【医師が解説】つらすぎるPMS、病院に行く目安は? ピルは将来妊娠しづらくなる?

PMS(月経前症候群)とはPremenstrual Syndromeの頭文字をとった言葉で、生理前の3日〜10日前から始まる身体的な不調や精神的な不調のこと。

頭痛や腹痛、めまい、眠気やだるさなどのほか、イライラ、不安や悲しみ、抗うつ症状などがあります。生理前は情緒が不安定になってつらいという方も多いのでは。症状は人によってさまざまで、中には日常生活ができないほど苦しい方もいるでしょう。

そこで今回は、PMSの症状がつらいときや、セルフケアでは改善が難しいときに治療する方法を大美会クリニック理事長の南 真実子先生に解説していただきます。

PMSがつらすぎる! 病院へ行くべき?

PMSは毎月のことだからと我慢したり、症状がつらくても病院へは行かず自力で治そうとしている方は多いかもしれません。PMSで病院を受診したい場合は婦人科へ行きましょう。産婦人科、レディースクリニックでも受診可能です。

まずはPMSがつらいと感じたときに病院を受診する目安と、病院ではどんな治療ができるのかをご紹介します。

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PMSで病院を受診する目安

PMSの症状はさまざまで程度も人によって差があります。仕事が手につかない、学校に行けない、家族にイライラしてケンカになる、寝られないなど生活に支障があると感じる場合は受診することをおすすめします。

PMSを薬で治療する方法

PMSは排卵周期に起こるとされており、妊娠の希望がなければピルが有効です。ただし、PMSに対しては保険適用外になります。

何らかの原因でピルが服用できない場合は、当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)や加味逍遙散(かみしょうようさん)、桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)などの漢方薬を処方されることがあります。精神症状が特に強い場合は、精神安定剤や抗うつ剤を使用することもあります。

副作用もある? ピルについての疑問を解決

PMSの治療に効果があるといわれる「ピル」。避妊薬として知られていたり、なんとなく名前を聞いたことがあるという方が増えて認知度が高まっている一方、「薬なのでちょっと不安」と抵抗を感じている方もいるかもしれません。そこで、南先生にピルについて詳しく聞いてみました。


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そもそも、ピルってどんなもの?

ピルとは、排卵の抑制や子宮内膜の増殖を抑制する薬です。正しい使用によって避妊ができ、さらには、女性ホルモンのバランスが保たれPMSの症状を和らげる効果が期待できます。1日1錠を決まった時間に飲むものが基本で、日本では医師の処方が必要です。服用をやめれば排卵が始まるため、将来的に妊娠しづらくなることはありません

ピルには副作用もある

効果がある一方、ピルには副作用も認められています。一般的な副作用としては、頭痛、吐き気、不正出血、胸の張りがあります。ただし、こういったマイナートラブルは服用をはじめて1〜2ヶ月などの最初のころに起こりやすく、ピルを服用していくうちに体が慣れていき、なくなっていくことがほとんどです。

重篤な副作用としては、血管の中に血の塊ができてしまう「血栓症」があります。また、子宮頸がんと乳がんのリスクが多少上がるというデータもあります。

ピルを服用できない人

BMIが30以上の方、40歳以上の方には服用をおすすめできません。また、タバコを吸っている場合は血栓症を引き起こすリスクが高いので投与できません。中でも35歳以上で1日15本以上タバコを吸う方には絶対に投与してはいけないというルールになっています。そのほか、妊娠されている方にはもちろん投与できませんし、もともと血栓ができやすい体質の方にも投与は難しいです。

ピルの価格はどれくらい?

病院やピルの種類によって違いますが、だいたい1シート(1ヶ月分)が2,000円〜3,000円程度です。保険適用の場合は、患者さんの負担が3割になるので多少安くなります。それに加えて初診料や再診療がかかりますが、これも病院によって異なります。

ピルが保険適用される場合は?

月経困難症、子宮内膜症と診断された場合のみ保険適用されます。症状としては生理痛がメインになりますね。超音波検査をし、卵巣にチョコレート嚢胞ができている方やその手術をした後の再発予防としてピルが処方される場合もあります。

PMSがつらいときは婦人科の受診やピルも選択肢に

PMSを病院で治療する方法を中心に、気になるピルについてもご紹介しました。PMSの症状がひどい場合、メンタルの不調で人間関係がうまく行かなくなったり、体の痛みや不調で学校や仕事に行けなかったりと日常生活に支障が出てしまうこともあります。

少しの不調であればセルフケアできる場合もありますが、ひとりで悩んで我慢している状態であれば婦人科の受診も検討してみて。ピルを服用したい場合は、体質や生活習慣をチェックして医師にしっかり相談しましょう。


教えてくれたのは……大美会クリニック理事長の南 真実子先生

祖父や父が産婦人科医であったことから、自身も大阪医科大学医学部卒業後、初期研修を経て大阪医科大学産婦人科教室に入局。主に、腹腔鏡手術、不妊治療、周産期治療などに従事し、産婦人科専門医を取得。検診業務にも従事し、マンモグラフィー読影認定医を取得。女性がいつまでも健康で美しく輝いていられるよう、更なる高みを目指して、美容医療、アンチエイジング医療を行う。大手美容クリニックで活躍後、2017年に大阪美容クリニック(現在の大美会クリニック)を開院。婦人科・美容皮膚科を通じて、女性をトータルにサポートできるよう診療を行っている。

医療法人大美会グループHP
Instagram @dr_minami

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