知ってた人も知らなかった人も!子どもと取り組む「SDGsこと始め」

SDGsで子どもの未来を創ろう#1「よく聞くSDGsっていったい何?」

一般社団法人エシカル協会理事:竹地 由佳

最近よく聞く見聞きする「SDGs(エスディジーズ)」という言葉。

「何のことかよくわからない」という方や、SDGsが何かを知っていても「自分には関係ない」「遠い世界のこと」と捉えている方もいらっしゃると思います。

しかし、SDGsは、じつは私たち一人一人の生活と深く関わっていて、身近で、簡単なことから取り組めることが多くあります。

そして、これからの時代を生きていく子どもたちの将来のために、避けては通れない課題でもあります。

親子で一緒にSDGsを学んで、子どもたちの未来を創る暮らしをはじめてみませんか?

一般社団法人エシカル協会理事で、自身も5歳と2歳の二人のお子さんのママである竹地由佳さんに、お話を伺いました。

第1回は、「SDGsこと始め」として、「SDGsとは何か」をまずおさらいし、子どもと一緒にSDGsを学んでいくためにピッタリの”ある方法”をお伝えします。(全4回の1回目)

「誰一人取り残さない」ためにできること

複雑でとっつきにくいイメージがあるSDGs(※1)ですが、わかりやすく表現すると「自分も含めて人や生物、地球環境などを思いやる世界との約束」だと竹地さんは言います。

SDGsが目指しているのは、「誰一人取り残さない世界」。自分の目に見える範囲だけでなく、世界中の人や生物が楽しく快適に暮らすために、今取り組むべき17個の目標をまとめたのがSDGsなのです。

※1 SDGs:Sustainable Development Goals(サステナブル・ディベロップメント・ゴールズ)。日本語に訳すと『持続可能な開発目標』。貧困や差別、環境破壊など人類が直面する様々な問題を地球規模で解決するために、国連(国際連合)が2030年までの目標として定めたもので、国連に加盟している193ヵ国が達成を目指して行動している。

 

カラフルな17の目標アイコン。最近はメディアやまちなかで見かけることが増えました。

SDGsは、全部で17の目標が掲げられて、それぞれの目標には「ターゲット」と呼ばれるさらに具体的な内容が169個設定されています。

SDGs【17の目標】
1.貧困をなくそう
2.飢餓をゼロに
3.すべての人に健康と福祉を
4.質の高い教育をみんなに
5.ジェンダー平等を実現しよう
6.安全な水とトイレを世界中に
7.エネルギーをみんなに そしてクリーンに
8.働きがいも経済成長も
9.産業と技術革新の基盤をつくろう
10.人や国の不平等をなくそう
11.住み続けられるまちづくりを
12.つくる責任 つかう責任
13.気候変動に具体的な対策を
14.海の豊かさを守ろう
15.陸の豊かさを守ろう
16.平和と公正をすべての人に
17.パートナーシップで目標を達成しよう

竹地さんが解説します。

「例えば、目標1の『貧困をなくそう』を見ると、『どこか遠くの国で起こっている問題』だと感じてしまうかもしれません。確かに今の日本では、目に見える『貧困』は少ないですが、実は、7人に1人の子どもが貧困状態にある(※2)と言われています」(竹地さん)

さらに竹地さんが続けます。

「目標3の『すべての人に健康と福祉を』では、『そんなことは当たり前』と思うかもしれませんが、知らず知らずのうちに、私たちが他の国の人々の健康を害する『加害者』になってしまっている可能性もあります。

洋服の原料となるコットンは、インドや中国で多く栽培されていますが、大量の農薬を散布するため、健康被害に悩まされる農家の人々がたくさんいるのです。

自分には関係ないように思えるこれらの目標も、実は私たち自身とつながっているんです。

輸送や通信技術が発達した今、私たちの暮らしは、物理的な距離とは関係なく、多くの人たちと互いに影響を与え合っています。つまり、地球上で起っている問題に『関係ない人は誰もいない』ということ。私たち全員が、『当事者』なのです。

だからこそ、こうした問題を『自分ごと』として理解し、行動するのはとても大切なこと。子どもたち自身が大人になったときのためにも、SDGsを知り、何ができるかを考えることは非常に重要です」(竹地さん)

小さな子どもにも理解できる最強のツール

では、子どもがSDGsを「自分ごと」にしていくためには、どのようにすればよいのでしょう。

竹地さんはある方法を薦めてくれました。

「とはいえ、小さな子どもがSDGsの17目標すべてを理解するのは難しいですよね。これまであまりSDGsに触れる機会がなかったママやパパだって、『目標がたくさんあって、読むだけでも大変』というのが本音かもしれません。

ちょっと興味を持っても、何から調べたらいいか迷っているうちに、そのままになってしまうことも多いのではないでしょうか。

そんなときの心強い味方は、何と言っても『絵本』です。

絵本は、子どもにとっては身近で親近感がありますし、わかりやすい言葉で説明されているので、大人も無理なく理解できます。『子どもと一緒に大人も学べるツール』として、とっても優れているんです」(竹地さん)

SDGs入門にぴったりな絵本とは?

