神山まりあエッセイ⑰「絶対に髪を切りたくない男」

VERYモデル神山まりあさんによるエッセイ
「笑うママには福来る。」
2019年2月号からスタートした連載が
ウェブでも読めるようになりました!

 

 

 

 

ディーンはただいま長髪ブーム。
きっかけは仮面ライダーのイケメン達が
長髪のくるくるヘアをなびかせて
変身していたから。

 

最後に髪を切ったのは
おそらく去年の9月ごろだろうか。
もうすでに伸び放題のボッサボサで、
前髪は目に入りそう。
お願いだから髪の毛を切らせてくれと
お願いをしても「NO!!!!!」と
大泣きの拒否を食らう日々。
学校からの連絡帳にも
「DEAN needs hair cut!!!!」と書かれる始末。

 

どうやったら髪の毛を切る気に
なってくれるだろう。
もうこうなったらどんな髪型でもいい、
美容院に行こうと思って欲しい。
うちの子は頑固ちゃんなので、
自分の中で決めたことは絶対。
意見を変えるにしても納得しないとダメ。
これは母の交渉力が試される。

 

「見て、マミー髪の毛切ってから
スッキリしちゃった♥」
「前髪切ると仮面ライダーゼロワンみたいに
なれそうなのにな〜」
「え!!! 髪の毛に虫付いてる!!
切ったほうがいいよ!」

 

何を言っても無視。

 

「ディーンくんはビヨーインいかない!!!」
とまた泣き始めてしまったよ。
やれやれ。

こうなったら私が切るか。
この不器用代表みたいな
私がカットしてみようか。
しかし、
昔妹の前髪をキッチンバサミで切って、
ちびまる子ちゃんもビックリな
ヘアができた記憶が思い出される。
最近モテ始めたディーンに
恥をかかせるわけにはいかない。

 

よし決めた。

「ディーンくん、誰でもいいよ。
好きなヘアスタイル選んで。
その人と全く同じヘアにしてもらおう。
変身しよう」

 

自分で好きなヘアを選べることに
メリットを感じたディーンは、
しばらく考えて、「OK」と一言。

 

なんだ、こんな簡単なことだったのか。
本人に選ばせるという責任を持たせると、
こんなにも乗り気になってくれるものか。

 

その日の夜、テレビを見ていたディーン。
キッチンにいる私を大声で呼んでいる。

 

「マミー!!!!!!ディーンくん、
このヘアにする!!!!!!」

 

山﨑賢人だろうか、横浜流星だろうか、
いや、今のときめき男子と言ったら佐藤健か?
急いでテレビを見に行く私。

 

……まじか。

 

その週末、私たちは美容院にいました。
ディーンはニコニコ。
私は携帯を握ってドキドキしている。

 

「さあ今日はどんな髪型にしたいかなー??」

 

そう聞く美容師さんに、
私は黙って携帯の画面を見せました。

 

そこには美しいサラサラヘアをなびかせる、
花を背負った人。
画面からも伝わるいい匂い。

 

そう。
彼がなりたいのは、
花の魔術師、

 

假屋崎省吾。

 

携帯画面を見たまま固まる美容師さんと、
目をキラキラさせているディーン。

 

そうだね、
とりあえずカチューシャをして
お花を大事にするところから始めてみようか。

 

 

【PROFILE】かみやま・まりあ
1987年2月17日生まれ。
2011年ミス・ユニバース ジャパングランプリ。
2015年結婚、2016年男児出産。
インスタグラム@mariakamiyamaも大人気。
2018年9月に初めての書籍
『神山まりあのガハハ育児語録』(光文社)を刊行。

 

 

 

撮影/イマキイレカオリ ヘア・メーク/TOMIE〈nude.〉 イラスト/natsu yamaguchi 編集/湯本紘子
※VERY2020年6.7月号「神山まりあの笑うママには福来る。」より。
※掲載の内容は発売当時のものです。