専門家に聞いた「新型コロナ、もしも濃厚接触者になったら」
まだまだ続くwithコロナ。ママたちは孤独な子育てを強いられている場合も多いです。受験本番シーズン、そして春の新入園・入学を控え、親として知りたい新型コロナウイルスの今について、<前編>に続きアメリカ在住の峰宗太郎先生にzoomでお話を伺いました。
――お話を伺っていると、まず親がかからないことが大切だと学びました。そもそも、新型コロナウイルスはどのようにうつるのでしょうか?
新型コロナウィルスは、90%以上はせきやくしゃみで飛んでくる飛沫や空間に漂っているウイルスを含む粒子を吸い込むことにより感染が起こると考えられます。残りの5%〜10%は汚染されたものを触り目や鼻から入る接触感染だとも言われています。手を洗ったり除菌したりというのは、残りの約10%までを叩くためにやっていることです。ですから「感染している人と話をして唾などが飛んでくる状況」が一番危ない。前回お話しした通り、幸い子どもにはうつりにくいので、特に気をつけるべき人はは大人です。ウイルス感染の成立そのものにはあまり時間は関係ないので、園帰りのママ同士でコーヒーを飲みながらしながらおしゃべりというのも、夜の会食とリスクは同様になってきます。
――ママ会も今は難しそうですね…。
手洗いや消毒が強調されがちですが、1番怖いのは感染者と「同じ空間」にいて、近くで「飛沫を浴びる」、「滞留する粒子を吸引する」ことです。ですから、しゃべりながら食事する、これがある意味では1番怖いのです。ママ会は今はやめたほうがいいでしょうね。私の住んでいるアメリカのコミュニティーでも、幼稚園のお迎えのバスを送り出した後にコーヒーブレイクでも、とママたちが集まっていた日本人会にだけ流行ってしまった事例がありました。マスクを外し、近い距離で同じ空間内でおしゃべりする集まりは、流行が収まるまでは避けた方が良いでしょう。
「会食禁止」というと夜の集まりのようで、語弊がありますね。ウイルスにとって、時間帯や性別、会社かプライベートかは関係ありません。この人と暮らさなければいけないという人以外と飲食をすれば外からのリスクは上がることになります。
――緊急事態宣言解除後、一緒に住んでいる家族と外食に行く場合のリスクはどうでしょうか?
外食に行ったお店がどれくらい混んでいるか、換気がきちんとされているかが特に問題です。もしお店の中に感染者がいればリスクがありますし、換気が悪いなか大声でしゃべっている人がいたり、楽しそうに歌っているなど、飛沫などの量が上がるお店であればさらにリスクは高まります。家族で行かなかったとしても、家族の誰かが行けば持って帰る可能性もありますね。行くならばどういう対策をされているかはチェックすべきでしょう。そのように考えれば、対策をしているお店ですいている時間帯に家族だけで食事をする分にはリスクは高くはないこともわかりますよね。
――満員電車で通勤したり、出社でのリスクはどの程度でしょうか?
職場内でも感染事例はありますが、飲食の場で感染するケースが多いと思います。シンプルな話、飲み会や誰かとの一服、お茶会などが危ない。これは飛沫と滞留する粒子からの感染だからですよね。満員電車に乗っていても、職場との往復だけで大きなクラスターになった事例は知られていません。家庭内感染・施設内感染も出ていますが、ウイルスを持ってきた人は他人との飲食かカラオケなどをして外から感染してきた人が多いようです。職場のみんなが基本的な予防策を守っている自信がない場合は、できるだけテレワークにするなどしか防衛策はないでしょうね。
――とはいえテレワークにできない人もいますよね。外で働いていると、お昼ご飯は避けられないものですが、どのようにすればリスクを減らせますか?
感染している人がいるかどうかがまずは一番の問題です。感染している人と一緒に食事をするなど、接触するからうつるのです。そう考えれば、オフィス街の昼の食事はそんなに危なくないと考えられます。定食屋さんに行っても長時間しゃべりながら食べる人は比較的少ないですね。夜が危ないと言われるのは、楽しみながらしゃべりながら食べていることが大きいです。お酒も入りますしね。みんながお昼に同じ場所で食べていても感染者がいなければ危なくはないのですが、今はどこかでもらってきた人がいるかもしれない、という可能性が排除できませんよね。さらにリスクを下げるためには、できるだけ個別にお昼をとるのが安全でしょう。
――濃厚接触者が近くに出た場合、どうすればいいですか?
