【漢字】地元の人しか読めない!?「地方の市町村名」7選【近畿編】
新年度もスタートし、これまで縁のなかった地名を目にする機会も増えると思います。そこで「日本難読市名に挑戦」というテーマで、地元の人なら難なく読めても、そうでない人にはちょっと読めない市名を、各都道府県から一つずつ選んで出題しています。今回は「近畿」編です。
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1.「尾鷲市」(三重県)
三重県からは「尾鷲」です。常用漢字「尾」の音訓は「ビ・お」。常用漢字外でも鳥の名として目にする「鷲」の音訓は「シュウ・わし」。そのまま読めば「ビシュウ」か「おわし」ですが……。
正解は「おわせ」でした。「わし」の最後の母音「i」が「e」に発音変化したわけですね。昭和の時代、旧尾鷲町と近隣の村が合併して市となった際に、「おわし」とも読まれていた読み方を「おわせ」と統一したということです。尾鷲市は、三重県南部に位置し、東は太平洋に臨みます。雨の多い土地であることで知られます。
2.「栗東市」(滋賀県)
滋賀県からは「栗東」です。「栗」は常用漢字外ですが、秋の味覚「栗(くり)」は読めますね。しかし、これは訓読みですから、「東」を「トウ」と音読みにするなら「栗」も音読みですね……。
正解は「リットウ」でした。かつてあった地名「栗太(くりた)郡」の東側にあるということに由来しているそうです。栗東市は、滋賀県の南部に位置する交通の要衝地です。
3.「向日市」(京都府)
京都府からは「向日」です。「コウニチ」「むかひ」などと読まれる方が多いのではないでしょうか?
正解は「むこう」でした。この地には古くから「向(むこう)神社(現在は「向日」と表記)」があり、地名「向日」もこれが由来と考えられます。向日市は、京都府南西部に位置し、古代には長岡京(平安京の前の都)の大極殿が置かれた地です。
4.「枚方市」(大阪府)
大阪府からは「枚方」です。誤読の定番は「マイかた」ですね。枚方市の公式HPにも「マイカタちゃいます!」のページがあるくらいです。
正解は「ひらかた」でした。常用漢字「枚」には、音読み「マイ」しか示されていませんが、表外読みとして、薄く広がるものを数える「ひら」の読みがあります。「ひとひらの雲」なんて言い方を聞いたことありませんか。これ「一片」または「一枚」と書きます。地名の由来は不明とのことですが、奈良時代の書物には、すでに「ひらかた」の名は見えるようです。枚方市は、大阪府北東部の淀川東岸に位置し、古くから大阪湾と京都を結ぶ水上交通の要地です。
5.「宍粟市」(兵庫県)
兵庫県からは「宍粟」です。こちらも難読地名クイズの定番です。たぶん、「ししあわ」としか読めないのではないでしょうか。
正解は「しそう」です。常用漢字外の「宍」は「肉」の字形が崩れた漢字。昔は肉のことを「しし」と言いました。「栗(くり)」に似ている「粟(あわ)」は穀物の名。古い仮名づかいでは「あは」です。つまり、「ししあは→しさは→しさう→しそう」と変化しました。この地には「鹿沢(ししさわ)」という地名がもともとあり、そこに「宍粟」の字があてられたという説があるようです。宍粟市は、兵庫県中西部に位置し、北は鳥取県、西は岡山県とも接する交通の要衝地です。
6.「御所市」(奈良県)
奈良県からは「御所」です。普通に読めば「ゴショ」ですよね。
正解は「ゴセ」です。地名の由来は、市内の「葛城(かつらぎ)川」に五つの瀬があったとする説などがあるようです。だとすれば、発音に合う「御所」の字を借りたということになるのでしょうか。御所市は、奈良県西南部に位置し、西は大阪府と接ています。
7.「御坊市」(和歌山県)
和歌山県からは「御坊市」です。「御所」に続いて「御」つながりになりました。「オボウ」か「ゴボウ」か迷うところですね。
正解は「ゴボウ」のほうでした。「御坊」とは「僧の住まいや寺院」を意味する言葉ですが、かつて、この地に移築された「西本願寺の別院(日高御坊)」を人々が敬い、「御坊様(ごぼうさま)」と呼んだことしたことに由来するそうです。御坊市は、和歌山県西部に位置し、市の西部は紀伊水道に臨みます。
「近畿」編、いかがでしたでしょうか?各問の解説文作成にあたり、今回も該当各市のHPも閲覧させていただきました。
ちなみに「近畿」の「近」も「畿」も「近い」を表わします。つまり、歴史的には「皇居の所在地に近い国々」を意味しているわけです。「近畿」と「関西」との違いは話題になりますが、「関西」は本来「逢坂の関(京都と滋賀の間にあった関所)より西の地」を指す名称でした。現在では、「関東」に対する「関西」という使い方や西日本一帯を指す場合もありますが、「近畿」と同じで、「中部」に含めない三重県を含めた二府五県を意味することが普通です。
次回は「中国・四国」編です。
《参考文献》
・「広辞苑 第六版」(岩波書店)
・「難読漢字の奥義書」(草思社)
・「旅に出たくなる地図 日本」(帝国書院)
文/田舎教師 構成/CLASSY.ONLINE編集室