「心ときめくままに、人生を送ることが幸せ」福島三知子さん【趣味キャリ生き方図鑑vol.11】

人生100年時代。一つの仕事・肩書きだけで働くというモデルそのものが変わりつつあります。結婚や出産等がきっかけで、それまだと全く違った仕事や働き方をスタートさせるケースも珍しくありません。STORY読者の間では“好き”を仕事にして、耳慣れない肩書きで活動している人が増えています。そんな、人生のセカンドキャリアをスタートさせた方を取材。第11回目は、ある日偶然つけた深夜番組で観た、田舎のおじいちゃんが絞搾っている、美しいオイルに一目惚れ。それまで勤めていた会社を辞め、2か月後には搾油師を目指し、リスタートした福島三知子さんのお話です。

福島さんのお仕事は…
搾りたてオイル専門店「FRESCO」搾油師&シニアオイルソムリエ

オーダーを受けてから搾油して、“搾りたて”のオイルを届ける、新鮮オイル専門店のオーナー兼搾油師。「FRESCO」のオイルは、原料選び、焙煎、ろ過、充填する工程をすべて福島さんが手がけます。オイルの原料は、マカダミアナッツやえごまなど。例えば2㎜にも満たないえごまオイルは1㎏から、わずか300mlしか搾油できない、とても貴重なオイル。一切熱を加えず、原料に圧力をかけることで搾油する「コールドプレス製法」で抽出されたオイルは、素晴らしく美味しいと人気。全国から受注が来ます。福島さんの仕事は、その貴重なオイルを、一滴一滴大切に搾る仕事です。

福島三知子さん
プロフィール
大学卒業後、就職するも、やりがいを見つけられず、1998年にリクルートへ転職。ブライダル関連雑誌「ゼクシィ」の企画・編集に携わる。その後、退職し、再就職。転職先のサイバーエージェントでは、2005年から2年間は東京、2007年からは大阪、2013年から東京勤務の超ハードな仕事をこなす。11年勤続し、退職。搾油師としてリスタート。STORY WEBにてDIGITALISTとしてBlogも更新中(https://storyweb.jp/digitalist/author/fukushimamichiko/)。

好きを仕事にしようと思ったきっかけis…

オイルにも「搾りたて」という世界があることを伝えたかったから

最初に就職したリクルートでは「ゼクシィ」の編集の仕事を担当。創刊3年目を迎えたところの発展途上の雑誌で、新しい企画を提案しプレゼン。認められると自分が中心となって進行できました。次から次へと企画を打ち立て、実施。撮影、編集をこなし、駆け抜けた20代でした。作り上げた企画が人に喜んでもらえることが、自分のやりたいことだったと実感しました。
結婚雑誌を約7年作り続けたものの、他の業界のことをあまり知らなくて、視野の狭い人間になっているんじゃないかって。

2005年、新たなやりがいを求めてサイバーエージェントに転職。最初に配属されたのは、買収して間もない子会社。サイトのフルリニューアルなど、ゼロから作り上げていく楽しさに溢れれる毎日。手探りであるほど、血が騒ぐようなやりがいが沸々と沸き上がりました。その後、広告代理店の中で何度か異動し、2013年からは東京に異動。最初は週1〜2日出社が、週5に。家は大阪、会社は東京、担当エリアは東京、名古屋、関西、九州も。単身赴任のおやじ状態、でも充実していました。

そんなある日、多分深夜0時頃。自宅でテレビをつけた瞬間、オイルがじわじわとでてくる画像が目に飛び込んできました。

「なにこれ、キレイ!」

元よりオイル好きで、料理は好きなタイプ。会社でコンビニのサラダをたべる時、ドレッシングが嫌で。添加物ぎらいで、お塩にこだわったりしていました。若いとは言え体を酷使した、むちゃくちゃな生活を続けていたので、食には気をつけていました。

番組を調べ、特集していた搾油所をつきとめました。そして3週間後には、大阪から車で3時間弱の岡山県津市の山奥に。そこでいただいた搾りたてのオイルの味は、今まで食べたことのない素晴らしい美味しさ。「キレイで美しい……」、心がときめきました。聞いた話では、昔、岡山県内には600軒の搾油業のお店があったそうです。家の庭に生えている椿の種や菜種などを搾油所に持ち込み、搾ってもらっていた時代もあったとか。でも大量生産になり、町から姿を消してしまったそうです。

その話を聞いたとき、「作りたい」と思いました。自分がこのキレイなオイルを搾って届けたいと。
オイルの好きな人ならきっと感動するはず。町にパン屋さんやケーキ屋さんはあるけど、オイル屋さんはない、成功するはずだと。

