京都の名門ホテルが「わざわざ訪れたくなる」スパ施設を作った理由|VERY
このところオープンラッシュが続いている京都のホテルシーン。ヨーロッパやアメリカからの初上陸ホテルもあれば、町家を改装した京都の町並みに溶け込む小さなホテルまで、インテリアや食、独自のサービスなどで、それぞれが京都らしさを体現しています。そんな中、NAVY読者にお勧めしたいのは、創業130余年を迎えたあの老舗ホテルです。きっと、宿泊されたことのあるNAVY読者も多いと思います。
約2100平方メートルのスパ施設で癒され、美しく健康になる
2020年に創業130年を迎えた京都屈指の老舗ホテル「ウェスティン都ホテル京都」が、約3年に渡る大規模なリニューアル工事を終えて2021年4月にグランドリニューアルしました。大規模リニューアルの目玉といえるのが、ホテル敷地内で掘削する天然温泉を利用した総面積約2100㎡のスパ施設、SPA「華頂」です。フランス、SOTHYS(ソティス)社直営のエステティックサロン「Le Jardin Sothys(ル・ジャルディン・ソティス)」も併設され、心地よい癒しの空間でさまざまなトリートメントが提供されます。また、セラピストによる温泉浴、指圧、瞑想など多彩なスパプログラムも用意されたスパ施設で心身ともに健康になれそうです。
ディテールに京都・東山の自然を感じる広々とした客室
こちらは「本館 ジュニアスイート」村野藤吾の優美な曲線美をインテリアで表現し、モダンな空間に。 1890年(明治23年)に遊園地“吉水園”として開業以来、伝統を重んじながら時代の流れに合わせて進化してきたホテルは“京都の迎賓館”、“国賓ホテル”として愛され、オードリー・ヘップバーンやダイアナ妃をはじめ、建築家のフランク・ロイド・ライト、物理学者のアインシュタイン、ヘレンケラー、女優のカトリーヌ・ドヌーブなど、歴史上に名を残す多くの賓客が訪れています。
2020年7月にリニューアルが完了した客室のデザイン、インテリアのデザインコンセプトは「The Queen of Elegance」。本館・東館ともに、ホテルの設計者である村野藤吾の優美さや曲線美を継承しながら、温かさのある木の風合いを取り入れ、川床をイメージしたカーペット、梅の花を模したスツールなどで京都・東山の自然や京都らしさが表現されています。照明や家具のデザイン、ファブリックの質感や色合いなど、モダンで美しいさりげないディテールが滞在をより心地よいものにしてくれます。 そして、本館客室ではこれまでの2室を1室にして、平均客室面積を約35㎡から約50㎡に拡大したスイートルームが中心で、ゆったりとした寛ぎの空間が実現されています。
昭和の名建築、数寄屋風別館「佳水園」もリニューアル
日本モダニズム建築の開拓者の一人に挙げられる村野藤吾の設計により1959年(昭和34年)に建設された数寄屋風別館「佳水園」も2020年7月、当時の趣を残しつつリニューアルオープンしました。
村野藤吾による外観やパブリックスペースは継承され、自然の地形を生かした高低変化に富む棟配置、天然岩盤に琵琶湖疏水を水源とする滝が流れる「佳水園庭園」、醍醐寺三宝院の庭を模して村野藤吾がデザインした「白砂の中庭」など、見所が満載です。また、平均面積が約40㎡から約70㎡へと拡大された客室では、敷地内で湧出した天然温泉が楽しめます。村野藤吾の設計と現代の技巧が調和した現代数寄の空間には上質で豊かな時間が流れ安らぎをもたらしてくれます。
レストラン&バーも一新!魅力溢れるラインナップ
2019年には、レストラン&バーが次々とリニューアルオープン。
パリと東京で活躍するフランス人シェフ、ドミニク・ブシェ氏の監修による高級フレンチレストラン、Dominique Bouchet Kyoto「Le RESTAURANT」、同じくドミニク・ブシェ氏が監修した初の鉄板焼きレストラン、Dominique Bouchet Kyoto「Le Teppanyaki」。
レストラン内にある約300種類、2500本のワインが揃うウォークインワンセラーも素敵です。
オールデイダイニング「洛空(らくう)」は、京都舞鶴港から直送の魚、京都産野菜など、京都の食材を使用した料理を、朝・昼・夕とブッフェスタイルで提供されるのが特徴で、カウンターで注文すれば、天ぷらはじめ出来立ての料理が味わえます。20種類以上のパンを焼き上げるベーカリーカウンターや目の前でパティシエが仕上げるデザートカウンターもあります。フロアを回遊するワゴンで提供されるローストビーフや飲茶も大人気で、私もついたくさん頼んでしまいました。
ホテルから徒歩圏内には名所、旧跡が多数。ホテルを中心に楽しむ小さな京都旅
ホテルの周辺には徒歩で行ける多くの観光スポットがあります。南禅寺、水路閣、平安神宮、少し足を伸ばして八坂神社、哲学の道、銀閣寺・・。ホテル発、祇園四条行きのシャトルバスを利用すれば祇園、清水寺、安井金比羅宮にも。
ホテル内にも京都市文化財(名勝)に指定された2つの庭園があります。近代庭園の瀬先覚者・七代目小川治兵衛(植治)が策定した「葵殿庭園」、小川治兵衛の長男・小川白楊が作庭した「佳水園庭園」は必見です。
そして、お勧めしたいのはさまざまなアクティビティ。
日本庭園巡り、福寿園 京都本店でのお茶の講座、松井酒造での蔵見学と日本酒テイスティング、松栄堂での匂い香づくりなどを体験(これらはすべて有料です)。
野鳥の森・探鳥路は、ホテルの裏山・華頂山でのバードウィッチングや森林浴を楽しむ散策コースで散策マップ片手に野鳥や自然観察ができます。また、ホテルの歴史を知ることができる館内ツアーも歴史あるこのホテルならではのアクティビティでしょう。
私は「松井酒造 蔵見学・日本酒テイスティング」に参加しました。
創業から間もなく300年を迎える松井酒造。鴨川のほとりにある京都の町中で酒造りを続ける最古の蔵です。場所は京都大学の近く、最新の設備を取り入れた40坪ほどの製造施設を、杜氏でもある十五代・松井治右衛門さんによる楽しく、わかりやすい解説とともに見学した後は、蔵の内部のライブ映像が映し出される画面の前で、松井酒造の5種類のお酒を飲み比べ。酒米のおむすびと粕汁の美味しさにも感激しました。 *松井酒造 日本酒テイスティング 参加費用:一人¥3,300、お土産付
「ウエスティン都ホテル 京都」に宿泊すると、ホテル館内、ホテルから続く自然豊かな山、周囲に点在する名所・旧跡など、“小さな京都旅”が楽しめます。緊急事態宣言解除後に、夫婦でのんびりスパ三昧、両親を誘って京都の町歩き、子どもたちも一緒に京都の自然と歴史に触れてみるなど、四季折々の楽しみ方を見つけてみてはいかがでしょう。
Profile
ウエスティン都ホテル京都
住所:京都府京都市東山区粟田口華頂町1番地
取材・文/齋藤素子