辛酸なめ子の「おうちで楽しむ」イケメン2020vol.4「ジャニーズ、それはもはや日本のインフラ」

「イケメン」を語るうえで絶対にハズせないのが「ジャニーズ」の存在。ドラマやライブなどが軒並み休止、中止になってしまった期間もさまざまな動画配信やSNSで私たちに楽しみを与えてくれました。話題の期間限定ユニット「Twenty★Twenty」のチャリティソング『smile』についても辛酸なめ子さんに語っていただきます。

辛酸なめ子の「おうちで楽しむジャニーズ」

見えない敵の存在に気が休まらない日々ですが、ジャニーズに励まされ、救われた、という人は多いのではないでしょうか。もはや生きるために必要な、「電気」「水道」「ジャニーズ」というような、インフラに近い存在といっても過言ではありません。

美青年は末端の指先も美しい「Wash Your Hands」

まず、生きる気力とサバイバル能力が高められたのは、ジャニーズ事務所の公式YouTubeチャンネルで公開された「Wash Your Hands」動画です。嵐バージョンと複数グループのコラボバージョンがあり、振り付けで手の洗い方をレクチャーしてくれます。「すりすりWash」「ごしごしWash」「にぎにぎWash」などわかりやすい擬音で、聴きながら幼女に年齢退行していきそうです。美青年は末端の指先も美しいということに静かな感動を覚えながらも癒される啓蒙動画。動体視力が良ければ、メンバーの手相の結婚線をチェックできるかもしれません。先輩である木村拓哉も手洗い動画を公開し、「大切な人を守ることにつながると思うので、ぜひこれはやってください」と呼びかけていました。お上にはつい反発心を抱いてしまいますが、ジャニーズに言われると素直に従いたくなります。

まさにおうちで楽しめる「Johnny’s World Happy LIVE with YOU」

手洗い動画と同じく、ジャニーズ事務所による新型コロナウイルスに対する支援活動『Smile Up!Project』の一環として行われたのが「Johnny’s World Happy LIVE with YOU」です。1日数組のグループが有料でライブ配信した期間限定イベント。Youtubeのオフィシャルチャンネルでは無料でダイジェスト版を見ることができます。チャットコーナーを見ながら視聴すれば、ファンの皆さんの「カッコよすぎて死ぬ」「最高!!」といったコメントで一体感が高まります。

いろいろ話題の期間限定ユニット「Twenty★Twenty」

そして『Smile Up!Project』の真髄ともいえるのが、ジャニーズの期間限定ユニット「Twenty★Twenty」のチャリティソング『smile』のリリースです。滝沢秀明がプロデュースし、櫻井和寿(Mr.Children)が書き下ろした豪華コラボ曲。櫻井氏はこの曲について「ジャニーズの皆さんほど、このフレーズを歌うにふさわしい方はいないと感じます。大切な人の心や体が弱っている時、その人の為に『美味しくなれ』『元気になれ』と、心を込めておにぎりを握るように歌う皆さんの姿を想像して書きました」とコメントしていて、今必要とされるジャニーズの力について認識されているのが伝わってきました。「おにぎりを握るように」というのが気になりますが、もしかしたら手洗い動画の「にぎにぎWash」が潜在下にあったのかもしれません。
『smile』に寄せて、各グループそれぞれ真摯で人格者感あふれるコメントを出していました。一部抜粋させていただきます。「この楽曲が、1人でも多くの方の心に寄り添い、歌い継がれたくさんの笑顔をお届けできたらうれしいです」(嵐)、「歌っていても、聞いていても、前向きな気持ちになれる楽曲です」(KAT-TUN)、「参加したジャニーズタレント全員の声が重なり合うと、いったいどうなるのか、ステキな化学反応を本当に楽しみにしていました」(Hey!Say!JUMP) そして知性を感じさせたのが「この飛花落葉の中、これでもかというくらいにメンバー一同、気持ちを込めて歌わせていただきました」(関ジャニ∞)というコメント。「飛花落葉(ひからくよう)」は無常感を例える言葉のようです。さらに「広漠とした静かな湖の向こうに、小さく灯るオレンジの明かり。この曲を聴いて、そのような光景が目の前に浮かびました」(NEWS)というコメントの文学性も光っていました。とにかく聴くと前向きになったり諸行無常を感じたり、語彙力が刺激されたり、ありがたい曲であることはまちがいなさそうです。
6月22日に先行配信されましたが、その前にテレビではメーキング映像が流され、期待が高まると同時に、ファンの間では歌割についてのさまざまな意見が交わされていました。年功序列だとか、Snow ManとSixTONESはまとめてワンフレーズだけだとか、A.B.C-ZとジャニーズWESTはそれぞれ7文字しかないとか、総勢15組75名もいるので割り振りは平等とはいかなかったようです。文字数は少なくても、強い思いを込めて歌われたらきっと心を動かすフレーズになることでしょう。

