失業でなくした役割と誇りを取り戻すために夫の仕事を作ると決意した妻
会社の倒産、リストラ、心身の不調などは、いつ誰に起こっても不思議ではありません。もし、最愛のパートナーの身にそれが起きたら、あなたならどうしますか?
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似鳥陽子さん(50歳・北海道苫小牧市在住) 不動産オーナー、衆議院議員秘書
失業でなくした役割と
誇りを取り戻してあげたい。
夫の仕事を作ると決意した妻は
不動産オーナーに夫婦で転身
誇りを取り戻してあげたい。
夫の仕事を作ると決意した妻は
不動産オーナーに夫婦で転身
45歳のときに、2年間の交際を経て現在の夫と再々婚した似鳥陽子さん。「彼は10年来の友人だったのですが、前夫の急逝で失意のどん底にいた私を気遣ってくれたことから、再々婚に繫がりました。本当に温かい人です」。
幸せな結婚生活に、暗雲が漂い始めたのが,20年の秋頃だったそう。夫は土木建設の現場監督として働いていました。当時の北海道は雨が多く工事は遅れ、同時に納期は秋から翌春に延期になりました。そのため、真冬の山中での作業を余儀なくされ、泊まり込みで働くこともあったそう。「過酷な労働環境で判断ミスも多くなっていったようです。何より、どんどん痩せていく夫を見ていて気が気ではありませんでした。前夫が急逝したこともあり、とにかく無事でいてくれればそれでいいと思っていましたね」。似鳥さんはそんな夫を温かい食事を用意することで献身的に支え続けました。
そして,21年3月。納期に間に合わせると同時に、夫は会社を退職。49歳で無職になりました。「命に代えられませんから、辞めると聞いてほっとしました。とはいえ、今後のことはやっぱり不安でしたね」。
そんな不安な状態を一変させるヒラメキが起こったのは、初夏を過ぎた頃でした。自宅の風呂を改修した縁で、リノベーションの勉強会に参加することになったそうです。内容は中古物件に手を加え、新しく生まれ変わらせてから、間貸しをして収益を得るというものでした。「話を聞いて、直感的に、『これだ!これしかない』と思いました。建設業だった夫なら、自分で改修ができる!これが彼の仕事になる!利益は夫婦二人で分かち合えばいい!と、瞬間的に思いました」。
似鳥さんは持ち前の行動力を総動員し、中古物件を調べまくりました。こうして手に入れた戸建て物件は、その後、夫の手によって新しく生まれ変わり、9月には人に貸すまでに。そして年末までに、さらに1軒買い増しました。似鳥さんは当時の心境をこう話します。「夫の年齢を考えると、再就職は難しいと密かに思っていました。人って役割がなくなると、腐ってしまうものですよね。だから彼のこれまでの経験を活かせる“何か”を探し、誇りを取り戻してあげたいと思っていたんです。彼が楽しそうに改修している姿を見ると、やってよかったって本当に思います」。
さらに今年1月からは、不動産業と同時に、衆議院議員 堀井学氏の地元秘書を夫婦で務めているそうです。「不安なときもありましたが、やっぱり彼がイキイキしていることが一番です」と話してくれました。
今年1月から議員秘書をしています。「議員の活動をSNSで発信しています。後援者の方々から、最近SNSが変わったと言われ、嬉しくなりましたね」(似鳥さん)
取材/髙谷麻夕 ※情報は2022年7月号掲載時のものです。
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