趣味ではできない、副業では無理。今までも「イイな」と思ったことはありましたが、仕事を辞めてまでやりたいと思ったコトはなかった。でも、悩みました。そこで、サイバーエージェントの上司に相談してみたんです。仕事も好き、仲間も好き、お客さんたちも好き、どうしようかと。すると彼が、「異動もいつかあるし、会社も時代とともに変わる、人との関係も変わるはず。一生同じ状況は続かないもの」だと。「自分が好きなこと、やりたいことをそのタイミングで選んだら、人生後悔はないはず。僕は応援します」と。背中を押してもらいました。

会社員時代から美容と健康に興味があったので、健康美容コミュニケーター、ホリスティックビューティーアドバイザー、アスリートフードマイスター2級の資格を取得していたので、その知識も役に立ちました。オイル界のレジェンドである故・神谷敬正氏に師事し、2017年6月一般社団法人日本オイル美容協会のオイルソムリエの資格取得。2017年7月、食用油脂製造業の許可を得て、念願の、搾りたてオイル専門店「FRESCO」をオープンしました。ホームページの立ち上げなども、昔の経験を活かして自分一人で撮影して、構成を考え、アップしました。

「FRESCO」とはイタリア語でフレッシュの意味。自分の思いがいつまでも新鮮でいたい、その思いも込めてつけました。明日交通事故で死んでしまうかもしれないし、人生何が起こるかわかりません。今、私には養う家族がいるわけでもなく、思うまま身軽に動いてもいいじゃないかなって。心ときめくままに、真正面から向かっていく時があってもいい。一度きりの、自分だけの人生だから。

好きを仕事にするまでのスケジュール

1996年
建築関係の会社に就職
1998年
リクルートに入社
2005年
サイバーエージェントに入社
2016年 6月
搾油師のTVを観る
2016年 9月
退職
2016年 10月
搾油師として修業スタート
2017年 6月
オイルソムリエの資格取得
2017年 7月
搾りたてオイル専門店「FRESCO」オープン

1日のスケジュール

資格を取得したり、開業のための資料集めや勉強をしていた頃は、いくら時間があっても足りないほどでした。今は、インスタの投稿などの時間もとれるようになり、新商品の構想も進めています。どんな時も、保護ネコのねねちゃんとぽっぽちゃんと一緒にいる時間が私の癒しの時間です。

1週間のスケジュール

初めてTVで、小さな種などから採れる美しいオイルを見てから、それをいかに新鮮なまま、美味しく届けられるか。多くの人にこの美味しさを体験してもらえることを願って、搾油しています。週6の仕事も苦にならず(笑)、自分のやりたことに、自分の時間を費やせる幸せを実感しています。

福島さんに3つの質問!

フレッシュなオイルはどんな種類がありますか?

    ナッツ系のオイルを数種ご用意してます。風味や香りが人気なのが、ピスタチオオイルやマカダミアナッツオイルでしょうか。ナッツは女性に嬉しい栄養素がたっぷり含まれています。ビタミンEとファイトケミカルが豊富なアーモンドオイルやオメガ3を含むくるみオイル。オイルは美容効果もありますが、何よりもお料理やスイーツなどをとても美味してくれる、一滴の魔法。種子には、植物が発芽して育つ過程で必要とされるエネルギーや栄養素がたっぷり詰まっています。つまり植物オイルは植物が生きていくための生命力が凝集された「生きたエッセンス」。そのままスプーンで一匙、口に含んでいただけたら直ぐにその鮮度をわかっていただけると思います。サラッとした瑞々しい食感で、香りのよい風味がお口いっぱいに広がりますよ。

大切に集めていらっしゃるものはありますか?

今はもう店頭では見られなくなりましたが、エルメスの「シエスタ」シリーズのティーセットは私のお守り的な食器たちです。20代の時にエルメスで一目惚れ。繊細に組まれた花たちの装飾と蝶とのハーモニーがとても素敵に見えて。明るい雰囲気の色調も気に入ったポイントです。少しづつ集めるのが楽しみで。今日は妹が焼いてくれたケーキをのせて、アールグレイを。

今、はまっていることはありますか?

オイルの材料になるナッツの大袋を運んだり、荷物を発送したり、実は体力勝負な仕事です(笑)。だから40歳を過ぎて筋力トレーニングをしようと思って、友人のパーソナルトレーニングジムに通っています。本格的なマシンが数多く揃っています。最初は続くかな?と不安でしたが、トレーナーさんの指導も楽しくて、週2は必ず通っています。ボディラインが整い、代謝も良くなった気がします。朝9時から運動すると、心もスッキリしてとても調子がとてもいいんです。

◆JPEC(ジェイペック)大阪・堀江 https://jpecism.com/

撮影/山口陽平(VENT) ヘアメーク/川岸ゆかり(Luck.) 取材/八尾美奈子

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