漢方薬の「満量処方」とは? 生薬の正しい用量を薬剤師が解説します

薬局やドラッグストア、ネット通販などで漢方薬のパッケージなどに書かれている「満量処方」という表示。正しい意味をご存じですか?漢方薬の用量について正しく理解し、安心して服用がスタートできるよう薬剤師が解説します。

漢方薬の「満量処方」とは?

「満量処方」とは「日本薬局方」に記載されている配合どおりに処方された漢方薬を示します。この配合は、漢方処方ごとに定められた1日分として配合できる生薬量の限度です。

一般に、市販されている漢方薬は、不特定多数の人が服用しても副作用などが起こりにくいように、成分量を少なくしています。

その例外が「満量処方」です。みなさんが店頭でみかける満量処方の漢方薬は、成分が最大量でも比較的安全とされているものなのです。

例えば「葛根湯」の満量処方は


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それでは、風邪症状によく使われる「葛根湯(かっこんとう)」を例にあげ、日本薬局方ではどのような配合が示されているかみてみましょう。

葛根湯の処方量の比較

日本薬局方には、上記表の「処方(1)~(4)」のように、1つの漢方薬でも異なる配合量の処方が示されています。そのため、同じ漢方薬の満量処方でもメーカーによって、異なった生薬の成分量が配合されていることがあります。

引き続き葛根湯を例に、満量処方の配合をメーカーごとに比較してみましょう。

こうしたことから、漢方薬を選ぶ際にはそれぞれの製品の特徴を知り、いまの症状や体質に合っているのはどの製品かを見極める必要があるのです。

なお、「1/2処方」や「3/4処方」といった表記は満量処方に対する割合です。高齢の場合や長期服用の可能性がある人は「1/2処方」や「3/4処方」を選ぶといいでしょう。

規定量より少ない服用でも効果はある?

漢方薬の服用量について、よくある疑問をみてみましょう。

Q「処方された半分の量でも効き目はありますか?」

Answer
処方された漢方薬は、診察した医師が患者の症状や体質に合ったものを選んでいます。指示どおりの用量で服用しましょう。

自己判断で量を減らすことはせず、気になることがあれば処方医に相談してください。

Q「ドラッグストアで購入した漢方薬に1日2回と書いてあるけど1回でもいいですか?」

Answer
飲む量や回数を減らすと、期待した効果が出ない可能性があります。表記された用法用量での服用が原則です。ただし、人によっては規定量より少ない量でも効果が十分なこともあります。

迷ったときは購入先の薬剤師や登録販売者に相談するとよいでしょう。

漢方薬の正しい選び方や飲み方を知るには?

漢方薬の効果や効能をしっかり感じるには、自身の体質や症状に合った漢方薬を選び、正しい用量を飲む必要があります。

漢方医学では次のような方法を使って治療を考えます。

1.「証」をみる

「証」は漢方独自の用語で、体質や抵抗力、病気の進行度などをあらわします。証をみて、その人のからだがいま病気とどんな戦いをしているかを判断します。

そのため漢方薬を選ぶときは、証をみて選ぶと高い効果を発揮し、副作用を最小限に抑えられるとされているのです。

たとえば、暑がりの人と寒がりの人では選択する漢方薬が異なります。また、体力がある人や、虚弱体質の人でも異なった治療法が選ばれます。

2.「気(き)」「血(けつ)」「水(すい)」をみる

漢方には、証以外にも体質をチェックする方法があります。人間のからだを構成する3つの要素といわれる「気」「血」「水」の体内での様子をみる方法です。

  • 「気」生命の根源の基本となるエネルギーを指します
  • 「血」体内をめぐる血液と似た役割を果たします
  • 「水」血液以外のリンパ液や唾液など、体内の透明な液体すべてを指します

漢方では、これら3つの要素がバランスよくめぐる状態を健康ととらえます。

たとえば、「気」がなくなると気力や体力がなくなります。「血」が滞ると目の下のクマや肌荒れとして症状があらわれ、「水」の循環が滞るとむくみやすくなります。

3.漢方薬は専門家に相談して選ぼう

自分の証や気・血・水の状態を知り、どのような漢方薬をどれだけ服用すればよいかを知るには、漢方に精通した専門家のアドバイスがあると安心です。適切に使わなければ十分な効果がみられないだけではなく、副作用が生じることもあるからです。

しかし、漢方専門の医療機関や漢方薬局は探すのが難しかったり、近所になかったり、敷居が高く感じたりと、漢方を始めるにはハードルを感じる人も多いようです。

最近では、オンラインで漢方に精通した薬剤師に相談できるサービスもあるのでぜひ利用してみてください。安価で自宅に郵送もしてくれるので、気軽に始めてみたいという人にはとくにおすすめです。

用量について知れば、漢方薬はもっと頼れる

漢方薬は効き目を実感しにくいと思われがちですが、適切な漢方薬を選択することに加えて、正しい用量であればきちんとした効果につながります。正しく使うことで、症状の緩和や体質改善を目指すこともできるかもしれません。

少しでも漢方に興味のある人は、専門家に相談しながら気軽に始めてみませんか。

・出典「クラシエ薬品株式会社」

<この記事を書いた人>

薬剤師 竹田由子
大学院で臨床薬学を専攻、病院で10年勤務、結婚後は調剤薬局勤務、ライターとしての活動も始める。腎機能低下を機に、月経痛への鎮痛剤使用量を漢方で減量成功した経験がある。元漢方・生薬認定薬剤師で薬膳漢方マイスター。「日常の不調はまず漢方」をモットーに生活を送る。病院時代の長いDI経験を生かし、薬の面から分かり易くサポートしたいと考えている。
●あんしん漢方(オンラインAI漢方):https://www.kamposupport.com/anshin1.0/lp/?tag=222332b9mart0009

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