時間半で再開しました。通い始めてとても楽しそうです。学校側は最善の対策してくれているのであまり心配していません」(小1女子)、「電車通学の予定でしたが、今は車で送迎しています。息子は始まるまでは不安もあったようですが、『始まってみたら大丈夫だったよ』と成長を感じました。母親の私も知り合いはまだいない環境ですが、焦ってはいません」(中1男子)と、不安よりも学校生活が始まったことへの喜びがとても大きいことも見受けられました。
学校の先生たちも今までと異なる環境で奮闘中
学校現場でも、これまで経験したことのないコロナ禍を経ての学校再開では様々な課題があるようです。「教職員一体になって、子どもたちが元気に過ごせる環境つくりに励んでいます。やはり、ずっと外出できずストレスも大きかったと思うので、学校生活では楽しく過ごして欲しいですね」と取材した小学校教員の男性は話します。また、中学校で担任を持つ女性教師は「新しい状況の中で混乱も多く、学習面などの遅れをどうするかなど不安は多々あると思います。でも学校は学習だけでなく、クラスでの集団生活や遠足などの行事で協力しあうことを学ぶ場でもあるので、新しい生活様式のもと、今までとは形が変わっても子供たちが成長できる場を作りたいです」と今後の課題を話してくれました。
国の「学校の新しい生活様式」にはどんなことが書かれている?
全国の学校現場に文部科学省がまとめ提示した「学校における新型コロナウィルス感染症対策の考え方について」では、場面ごとに細かく感染対策の方法を示しています。
給食、体育や音楽、家庭科の調理実習など感染症対策をしても感染リスクが高い学習活動について、また、中高校生の親が気になる部活動については、地域の感染レベルに踏まえて学校はどう対応するべきか行動基準を設けています。
文部科学省 「新しい生活様式」を踏まえた学校の行動基準 学校における新型コロナウイルス感染症に関する衛生管理マニュアル~「学校の新しい生活様式」~(2020.5.22 Ver.1)より抜粋
この中には家庭でも知っておくとよい内容もたくさんありました。
【児童生徒に感染症対策として必要な各自持ち物】
・清潔なハンカチ、ティッシュ
・マスク
・マスクを置く際の清潔なビニール袋や布
と、マスクを外した時にどこに置くかも、集団生活の中では気を付けたいポイントです。
【手洗いの6つのタイミング】
「手洗いの6つのタイミング」では、屋外から室内に入る時だけではなく、人やモノとの接触の後に頻繁に行うことが大切と書かれています。
文部科学省 学校における新型コロナウイルス感染症に関する衛生管理マニュアル~「学校の新しい生活様式」~(2020.5.22 Ver.1)より抜粋
・外から教室に入るとき
・咳やくしゃみ、鼻をかんだとき
・給食(昼食)の前後
・掃除の後
・トイレの後
・共有のものを触った時
学校だけでなく、大人が新しい考え方を切り開く姿を子どもに示そう!
コロナ禍前とは異なる学校環境ですが、これまでの学校生活では得られなかった大きな学びが待っていると、育児・教育ジャーナリストのおおたとしまさんは分析します。
「課題解決型授業を通じて、正解のわからない世の中を生きていくための力を養おうというのが、もともと日本の教育の大きな課題でした。実際に新しい学習指導要領でもそれが大きな目標として掲げられています。そう考えたとき、こうして世界中の人々が、共通の課題として新型コロナウィルスの感染拡大防止に取り組んでいる現状ほど、子どもたちにとって身近でリアリティのある教材はありません」。
そして、学校だけでなく、関わる私たち大人が手本になろう!ともおおたさんは呼びかけます。
「今後、世界は新しい生活様式や社会システムを模索し続けなければいけなくなりますが、まずはこの状況で私たち大人が、正解のわからない世の中を生きていくためのお手本を、子どもたちに示すべきです。その姿に子どもたちは多くを学ぶはず。そして子どもたちにも意見を求めればいいのではないでしょうか? きっと喜んで考えてくれると思います
また、いま「学習の遅れ」が話題になっていますが「表面上の授業時間数の帳尻を合わせることばかりが大人の責任ではないはずです。いまこそ、学習指導要領や教科書の内容に縛られることなく、この状況だからこそ学べることがたくさんあることに、大人こそが気付くべきだと私は思います」と力強いメッセージをくれました。
今後、授業のオンライン化が進むなど、学校現場は変わっていくと考えられますが、変化を楽しむ&新しい考え方やモノが生まれるチャンスと、ポジティブにとらえたいと思いました。
取材・文/新里陽子
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