免疫力が上がりそうなチャリティソング『smile』

待望の『smile』、配信されたので早速聴いてみました。癒しのピアノのイントロからの、Kinki Kidsの堂本剛のソウルフルな歌い出しへの流れに早くも心つかまれます。「ゴミ」というフレーズがゴミに聞こえず、美しい単語に聞こえるのは堂本剛の波動の高さゆえでしょうか。続いてのV6の坂本昌行、長野博、井ノ原快彦のパートには大人の優しさが漂っていました。KAT-TUNのフレーズにはセクシーさを感じ、堂本光一のソロパートは凛として貴公子のよう。V6の森田剛、三宅健、岡田准一のパートにはやんちゃ感がありました。そしてフェロモンの渦というようなセクシーボイスは山下智久。続いて嵐のグルーヴ感あふれるハーモニーは間違いない感じで、関ジャニ∞のフレーズは前向きでポジティブになりました。V6の大人の個性が融合したフレーズに続き、Kinki Kidsの魂を震わせるエモーショナルな歌声。 NEWSのパートには毅然と前を向く強さがありました。King&Princeのパートには耳に残る訴求力があり、ジャニーズWESTの素直な歌声は心にまっすぐ入ってくるようでした。A.B.C-Zのパートには力強さがあり、Sexy Zoneの歌声には不思議な包容力が。Hey!Say!JUMPの刹那的な魅力に心をつかまれ、SixTONESとSnow Manのフレーズには勢いがありました。Kis-My-Ft2は頼れる感じがして、歌声に心を委ねたくなります。間奏のギターソロが結構長く、それだったらもっとフレーズを多くしてほしいグループもありましたが、感動のフィナーレに向かって曲は続きます。堂本剛、坂本昌行、平野紫耀のパートは独特のゆらぎでアルファー波を誘発。続いての堂本光一、亀梨和也、山田涼介のパートは彼氏感というかパーソナルな雰囲気で心に入ってきてドキッとさせられました。途中にも短い全員でのフレーズがありましたが、最後は75人全員の歌声が響きます。心が一つになるワンネス感に浸り、感動に包まれました。
僭越ながらそれぞれのパートについてレビューさせていただきましたが、歌詞が深いというか1回聴いただけでは状況がつかめず、コロナのことを言っているという感じでもないし、誰かに憧れてワナビーになるな、という戒めや、「偽物」に惑わされるな、というメッセージが出てきたり、複合的な要素がある歌詞です。一番伝えたいことは笑顔の大切さ、でしょうか。『smile』の歌詞は、情報が錯綜する今の状況を歌っているようでもあります。そこから救い出してくれるのは「本物」のイケメンたちであるジャニーズなのかもしれません。これでまたしばらく免疫力が上がりそうです。

辛酸なめ子
イケメンや海外セレブから政治ネタ、スピリチュアル系まで、幅広いジャンルについてのユニークな批評とイラストが支持を集め、著書も多数。近著は『スピリチュアル系のトリセツ』(平凡社)、『辛酸なめ子の世界恋愛文学全集』(祥伝社文庫)など。

撮影/村山元一(SIGNO)<辛酸さん分> 構成/CLASSY.編集部