性=ポルノじゃない!「おうちで性教育」の始め方
ご自身が子育てをしながら疑問に思ったことを専門家に取材しわかりやすいエッセイマンガにしているフクチマミさん。長女にそろそろ性教育が必要だと思いつつも、抵抗を感じ悩んでいたとき、長年にわたり性教育に携わる村瀬幸浩先生と出会ったことがきっかけで、共作『おうち性教育はじめます』を執筆。2020年3月に出版したところ大きな話題に。今回は、VERY読者代表としてモデルの牧野紗弥さんに登場いただき、性教育の大切さについて語り合ってもらいました。前編は、おうちでの性教育の始め方についてです。
※この対談は2021年2月号(1/7発売)より抜粋しています。
▶︎後編を読む(3/3配信)
「おうちで性教育」小学生からでも間に合いますか?
『おうち性教育はじめます 一番やさしい!防犯・SEX・命の伝え方』(KADOKAWA)より一部抜粋
“日本ではセックス=ポルノというイメージが強く、「性教育」に抵抗を感じてしまうケースが多いです。”(フクチマミさん)
“いろんなママ友と話しても〝性〟についてオープンにしている家庭はまだ少ないと感じています。”(牧野紗弥さん)
(牧野さん)シャツ¥21,000(ウィム ガゼット/ウィム ガゼット ルミネ新宿店)ピアス¥12,000〈グリン×エッフェ ビームス〉(ビームス ハウス 丸の内)
家庭では、性の話題を
避け続けてきたのかも
牧野 うちは10歳の女の子、8歳と5歳の男の子の3人きょうだいです。「性教育=セックス教育」というイメージがあって、取っ付きにくいなぁ……というのが正直な気持ちです。よく家族で動物のドキュメンタリー番組を観るのですが、交尾シーンが映ると、早く終わればいいな~と黙って時間をやり過ごしています(笑)。長女にいたっては私の姉が〝授かり婚〟をしたとき、「結婚していなくても子どもってできるの?」という質問に、うまい返しができずちょっと反省しています。
フクチ 私も同じでした。私たち世代が習ってきた性教育って、月経や精通のしくみや妊娠・出産の話がほとんどでした。でも本当は性教育はとっても幅広くて、私たちが学校で教わったことは、たくさんあるテーマのうちの一部分でしかないんです。
牧野 性教育は、いやらしい意味合いがつきまとってしまい……。
フクチ そうですよね。日本には「性=ポルノ」という概念が根強いからなんです。世界のポルノの多くが日本で作られていて、日本は「性産業先進国」とも呼ばれているそうなんです。そんな中で生きてきたのだから、そう思ってしまうのも当然。でも、本来の性教育は、いのち・からだ・健康の学問。性的なトラブルを避け、適切に対処できる知識を持ち、自分の性や体に対して肯定的に捉えられる「自己肯定感の高い」人間に育つために必要な教育なんです。
牧野 そう聞くと、概念は全く変わりますね。
性教育のメリット
◎自分も他者も大切にできる人間に育つ
◎性的なトラブルを避けたり対処できる人間に育つ
◎自己肯定感の高い人間に育つ
日本は遅れている!?
海外の性教育事情
フクチ 北欧やヨーロッパなどの性教育先進国では、性を科学的な視点で人権、健康、ウェルビーイング(幸福)の話として伝えています。特に進んでいるオランダでは、性教育は義務です。スタートは幼児期からで、その後も年齢に沿ったカリキュラムがしっかりと組まれ、責任ある関係づくりや性暴力について考える時間も設定されているそうです。他にもニュージーランドでは性教育の啓発CMを放映していたり、中国では小学生向けの性教育の教科書が副読本として作られているんですよ。
牧野 小5の長女がまさに明日、初めて学校で性教育の授業を受けるんです。一方で、息子たちは「パンツ見えた!」、なんてからかう段階にある。そんな我が子を見ていると、我が家は性教育の偏差値は低いですね。
フクチ 日本ではまだそれがよくある光景ですよね。「うちは小さいから、おっとりしているから、まだ教えなくていい」という親たちは、根っ子に「性教育=セックス」という認識があるのかもしれない。でも、セックス以外にも幼児期から伝えられることはたくさんあるんですよ。
牧野 そうなんですね。では、私のような初心者ママが、家庭で最初に何から教えていくのがよいのでしょうか。
性教育初心者ママへ。
子どもの疑問に答えながら性教育をはじめてみよう。とにかく、繰り返し繰り返しが大切!
「プライベートパーツ」は、
性教育のはじめの一歩
フクチ 幼児期から教えておきたい基本の3つがあるんです。まずは「プライベートパーツ」について。からだは全部分その人のものだけど、特に「『口、胸、性器、おしり』の4つは、あなただけの大切なもの」と伝えることです。からだの内部につながっていて命に直接関係する場所で、妊娠・出産や性愛に関わる所だからなんです。だから、他人が勝手に触ったり触らせたりするのはいけないことだと幼児のうちからしっかりと教えることが大切。何歳からでも、まずこのことを教えてあげてください。(プライベートゾーンと呼ばれることもあります)
牧野 5歳の子が理解してくれるでしょうか?
フクチ すぐ理解できなくても繰り返し繰り返し伝えていけばOKですよ。そして、2つ目は「NO・GO・TELL」という危険から身を守るための声がけです。自分の身に怖いこと、不安なこと、痛いことや嫌なことがあったら「NO」=ハッキリと拒否していい。そしてNOと言えなくても「GO」=とにかく逃げること。そして、そんな出来事があったら、信頼できる大人に「TELL」=相談をする。ということを教えましょう。3つ目は、「タッチング」と「リスニング」です。プライベートパーツは避けて、いとおしいものとして子どものからだに触れること、そして目を見て子どもの会話に耳を傾けることです。これにより「自分は大切な存在なんだ。愛されているんだ」という自己肯定感が育まれ、親になんでも相談できる信頼関係が築けます。前述の「NO・GO・TELL」の〝TELL〟の土台づくりにもなります。
牧野 「性教育」ってそういうことも含まれるのですね。「NO」と言えることは、これから生きていく上でとっても大切なこと!
フクチ よく、親子やきょうだいでくすぐり遊びをしますよね。そのときに、不快なことや、されたくない気持ちを我慢せずに「NO」と言える家庭環境にしておくことです。子どもの気持ちは尊重されるべきで、その体験こそが、相手を尊重できる人間へと育つことにつながるんです。
幼児期に伝えておきたいこと
プライベートパーツ
NO・GO・TELL
タッチング&リスニング
※ NO・GO・TELLはNPO法人CAPセンター・JAPANのプログラムです
◎フクチマミさん
マンガ家・イラストレーター。1980年生まれ。デザイン事務所勤務を経て2004年よりイラストレーターとして活動。ママ目線で取材をして執筆した、出産や子育てにまつわる著書が多数ある。
◎牧野紗弥さん
VERYレギュラーモデルとして、美容からファッションの分野で幅広く活躍。私生活では3児の子育てと仕事の両立に励み、等身大の姿が読者の共感を呼んでいる。母、妻という家庭内におけるジェンダーのあり方に疑問を抱き自ら学んでいくことで、円満な家庭環境を模索中。
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撮影/HAL KUZUYA ヘア・メーク/陶山恵実〈ROI〉 スタイリング/坂野陽子〈f-me〉 取材・文/須賀美季 編集/渋澤しょうこ
*VERY2021年2月号 別冊付録「性教育スタートはママのLOVE♡」より。
*掲載中の情報は誌面掲載時のものです。商品は販売終了している場合があります。