濃厚接触の定義の仕方が自治体によって違ったりしますが、相手はウイルスなので、ウイルスがどう振る舞うかを考えて行動を決めた方がいいでしょう。ウイルスは、感染者と同じ空間にいなければ基本的にうつりません。感染者と一緒にいて、その後症状が出た場合はかなり怪しいです。また検査では偽陰性といって、実際の感染者が検査で陽性になるのは8割程度までで、検査をすり抜けてくる感染者もいます。これ以上広めないようにするためにできることはただ一つで、「自主隔離」です。感染してからおよそ5日くらいで症状が出て、ウイルスの排出がなくなるのは約12日後。ですので14日あればほぼ大丈夫です。濃厚接触者になったら、まわりの人のためにも組織防衛のためにも勤めているところ、通っているところに報告をすべきですし、報告しやすい環境作りが望まれますね。今はある意味ではもう誰がかかってもおかしくないので、かかった人を責めないこと、体調不良になったら休むことを了承し、むしろ勧めていくことが大切ですね。
――無理に働いてしまわないよう、環境づくりも大事ですね。かなり感染者数が増えてきて、医療の現場が心配です。
感染者数は緩やかにではなく、増えてくる時は急激に上がります。がん専門病院でも新型コロナ患者の受け入れを始めたような状況です。つまりがん患者の手術が後回しになっているということが起きています。交通事故にあったら搬送先がないという事態が、都内であれば何もしなければ今月中にもきてしまうかもしれない。とにかく防衛的に、少しでも感染者数を減らすことをしなければいけないと思います。
――まだまだ戦いは続きそうですね…明るいニュースはないでしょうか?
幸い、ワクチンはかなりよく効き、アメリカ発の2社のワクチンでは、効果は95%程度です。2回打つのですが、2回済めばほぼプロテクトされていると思って良いでしょう。日本でもこれから医療従事者をまず対象に順次始まり、秋冬までには希望者が比較的自由に打てるようになるのではないでしょうか。これは努力義務ではなく、希望者が無料で受けられることになっています。ただ16歳未満は現状打てませんから、大人が率先して打ち子どもたちを守ることが大切。ワクチンを打たない人があまりに多いと流行がおさまりません。メディアも副反応が出た際などに事実を冷静に報道していただきたいですね。
ワクチンは大きな希望ですが、しかし、ワクチンだけでは流行はとめられません。基本的な感染対策(三密を避ける・手を洗う・距離を取る・マスクをする・体調が悪い時に外に出ない)を行い、あわせて対策してこそなんです。みんなで協力しあい、引き続き気をつけていければいいですね。
――重症化しやすい0歳や基礎疾患を持っている方を守りたいですね。
はい、どんな感染症であっても0歳の子は基本的に重症化のリスクが高いので、まわりの大人が守ってあげることが重要です。これを繭でつつむように守ることから、コクーン効果というのです。インフルエンザも同じように毎年考えないといけないと思います。インフルエンザワクチンは重症化を防ぐというデータが出揃っており、生後6ヶ月以降にワクチンを打てますが、打っている方は日本では少ないですし、大人の接種率もなかなか上がりません。
――今年はまだwithコロナなのかな、と思いました。最後にメッセージをいただけますか?
子どもを守るためにも、大人が淡々と繰り返し基本のキを守ることが大切です。子どもに何かを求めるよりも、大人の感染を防いだ方が現実的でコストパフォーマンスも良いでしょう。人を責めたくなる気持ちが湧き上がることもあると思いますが、人の弱いところにつけ込むのが今回の新型コロナウイルス。情報であおらないこと・あおられないこと、人は人と思って自分がとにかく基本的なこと<三密を避ける・手を洗う・距離を取る・マスクをする・体調が悪い時に外に出ない>を守っていくことが大事ですね。
外に出ざるを得ない人も多いので心配になるかと思いますが、幸いなことに1歳以上の子はたとえかかってしまっても重症化することは少なく命に係わる重大な状況に必ずなってしまう、などとは気にしなくて良いことが多いです。これからも情報を丁寧に集めて、丁寧みていきつつ、お互いがお互いを守る気持ちで、基本的な予防策を続けていきましょう。
前編はこちら>>>今一度知っておきたい「子どもと新型コロナウィルスQ&A」
教えてくれたのは・・・
峰宗太郎先生
医師(病理専門医)、薬剤師、博士(医学)。京都大学薬学部・名古屋大学医学部卒、東京大学大学院医学系研究科修了。国立国際医療研究センター病院、国立感染症研究所等を経て、米国国立研究機関博士研究員。病理学・ウイルス学・免疫学が専門。新型コロナウイルスの最新情報も積極的にシェアを行う。Twitter:@minesoh
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取材・文/有馬美穂