女優・浅野ゆう子さん「アンチエイジングより自分の生きがいを大切に」<後編>
ワンレン、ボディコンが一世を風靡したバブル絶頂期。そのブームを牽引したのが'80〜'90年代のトレンディドラマの女王、浅野ゆう子さん。当時とまったく変わらないヘルシーな印象で、元祖、美脚の女王は今も健在。57歳で結婚した浅野さんに、美しさと幸せの秘訣を伺いました。
とにかくストイック。何でもやりすぎてしまう
朝はスムージー作りから始まります。野菜はすべて有機のもので、小松菜・ほうれん草・パセリ・セロリ・人参・アボカド・パプリカ2種・ゴーヤ・ケール・レモン・リンゴ・キウイ・冷凍ベリー・蜂蜜・ヘンプシード・甘酒・豆乳を入れます。スーパーで1週間分ほど買い込み、飲み始めてから3年。私はあまり変化を感じませんが、健康でいられるのはこのおかげかなぁと。夫はお通じが安定したとか。 夫は夕飯後のデザートを好むので、最初の自粛中は、シフォンケーキに始まり、チーズケーキにバスクチーズケーキ、ガトーショコラも週一で焼いてました。 運動は今は一日3kmを目安にウォーキングを。若い頃はジムに通い詰めて腰がヘルニアになったり、フラメンコを頑張って膝を痛めたりしたので、絶対に無理をしないと決めています。みなさんに美脚の秘訣を聞かれますが、強いて言えばあまり運動しないので、筋肉がつかないのがいいのかも。 肌はとにかく水分補給です。化粧水もさらさらとしっとりの2種類を交互に潤うまでつけます。そして美容液、クリームで。特別な仕事前には念入りにマッサージとシートパック。若い頃はエステに通い詰めていましたが、今は一切行かなくなりました。 でも、体のメンテナンスは欠かしません。山梨県在住のゴッドハンドの先生に体の歪みやコリを定期的にケアしていただきます。自粛中、テレビで見た運動法を熱心にやっていたのですが、自粛明けに久しぶりに先生のメンテナンスを受けたところ、骨がずれて大変なことになっていました。何でもやりすぎてしまう私。自己流で体を動かすのはあまりよくないみたいです。 私はくせ毛なので、長年ストレートパーマとヘアカラーをダブルでやっていました。コロナ禍で白髪がどこまで伸びるか見てみようと挑戦したら、貧相なおばあちゃんみたいになってしまって……。仕事を続けるには髪は商売道具と考え、またサロンでのカラーを再開。その代わり、ストレートパーマをやめ、自分でストレートアイロンで伸ばしています。 とにかく私はストイック。今の時代、手洗いもどれだけやることか!マスクも不織布を割いて中の構造を確認して、いちばん信頼のおけるメーカーのものを使っています。 精神的には嫌なことがあってもわりと引きずらないほう。落ち込みがドーンと来ても、すぐに元気に過ごせます。生まれ持った性格でもあるのですが、女優は、一つのシーンが終わったらさっき演じた台詞は忘れて、新しいものを演じ、また捨てるの繰り返しでしょ。それが身についているから、嫌なことをさっと捨てられるのだと思います。悲しくても切り替える。そうやって乗り越えてきたように思います。
野際陽子さんとの出会いは人生の大きな財産です
28歳のときの「抱きしめたい!」以降、30代はトレンディドラマと言われる作品に次から次へと出演させていただき、多忙な日々を送っていました。一方、プライベートでは買物もし倒しました。当時はエルメスも今ほど高額ではなく、パリに行く度にオーダーしていましたね。もう一生分買ったので、40歳を過ぎてからは物欲がなくなり、今は昔のものを大切に使っています。 私にとって何より大きかったのは野際陽子さんとの出会い。「抱きしめたい!」で母役を演じてくださり、その6年後のドラマ「長男の嫁」での共演は強烈なインパクトがありました。当時野際さんは50代後半で、デニムにスニーカー、ベースボールキャップにプラダのリュックで現場にいらっしゃるんですよ。「よっ!後ろ姿は女子大生」とからかいながらも、なんて素敵な人なんだろうとひと目惚れ。野際さんはご自分から私に連絡をくださることは少なく、私が一方的にアプローチし続けました。完全に恋に落ちていたんです。そうしてお付き合いが始まり、野際さんがどういう人なのかを知っていったのですが、毎日何紙も新聞を読み、英語とフランス語の勉強をされ、時間があれば絵を描き、本を読まれる。日々勉強される方で本当にびっくりしました。 30代後半から40代にかけての私は、トレンディドラマも終わり、これからひとりでどう生きていけばいいのか迷っていました。野際さんに「手に職でもつけたほうがいいんでしょうか?」と相談すると、「あなたは一芸に秀でています。そういう人は少ないのだから、そこを大切に持っていれば、生きていけるでしょう」と。単純な私は「そうか、一芸に秀でているんだ」と思い込み、まだまだ仕事を続けていいんだと思えたのです。 