最近では、書店に行くと『SDGs特集』が組まれていることも多く、SDGs関連の絵本もたくさん出版されています。絵本選びのポイントは、子どもが興味を持てる『キーワード』が使われていることや、ページをめくりたくなる『仕掛け』が含まれていること。

こうした工夫がされている絵本なら、子どもも飽きずに楽しむことができます。

中でもSDGsを学びはじめるのに、最適な絵本を2冊紹介してもらいました。

じゅんびはいいかい? 名もなきこざるとエシカルな冒険

『じゅんびはいいかい? 名もなきこざるとエシカルな冒険』(文:末吉里花、絵:中川 学/山川出版社) 画像提供:山川出版社

『じゅんびはいいかい? 名もなきこざるとエシカルな冒険』は、主人公の子ザルが、子どもたちと様々な場所へ冒険に出かけ、食べ物や洋服などが、どこで、どのように作られているかを学んでいきます。

「『エシカル』とは、人や地球環境、社会や地域に配慮した考え方や行動のことで、SDGsに大きく貢献する方法の1つです(詳しくは第2回で取り上げます)。

この絵本では、子ザルが冒険をスタートするとき、『エシカル マジカル〜』という魔法の呪文を唱えます。

韻を踏んだ独特の言葉の響きが子どもにはおもしろいらしく、私の5歳の息子も気に入って、よく『エシカル マジカル〜! 』とつぶやいています」(竹地さん)

キティちゃんとSDGsが学べる

『Hello Kitty ぼくとわたしのSDGs ~世界のみんなと2030年を考えよう~』(イラスト:谷口彩香、監修協力:一般社団法人エシカル協会/アインズ株式会社) 画像提供:アインズ株式会社

こちらは小学生向けの絵本ですが、4歳くらいから理解できる内容になっています。

「ハローキティという、子どもにとって身近な存在が登場するので、興味が湧きやすいですよね。

この絵本は、『ソーラーインキ』の仕掛けがついているのが特徴です。絵本を太陽に照らすと、それまでは見えなかった絵が浮かび上がってくるんです。

仕掛けを楽しみながら、親子で一緒に絵本を眺めることで、SDGsについても理解を深めることができますよ」(竹地さん)

絵をみるだけでも十分! 親子の会話を楽しんで

「SDGs関連の絵本は、子どもが理解しやすく、やさしい内容にまとまっていますが、お話し自体は比較的長く、ページ数も多めです。ですから、毎回『全て』を読む必要はありません。

子どもの反応を見ながら、少しずつ読み進めてください。また、子どもは好きな部分を何度も繰り返したがるので、気に入った部分だけ読む、といった方法でも良いですね。

絵本のメリットは、文字を読まなくても、絵を見るだけで楽しめるところ。

親子で一緒に絵を眺めながら、『この人たちは何をしているのか』『どんな気持ちなのかな』などと、子どもへ問いかけてみることもおすすめです。こうした『問い』に応えるなかで、子どもは絵から様々なことを思い巡らし、考えていきます。

先ほど紹介した『じゅんびはいいかい? 名もなきこざるとエシカルな冒険』には、バナナやチョコレートの生産地の様子が出てきます。

そのなかで、フィリピンの大規模なバナナ農園では、農薬を大量に使って生産者やその家族が病気になっている現状、ガーナのカカオ生産地では、家が貧しく家計のために働かざるを得ない子どもたちの児童労働などが取り上げられています。

私自身も息子と絵を見ながら、『このバナナは、気持ちよく作られたものなのかな』など、いろいろな『問い』を投げかけています。息子は想像を膨らませながら、『この人はつらそうだね。何でかな』などと応えてくれます。

絵本を繰り返し見たり、読んだりすることで、今生きている社会にはどんな問題があるのか、自分が食べたり使ったりしているものがどのように作られているのかを、考えるきっかけになります。

これらがベースとなり、自然に『世界と自分のつながり』について考える姿勢が育っていきます」(竹地さん)

子ども時代は「種まき」。「知ること」を楽しんで

「SDGsが目指している『誰一人取り残さない世界』を実現するためには、世界中の人たちが、お互いを思いやり、異なる国や状況にある人のことを考えて行動することが必要です。

幼少期は、こうした行動が『当たり前』にできるようになるための、『種まき』を行う時期だと考えています。絵本を読んだり、親子で一緒にお話ししたりしながら、焦らずゆっくり育てていきましょう。続けていれば、ある時いろいろな内容がリンクして、『自ら行動する』ことへとつながっていくはずです。

SDGsで最も大切なのは、まずは『知ること』です。人は、知らなければ『行動』することはありませんが、知っていれば、どんなに小さなことでも実践することができます。

一人一人の行動が、未来を変えることにつながります。子どもとともに想像を膨らませながら、『知る』『考えてみる』ことから始めてみてください」(竹地さん)

第2回は、買い物にスポットを当てた「エシカル消費」について伺います。

取材・文/川崎ちづる

監修/竹地 由佳(たけち ゆか)
一般社団法人エシカル協会理事。宮城県仙台市出身。大学卒業後、銀行に就職し、個人営業を主に担当。行員向けの環境ボランティア企画にも携わる。2011年の東日本大震災をきっかけに、エシカルな仕事をしたいと決意。東北地方の復興事業やアメリカでのボランティア活動などを経て、2015年に一般社団法人エシカル協会の立ち上げから従事。エシカル消費の普及啓発の活動をしている。二児(5歳と2歳)の子育て中。

本記事は【Mart×コクリコ パパママ応援プロジェクト】の一環としてコクリコの記事を転載したものです。

コクリコ2021年11月14日公開より