更年期を軽やかに乗り切ったキャスター長野智子さんに聞く「40代のうちにしておくべきこと」
しなくていい苦労はしなくていい。 そんなシンプルかつ大正解の思考で更年期を軽やかに乗り切った長野智子さん。そんな長野さんにお話を伺いました。
◯ 長野智子さん(59歳・キャスター)
1962年12月24日、アメリカ生まれ。フジテレビ退社後は「ザ·スクープ」「朝まで生テレビ!」「ザ·スクープスペシャル」「報道ステーション」「サンデーステーション」のキャスターなどを経て、ハフポスト日本版の編集主幹、専修大学特任教授を務めた。現在は国連UNHCR協会報道ディレクターも務めながら、「クオータ制実現に向けての勉強会」の立ち上げや国内外の現場へ取材の為に足を運ぶ。
早め早めのホルモン治療で
更年期を軟着陸させることができました
更年期を軟着陸させることができました
45歳を過ぎたくらいに肌荒れを感じ始めたのが、今思えば体の変わり目でした。50代になって軽めのホットフラッシュもあったので、友人の勧めもあって婦人科で血液検査をしてホルモン数値を調べたうえでホルモン補充療法(*1)を始めたんです。
これが大正解。更年期障害というのは生理が終わるとエストロゲンなどの女性ホルモンが急激に分泌されなくなるために起こる心身の不調ですから、適宜ホルモンを補充していくことで、婦人科の先生いわく「崖から真っ逆さまに墜落するのではなく、上手に軟着陸させることができる」 とのこと。数値とその都度の体調に合わせて、半年や3カ月に1回の頻度で通って、エストロゲンや黄体ホルモンなどの経皮薬を塗ったり貼ったりしながら、ソフトランディングさせられたと思います。
【*1・ホルモン補充療法】
エストロゲン製剤、エストロゲン、黄体ホルモン配合剤、黄体ホルモン製剤があり、錠剤服用したり、ジェルやテープを貼ったりするなど様々な方法がある。まずは婦人科でホルモン検査を。
—— 元・フジテレビアナウンサーの長野智子さんは、今も続く女子アナブームの火付け役的存在。知的で聡明、快活でお茶目で自然体な人柄も憧れです。フジテレビ退社後も、様々な報道番組のキャスターとして活躍。
1995年からはご主人のアメリカ赴任に伴って渡米。 ニューヨーク大学・大学院において「メディア環境学」を専攻し、修士課程を修了。帰国後もジャーナリズム的視点から世界のニュースに鋭く切り込む手腕を見せています。
そんな長野さんが更年期に向き合う姿勢もとても合理的。
実を言うと更年期よりは48歳までの不妊治療が大変だったので、一般的な状況とは違うのかもしれませんが、ホルモン外来があると聞いてすぐ行動を起こし、医学的にきちんとした検査で数値を把握して女性ホルモンの急低下を手前手前で予防できたのは最適解だったなと思います。今は半年に1回くらいの通院ですが、体に水が溜まりやすくてむくみやすいと言うと漢方薬を処方してくれて1週間ぐらい飲むだけで体がすっと楽になる。
こんなふうに総合的に診てくれる主治医を持っておくのは心と体の安心につながっています。ふだんの健康診断や人間ドックと同じように婦人科でホルモン値を検査して、数値に合わせた治療をしていけば、しなくていい苦労をせずに済む。うまく医者に頼ることで味わわなくていい症状をスルーするのであれば、活用した方がいいのではないでしょうか。私の場合は急に海外出張が入ったり、毎週生放送があったりと、かなりハードなスケジュール。急に倒れるわけにはいかなかったのでリスクヘッジのためにと思った早め早めの対応が功を奏しました。
また、更年期症状ではないかもしれませんが、昔から体質的にめまいが起きやすく、ひどい時は起きて立ち上がることができずに寝込んでしまうことも。いわゆる良性発作性頭位めまい症ですが、それまではそんなに頻繁ではなかったのですが、3・11の東日本大震災がきっかけで毎年起きるようになりました。そんな慢性的な不調にも、良い主治医を持ち、早い段階で症状を回避する布石を打っておくのは大事だと思います。
—— そんな長野さんに「40代のうちにしておくべきことは?」と聞いてみると即座に返ってきた答えが「ボディコントロール!」。スラリと背が高く、スタイルバツグンの長野さんからは意外な回答です。
