「夢中になることに出会ったら、それが人生のチャンス」桑原亮子さん【趣味キャリ生き方図鑑vo.10】

人生100年時代。一つの仕事・肩書きだけで働くというモデルそのものが変わりつつあります。結婚や出産等がきっかけで、それまでと全く違った仕事や働き方をスタートさせるケースも珍しくありません。STORY読者の間では“好き”を仕事にして、耳慣れない肩書きで活動している人が増えています。そんな、人生のセカンドキャリアをスタートさせた方を取材。第10回目は、偶然出会った“好き”を突き詰めているうちに、主婦から料理家になり、コロナ禍でも前向きに新しくアトリエを開設、仕事を拡大している桑原亮子さんのお話です。

桑原さんのお仕事は…
料理家兼料理教室「SPICEUP」オーナー

結婚・出産後に、独学で英検1級を取得。それをきっかけに海外事務系の仕事や通訳の仕事をスタート。その後、幼稚園で知り合ったインド人のママ友と一緒に南インド料理を友達に教える料理教室をOPEN。英語しか話せなかった彼女の通訳を兼ね、レシピなどを作成。その後、自宅で料理教室「SPICEUP」を開設。普通の家庭料理にひと手間、スパイスをプラスするだけで、いつもの味を簡単に変えられ、美味しくいただける料理を教えている。2020年会社を設立、大阪の北摂に新しくアトリエを構えた。

桑原亮子さん
プロフィール
大学卒業後、直ぐに結婚し長男を出産。家庭に入り主婦業をスタートし、3年後長女を出産。その後、一旦海外事務の仕事に就くも、三人目を出産するタイミングで、仕事をやめて再び主婦業に。その後、ママ友と一緒にインド料理教室を開き独立。レッスンの他に、レシピ提供、商品開発、TV出演などなど、活躍の場を拡大中。

好きを仕事にしようと思ったきっかけis…

食べるという幸せを伝えたかったから

大学卒業後にすぐに結婚、出産し、主婦業に邁進する毎日でした。このとき、時間があったので、独学で英検一級を取得。その後、セカンドシングルに。2人の子供を抱え、語学を活かして海外事務系の仕事に就きました。これが人生初の就職でした。その後、ご縁があり再婚、30歳で3人目が生まれるタイミングで主婦業に戻ることに。

 

料理教室を始めるきっかけは、再婚した夫が大のカレー好きだったから。料理本を読んだり、海外のサイトからレシピを収集したり研究していました。スパイスを取り寄せたり、珍しいものを求めてアメ横まで行ったことも。でも何度作っても夫に「コレじゃない」と言われて。正解がわからなくなっていた頃、幼稚園のママ友にインドの方がいらして、習うようになりました。夫が求めていたカレーは、南インド料理風だったみたいで、初めてビンゴをもらいました(笑)。そのママ友・プリヤが「料理教室をしたい」と言い始めて、一緒にスタートしたのが、私のスパイス料理教室の始まりです。

彼女が英語しか話せなかったので、通訳しレシピを日本語に作り直したりしました。近所のママたちがいつしか集うようになり、珍しい南インド料理の教室だったのでいつしか、週一だった料理教室は回数を増やしていくことになりました。でも冬が来たタイミングで、日本の寒い冬に馴染めなかったプリヤが急に帰国してしまったのです。このままやめるにはカッコが悪いし、元からお料理が好きだったので一人で再スタート。大体それが32歳の頃。一旦入り込むと、スパイスの世界は奥が深く、自分で深堀りしているうちに、次から次へとレシピが浮かび、試行錯誤するのが楽しくなってきました。最初は自宅でレッスンしていましたが、生徒さんが増えるにあたって、近くのワンルームを借りることに。教室は6人制の1回3時間コース。主婦の延長で始めた教室は、あっという間に定員が膨れ上がって、夫の扶養も外れてしまいました。それなら、「会社にしてもっと広いアトリエを作っては?」と夫のアドバイスで、2020年38歳で会社を設立、さらに広いアトリエを、今度は内装にもこだわってOPENしました。

料理は、最初と変わらぬスパイスとハーブを使った料理。スパイスと言ってもジャンルは、フレンチやイタリアン、中華にこだわっていません。和食でも味噌とマスタードを組み合わせたら立派なスパイス料理。いつもの煮物や魚料理の味が急に変わります。私は、スパイスによってマニアックになる料理をよしとしていません。あくまで主婦の作る、誰にでも美味しく食べていただける、家庭的な料理を提供していきたいと思っています。もちろん、パーティーや女子会にも流用できて楽しめる料理も。