49歳の誕生日には、エルメスの財布の贈り物と一緒に「人生は50歳からよ」と書いたお手紙をいただき、それは私の宝物の言葉です。私の40代を見続けてくださった野際さんだからこそ、心に響きました。 野際さんが非常にあっけらかんとして、「早期の肺腺癌になったけど、手術すれば大丈夫だから」とおっしゃり、本当にすぐに元気になられたのですが、間をおかずの再発。本当にショックでした。押し付けになったとしても、私にできること、一緒にいたい気持ちを大切にしたいと思って、毎日のように病院に行きました。ある日、「亡くなったら家族葬にしてもらうのよ」とおっしゃるので、「私は伺えないですね」と言うと、「あなたは家族でしょ」とおっしゃってくださり……。私もお別れさせていただきました。 ふたりでラスベガスなどにいっぱい旅行もして、楽しかったですね。「男を見る目がないから、私に相談してもだめよ」と常々おっしゃっていたので、そこは忠実に守らせていただいて(笑)、それ以外の時間の過ごし方、仕事への向き合い方など、野際さんから学んだことは私の人生にとって大きな財産です。今でもLINEのメッセージは消さずに大切に保存しています。
アンチエイジングより自分の生きがいを大切に
アンチエイジングを否定しないし、自分を磨くことはすごく素敵で大切なことだと思います。そのために何をすればいいかと考えるし、トライしたいとも思います。でも人生においてその優先順位が何番目かと問われると、これをしたい、あれを食べたい、ここに行きたい、という欲求のほうが大きかったりするんです。食べたかったものを食べたとき、自分が満たされたとき、嬉しい心が顔に出ていると思います。「人生は50歳から」という野際さんの言葉の意味を振り返ると、50歳に達したら、本当に楽しいと思えることだけをしていい年代に入るってことなんじゃないかな。大人としての顔が、素敵な顔なのか、疲れた顔なのか、それとも病んだ顔なのかは、すべてそれまでのその人の生き方や生活感が出るんだろうなと実感しています。 母は88歳。神戸で飲食店をやっていて、元気で生き生きしています。もうびっくりです。お店が彼女の生きがいなんです。野際さんも最後の病床でもスタジオに戻る気満々でした。私も気がつくと女優が生きがいになっていました。芝居が大好きなんです。 今は公演がままならない状況だけれど、でもなくなってはいけない世界だと思うんですね。再び演劇を不自由なくお届けできるときが来て、自分がそこに立たせていただくことが今のいちばんの夢かもしれません。
浅野さんの美の秘密③
野際陽子さんから「お金が貯まるお財布よ」と49歳の誕生日にいただいたエルメスの黄色い財布。添えられたカードには、手書きのメッセージと竹内まりやさんの詞、そして絵が。
浅野さんの美の秘密②
プラセンタが50倍濃縮されている銀座ステファニーの「プラセンタ 100 CORE」はお肌が艶々つるつるになり、メークさんにも「肌にざらつきがない」とほめられるそう。
浅野さんが40代に伝えたいこと
人間ですからくじけるのは当たり前。頑張って前向きになれとは言いたくないですね。自分で自分を労ってあげればそれで十分。そして、人をねぎらってあげられる40代でいたいですね。
●Profile ’60年兵庫県神戸市出身。’74年に歌手デビュー。「恋はダン・ダン」で日本レコード大賞新人賞受賞。’88年連続ドラマ「君の瞳をタイホする!」以降、数多くのトレンディドラマでヒロインを演じ、多くの支持を集める。’95年映画『藏』で日本アカデミー賞最優秀主演女優賞を受賞。フジテレビ「大奥」など、近年は時代劇でも圧倒的な存在感を放つ。5月4日より舞台『魔界転生』に出演予定。
▼あわせて読みたい!
ワンレン、ボディコンが一世を風靡したバブル絶頂期。そのブームを牽引したのが'80〜'90年代のトレンディドラマの女王、浅野ゆう子さん。当時とまったく変わらないヘルシーな印象で、元祖、美脚の女王は今も健在。57歳で結婚した浅野さんに、美しさと幸せの秘訣を伺いました。
2021年7月17日 20:00
沼とは、気がつけば長年抜け出せない”沼”のようにハマっているモノやコト。今回、ご紹介するのは泉ピン子さんの美容沼。「良いものを、惜しみなく」という信念に貫かれた3つの美容沼が、いつまでも「お肌が綺麗ですね」と褒められる秘訣でした。
2021年5月24日 16:00
お笑いコンビ、チョコレートプラネットのものまねで再ブレイク。昨年は「@cosme ベストコスメアワード2020年 ビューティパーソンオブザイヤー」も受賞したIKKOさん。最初のブレイクから10年以上。常に第一線を走り続けるIKKOさんに美しさの秘密と運を味方につける方法をうかがいました。
2021年5月15日 20:00
2021年『美ST』6月号掲載 撮影/中村和孝 ヘア・メーク/持丸あかね スタイリスト/角田今日子 取材・文/安田真里 編集/和田紀子