私の経験上、40代は体作りの土台を築くラストチャンス。実は私、40代ですごく太ったんです。ベスト体重が51キロくらいなのに一時期59キロまで太って衣装が入らなくなりました。ある時、鏡に映った自分の背中が丸いことに大ショック。「若いころに見ていたオバサンの背中だ」「40代のうちになんとかしないと手遅れになる」と一念発起しました。
食事制限をしてジムに通い詰めて、本気で体を絞って13キロ痩せて46キロまで落としました。そしたらTVを観ている視聴者の方から「長野さん、どうかされましたか」という問い合わせが。病気でどこか患っていると思われたのでしょうね。40代ってまだ新陳代謝が活発な年代ですから、太らない体作りを目指すにはいい年代。50代は生理も新陳代謝も、なにかとストップしてしまう世代なので、40代は気持ちをとめないでボディ作りの基礎は固めておくべきだと思います。
そんな40代を過ごして51歳から始めた乗馬が自分の心身の健康にとても役立っています。体幹や高齢になると衰える内転筋なども鍛えられ、45分レッスンを受けるとヘトヘトになります。また私が通っているアシエンダ乗馬学校は、とても気のいい場所で季節ごとに変わる景色も美しい。
馬ってすごく大きいので乗ると驚くほど目線が高くて、こんなに高い乗り物で速く走るのに、体むき出しで走るんです。その高揚感や爽快感、顔に枝がぶつかったりする臨場感で体から全ての力が抜けます。普段、知らない間に奥歯を嚙み締めているのが解き放たれて眉間のシワも消える感じ。馬に乗るたびに気持ちがデジタルデトックスされるんです。
もともと無趣味な人間で、それこそ50代になった時、雑誌の取材で紹介できる趣味がなくて、当時の女性マネージャーに「50代で趣味のひとつもないのは恥ずかしい」と言われて、何かやろうと思って探したのが乗馬。それが今の自分の支えのひとつになっているので良いタイミングで良い趣味に出合えたなと感謝しています。
乗馬のほかには毎朝のエアロバイクもボディキープの要。でも本質的には怠け者なので(笑)、その時間に観ながら漕ぐためにいちばん楽しみにしているドラマをキープしておくんです。漕ぐこととドラマをセットにしておけばサボらずにできます。馬にとってのニンジンじゃないけれど、自分にとってのニンジンの見つけ方も重要。
つまり「自分を知る」ことが大事なんじゃないかなと感じます。ホルモン検査しかり、やりたいことしかり。時々自分に「やりたいことは何?」と問いかけて好きなことを棚卸ししてみる。できればノートなどに書き出してみることをお勧めします。
私も50代になるまでは仕事に依存していて趣味もゼロでした。でも更年期を感じ始めたあたりから「何かしないと、このままズルズルいっちゃうかも」という危機感を覚えて、続くかどうか深く考えずに、とりあえず自分が興味を持てることを始めてみました。それが結果的に8年続いて自分を豊かにしてくれています。
更年期って、これをキッカケに新たな自分を発見できる好機でもあります。今まで仕事や家事、育児を一生懸命やってきたからこそ、心にぽっかり穴が空いてるかもしれない。でも動いてみることできっと何かが開けるはずです。40代までの人生で何をしたか、50代はその答え合わせの年代です。それまで自分とちゃんと向き合って自分に合った生き方を見つけられていると50代は追い風に乗れたヨットのように進んで結構楽しい。
追い風を作っておけるか、向かい風で不安に思うか、遭難しちゃうかは40代までに かかっています。不調もソフトランディングさせて人生後半戦を軽やかに生きるために、40代は“あがきがい”のあるお年ごろ。チコちゃんに「ボーっと生きてんじゃねーよ!」と叱られないように、みんな頑張って!
〈TOP写真〉服はすべて長野さん私物 〈末尾写真〉ジャケット¥47,300 ブラウス¥29,700 パンツ¥31,900(すべてマレーラ/三喜商事)ピアス¥12,100 ブレスレット¥37,800(ともにアビステ)
撮影/田頭拓人 ヘア·メーク/上野賢治(nice) スタイリスト/板屋ひとみ 取材/柏崎恵理 ※情報は2022年6月号掲載時のものです。
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