スパイスはいつもの食材や料理に加えるだけで、香りを変え、味を変える醍醐味が楽しめます。人生も同じ、大きな目標を立ててがむしゃらに突き進むのではなく、ちょっとした閃きが、人生を大きく変えていくきっかけになるように思います。その時その時、自分の人生に訪れる事象の中で、夢中になれるものが見つかればそれが幸せ、チャンスです。難しく考えることも、難しいことに立ち向かう必要もなく、ちょっとした楽しみになればいい、スパイスのように。そして、真面目に取り組めばいいのだと思います、だって好きなことなら夢中になれるはず。熱くなりすぎず、淡々と真面目に。でも心は熱く、これからも、この仕事を続けていけたらいいなと思っています。

好きを仕事にするまでのスケジュール

2004年
大学卒業、結婚、出産
2006年
長女出産
2012年
次男出産
2015年
友人と料理教室を立ち上げ
2016年
独立
2020年
会社設立 アトリエ開設

1日のスケジュール

子供たちも大きくなって上の二人はそれぞれ自分のことができるように。平日は子供と主人を送りだしたら、気になる家事もひとまず手を付けず、アトリエに出勤。頭の中でシュミレーションした段取りでスピーディーに準備をします。3時間のレッスンが終わると、片付けと次の日の準備をしてアトリエを後にします。打ち合わせを済ませ、自宅に滑り込み。家事と食事を同時にこなして・・・・、気がつけばいつも21時を超えています。

1週間のスケジュール

料理は主婦にとっては日常のこと、それは私にとっても同じです。だから仕事をONとOFFにきっちりと分けて考えていません。OFFにしている日曜日は、子供のクラブや習い事に同行したりすることもありますが、レッスンに使えそうな食器やテキスタイルを探しに、ヴィンテージ屋さんを巡ったり、新鮮な食材やスパイスの買い出しに出かけています。

桑原さんに3つの質問!

美味しいスパイス料理のコツは?

私が提案しているスパイス料理は、一般のスーパーで手に入る食材で作る家庭料理がほとんど。スパイスも時には特殊なものもありますが、一般的に手に入るものばかりです。スパイスは1つでも加えると、味を大きく変えることができる食の魔法使い。さらにその組み合わせを考えると、味の世界を格段に広めてくれます。スパイスの効能を知ると美味しい薬膳に早変わり。家族のための、そして自分自身のウェルネスのための食事になります。写真のカレーには、ターメリック、クミン、コリアンダーなどが入っています。チキンとトマト、玉ねぎを生姜とニンニク、ペッパーで炒め、30分ほど煮込んだだけで、風味の良いスパイシーなカレーが完成します。カレーだけでも、スパイスの合わせ方で100種類のレシピがあります。

商品開発とはどんなことをしていますか?

カステラ専門店「デ カルネロ カステ」さんからのご依頼で、昨年スパイスの利いたオリジナルのカステラを一緒に作らせていただきました。
食品添加物などを一切含まず、品の良い甘さとほどけるような口当たりのカステラに、私がアレンジしたシナモンやカルダモン、香りの良いディンブラ茶葉を合わせ、アクセントにラム酒を少し。可愛い焼き印とオシャレな箱にもこだわりました。大切な方へのプレゼントにも喜んでもらっています。
https://decarnerocaste.net/

こだわりのある好きなコト・モノは何ですか?

若い時からヴィンテージが好きです。幼い頃、祖父母も同居する旧家で育ちました。普段の生活の中で年季の入った家具や食器を使って育ったので、いつしかそれを楽しむようになったようです。お料理で使う食器はもとより、洋服やバッグなどの小物やジュエリーも大のヴィンテージ好き。ただ、古いもので全身コーデするのではなく、新しいものを組み合わせて重ねるのが好き。写真はCelineのヴィンテージのトレンチコートとcen.のプリーツスカートを合わせました。

スパイスの香り同様、香水やルームフレグランスが好きで集めています。特に、jardinaromatiqueの香水とプロダクトアイテムが気に入っています。気持ちが落ち着き、リフレッシュできるので、アトリエでも使っています。

撮影/山口陽平(VENTO) ヘアメーク/川岸ゆかり(Luck.) 取材/八尾美奈子

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