パワハラ上司・モラハラ彼氏を引き寄せない「返事の仕方」

「もうアラサーなんで」、「私なんて…」普段何げなく、謙遜しすぎたり、自虐的なフレーズを口にしていませんか?言葉選びを少し変えるだけで、気持ちも生活ももっとポジティブに幸せになれるはず。CLASSY.世代の自己肯定感を高める言葉について、「子どもが幸せになることば」の著者、田中茂樹先生にお聞きしました。

case❶上司からの理不尽な指示に対して

急に無理な指示をしてきたり、叱責されたり。パワハラ気味な上司が怖くて、すみませんが口癖になってしまっています…。そんな自分が嫌になりそう。
T.Gさん(31歳・広告関連勤務)

やり過ごしている、と意識してみる

やり過ごしている、と意識してみる

パワハラ気味な上司に対して、自分のミスじゃないのに「あ、すみません」とつい謝罪から入ってしまうのが癖になってしまっている人の背景には、年功序列や女性はとにかく下手に、という古い体制や考え方がある気がします。「おかしい」とどこかで感じてはいるものの、職場で上司の指示をきっぱり跳ね返すのはなかなか難しいのが現実ではないでしょうか。この場合、真正面から対決する姿勢をとるより、わかったうえで便宜的に「すみません」という言葉を使ってみましょう。ただ「すみません」と下手に出てモヤモヤするより、自分でこの場面をやり過ごすために、防衛手段としてあえて「すみません」という言葉を選んだという意識があれば、気持ちも少しラクになれるはず。夫婦の問題のカウンセリングでも、夫がモラハラ気味で本当は間違っているのに対決することのほうが負担である場合、自分の意志で現状をやり過ごすという選択をする場合があります。自分で能動的に選んでいるという意識が大事なんです。その意識があれば、違う場面ではそれを選ばないという決定もできるかもしれません。「すみません」という言葉にとらわれず、あくまでも自分主体、対処法として使っているという意識を持つだけで景色が変わってくるはずです。

case❷彼に対して

ワガママと思われたくなくて、デートの行き先も、観たい映画もすべて彼に合わせています。聞かれてもなんでもいいよ、とつい…。
R.Dさん(30歳・IT関連勤務)

自己主張しないとモラハラ夫を引き寄せてしまうかも

「なんでもいい」と自分の意見を主張することを避けるのは、強い父とそれを3歩下がって支える母、男性を立てた方がいいという親世代の価値観によるものだと思います。DSS(ドメスティックストックホルムシンドローム)という言葉がありますが、例えばアルコール依存症の父親に育てられた子どもは、パートナーにも同じ依存症の人を選んでしまう傾向があるというように、育ってきた環境の影響はとても大きい。親世代の価値観を継承していると、自己主張しないほうが男性から好まれる、古風なほうが選んでもらえるという考えになりがちですが、今の時代はそうとも言い切れません。それに、自分の意見を言わず相手に同調ばかりしていると厄介な人を引き寄せてしまうというリスクも。つきあっている時は本心から「なんでもいいよ」と言っていたとしても、結婚して生活をしていく中でずっと自分の意見を言えないまま、その関係性を維持していくの は難しいかも。モラハラ夫と結婚しないためにも、自分を大事にして、意見はちゃんと言ったほうがいい。相手の意見を否定するのではなく、さらっと自分の気持ちを伝えることを心がけてみましょう。

田中茂樹さん
医師・臨床心理士・文学博士(心理学)。京都大学医学部卒業。共働きで4人の男の子を育てる父親。現在、奈良市の佐保川診療所でプライマリケア医として地域医療に従事。これまで5000件以上の面接を通して悩める人の心に寄り添ってきた。著書『子どもが幸せになることば』(ダイヤモンド社)は現在6刷の大ヒット、韓国でも月間売り上げランキング1位など国境を超えて支持されている。

イラスト/ほりゆりこ 取材・文/北山えいみ