【中学受験㉛】合格カレンダーを作りましょう
「実は楽しい中学受験」シリーズ、様々な角度から中学受験を綴っております。さあ、時は中学受験本番。いよいよ、今年も1月10日の埼玉を皮切りに、次々に入試が実施されていきます。
今現在、各塾や識者の推定では、受験者数は前年比で2割増。少子化による小6人口の減少も、コロナ禍による経済的打撃もものともせずの勢いで、首都圏中学受験者数は21世紀最多に達するのではないかとも言われております。つまり激戦です。
特に人気校では厳しい入試が予想されておりますが、中学受験は一生に一度の体験。結果の如何にかかわらず、家族の歴史の中でもビッグイベントのひとつになるでしょう。できれば、家族が支え合って、この“試練”を意味あるものにしてもらいたいなぁと願っています。
ここでは、大変重要な「合格カレンダー」についてお話ししましょう。
これは、入試のスケジュール表のことで、作成は親の義務ですね。
市販もされていますし、塾が配布している場合もありますし、ネットでダウンロードも可能です。
もちろん、自作も可能。もしかすると、手作りの方が使い勝手も良く、且つ、頭に入るので、“漏れ”防止には効果的かもしれませんね。
この“漏れ”が致命傷になっていきますので、間違いがないように、ここは親の頑張りどころです。
この「合格カレンダー(入試スケジュール表)」は、家族がこれに沿って動いていくという大事な日程表になりますので、冷静に書き込んでいきましょう。
まず、合格カレンダーを書くためには、すべての受験予定校を決定する必要があります。
そのためには、下記8項目が大事。
(2)これに伴う第2志望校以下の日程はどうなるか?
(3)午後受験はどうするか?
(4)ダブル出願(事前に2つの学校に出願して、前日の合否によってどちらを受験するのかを決める出願方法)は有りか?
(5)東京・神奈川の場合、2月6日までの日程を頭に入れておくべきか?
(6)1月受験をしたとして、1月受験校に進学も有りか?
(7)地元公立中学への進学も有りか?
(8)「まさか!」の「まさか!」を考えたシミュレーションをどうするか?
特に東京・神奈川の受験生は2月1日からの1週間、連戦で戦っていくことになるので、あらゆる事態を想定したシミュレーションは必須。
つまり「こうなったら、こう動く!」ということを、あらかじめ予測しておかなければ、想定外の事態に対処できません。
しかも、ここ数年の傾向では2月3日までに決着させたいという家庭が多く、今年もコロナ禍での受験ですので、短期決戦は免れないとみています。
そうなると、午前→午後とダブルヘッダー受験をやり続ける日程を組みがちになりますが、お子さんの体力、午後受験校までのアクセスを考慮しながら、戦略を練ってください。
この第1志望校を柱とした受験日程が決まったならば、カレンダーに記入すべき必須項目が出てきます。
願書の取り寄せ方法(窓口のみか、郵送か、ネットかの確認とその配布期間)
各校の願書提出期限(インターネット出願か、学校窓口出願か、当日受付可能か)
出願校への受験料支払い(納入方法、その期限など)
入試日の集合時間と受験番号
面接があれば、日にちと時刻
調査書や通知表のコピーの有無(これは小学校の担任の先生に依頼するので時間が必要)
合格発表の日時(ネット発表か、学校掲示板発表か)
入学金納入期限と時刻
入学手続き方法と締切日時
などが、基本項目となります。
コロナもあり、今年はWEB出願が多くなっています。
WEB出願の場合、受験票は各自がプリンターで出力という学校が多いです。
顔写真のタイプ(データか、用紙に貼るのか、当日持参か)も確認必須です。写真の縦横比も学校によって異なりますので、気を付けてくださいね。
また、WEBで出願した後に、期限内に必要書類を郵送し、受理されて手続きが完了する学校もあります。更に、提出期限が「必着」「消印有効」と分かれることもありますので、ここもきちんと把握しておきましょう。
当然ですが、WEB出願では、IDやパスワード設定が必要です。
昨年のことですが、パスワードが分からなくなったというご家庭があり、そのせいで家庭内不和が起こり、受験が上手くいかなかったケースがありますので、このような些細なミスがないように努めてくださいね。
更に要注意なうっかりミスが発生するケースもあります。
最近では、出願と合格発表はWEB上で行う学校が多いのですが、入学手続は大抵、学校窓口になります。
合格書類を受け取るのを失念した、提出期限を間違えた、入学金の納入手続きに間に合わなかったなどの理由で、せっかくの合格が取り消しになったケースを毎年のように聞いておりますので、充分に気を付けて下さい。
過去20年間で提出期限を間違えたことに対し、学校側が温情を示したケースを私は1件しか知りません。ここだけは、繰り上げ合格の関係もあり、学校はシステマティックに処理しているように感じますし、特に振込みなどで機械が関係する場合は1分でも遅れると、手続きそのものができなくなります。万が一にも合格の喜びで舞い上がる、或いは併願校の合否を見てから判断しようとする内に、結果として手続きを怠ったということがないようにお願いします。
今年も新型コロナの影響で、通常受験とは違った変更点を出している学校もありますし、学校によっても、手続き方法や必要書類は異なりますので、慌てるとパニックになりミスをしやすいです。募集要項は細かくチェックして、その学校の指示に従ってください。
このように、合格カレンダー作りは絡み合う糸をほどくような複雑な作業になりやすいです。一番、大切なことは「受験本番の日々、誰が何を行うのか?」という家族のミッションを分担し、“見える化”しておくことです。
受験の付き添いもそうですが、当日の昼食場所、下のお子さんのめんどうは誰がみるのかなど、決めておかなければならない事柄も沢山あります。できるだけ事前に夫婦で話し合いをし、役割分担と「こうなった場合、誰がどう動くか」を決めておきましょう。
本番の週は冷静なつもりでも、親も子も緊張感満載なので、通常の精神状態とは違うのが普通です。慌てないために、不安なことや疑問点は事前に解消しておくことをお勧めします。
中学受験は親子の受験ですから、ここまで来たら、ぜひ、お子さんと一緒に「一念、岩をも通す」の精神で、もう少しだけ頑張ってみてくださいね。
鳥居りんこ・・・作家、教育・介護ジャーナリスト
2003年、長男との中学受験体験を赤裸々に綴った初の著書「偏差値30からの中学受験合格記」(学研)がベストセラーとなり注目を集める。
その後シリーズ化され、悩める保護者から“中学受験のバイブル”と評され、中学受験を辛かった思い出ではなく、子どもとの絆を感じられ、子育てが楽しくなる内容に、心救われ涙する保護者が続出しました。
ブログ:湘南オバちゃんクラブ https://note.com/torinko
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構成/加藤景子 イラスト/村澤綾香