【NEWSな言葉】男性の育児休暇

近頃は保育園や習い事の送り迎えをしたり、公園で子どもと遊ぶ男性を見かけることが増えましたが、育児休暇を取る男性はまだ 1割にも満たないそう。希望する人が育休を取りやすくする制度改正がありましたが、これで男性の育休取得は進むのでしょうか?

男性版産休も盛り込み取得しやすい制度に

「イクメン」という言葉がメジャーになって久しいですが、男性の育児休暇取得率は依然として7.48%(令和元年度)と低い数字のまま。そんな現状を打ち破るため、育児・介護休業法の改正法が衆議院本会議で成立しました。今回の法改正によって、「男性が育休を取りやすくなる」と注目を集めています。
その目玉の一つが、男性版の産休ともいえる「出生時育児休業」の創設です。女性は出産後に最大8週間の産後休業を取得できますが、この期間に配偶者の男性も4週間まで休みを取れるようになるのです。子どもが生まれてすぐに父親が育児参加すると、成長してからの育児時間も増えるという研究があります。新制度が活用されれば、男性の育児参加を大きく推し進めるかもしれません。

「育児休業を取るのが当たり前」な空気が必要

通常の育休についても、その運用ルールがより柔軟になります。今までは原則1回だった取得回数を2回に分割できるように。また、契約社員やパートなどの有期雇用労働者も育休取得が可能になります。さらに、こうした利便性の改善だけでなく、企業側から従業員に対して、育休制度の通知と取得の促進が義務付けられることになりました。このような改正をきっかけに、日本でも一気に男性の育休取得が進むのでしょうか。
残念ながら、そうとは限りません。
これまでなかなか男性の育休取得が進めなかった背景には、「休みづらい」「育休を取得すると職場での評価が悪くなる」といった企業の風土がありました。この悪い慣習から逃れるためには、男女を問わず「育休を取るのは当たり前のこと」という空気を生み出す必要があります。実際に、育休取得者へ報奨金を出したり、休暇を取得「しない」従業員に理由を申請させたりと、独自の取り組みで社内の空気を変えることに成功した企業や組織も存在しています。
今回の法改正は「育休を取るのは当然」という雰囲気を社会に広げていく大きなきっかけになるのではないでしょうか。男女を問わず、誰もが当たり前のように育児に参加することができる。そんな社会に変わっていくことを願っています。

育児・介護休業法の改正ポイント

【1】男性も子の出生直後に柔軟に育児休業が取れる
2週間前までの申し出で、子どもが生まれて8週間以内に4週間まで、分割して2回取れる。条件により、休業中に働くことも可能。

【2】雇用環境整備、個別の周知・意向確認が義務に
相談窓口の設置など育児休業を取りやすい環境整備や、個別に制度を説明したり休みを取るかどうかを確認するのが事業主の義務に

【3】育児休業を分割して取れるように
1の制度とは別に、分割して2回まで取れるほか、育児休業を1歳以降に延長する場合は育休開始日を柔軟に対応。

【4】有期雇用労働者の育児休業取得要件が緩和
引き続き雇用された期間が1年未満でも、子どもが1歳6カ月までの間に契約が満了することが明らかでなければ取得できるように。

【5】育児休業取得状況の公表が義務に
従業員が1000人超の企業は、男性の育児休業等の取得状況を公表することが義務に。

\安田洋祐さんが考える/制度改正で大切なこと

☑男性版産休は男性の育児参加を大きく推し進める可能性も
☑制度改正は大きな一歩だけれど、休みにくい雰囲気の解消も必要

解説いただいたのは
安田洋祐さん

経済学者安田洋祐さん
経済学者。専門はゲーム理論。政策研究大学院大学助教授を経て、2014年4月から大阪大学准教授に就任。『報道ランナー』(関西テレビ)や『ミヤネ屋』(読売テレビ)にコメンテーターとして出演するほか、財務省「理論研修」講師、金融庁「金融審議会」専門委員等を務めるなど多方面で活躍。ユニークな視点での経済解説に定評がある。

※掲載中の情報はMart誌面掲載時のものです。

イラスト/熊野友紀子 編集/倉澤真由美 構成/長南真理恵

Mart2021年9月号
最近気になるNEWSな言葉「男性の育児休暇」より