「離乳食食べてくれないと悩んだのに!」イラストレーターきくちあつこさんの育児
慢性的な睡眠不足やなかなかとれない自分の時間、育児にかかりきりになる間に周囲から置いていかれるような焦燥感など、乳幼児期の育児は、思い通りにいかないことだらけ。子どもの笑顔を見たらすべて吹っ飛んじゃう!というわけにはいきません。それでも二度と戻っては来ない濃密で愛しいひととき。育児がきっかけでファッションイラストを描く今の仕事をはじめたという人気イラストレーターのきくちあつこさんに「あのころ」を振り返っていただきました。
*VERY2022年7月号「酸味と甘味が交錯するレモネードな子育てあるある」より。
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育児日記をつける時間は
なくても……
──新刊には、そう、まさにこんな感じだったー!と思わず笑ってしまう乳幼児期の「あるある」イラストが盛りだくさんです。子ども写真の整理や育児日記ってなかなか続きませんが、きくちさんはどうやって記録に残していたんですか?
育児中は、手帳に落書きみたいな感じでイラストやメモを書いていました。妊娠中からずっとつけていたので見返して、「ああこんなだったなあ」と思い出しながら書いたのがこの本です。とはいえ、出産直後は忙しくて余裕もなかったので本当に走り書きのメモ程度でしたね。忙しくて書くひまもないけれど忘れたくないというちょっとしたエピソードはスマホに音声入力でメモしていました。今は日記どころじゃないというお母さんも多いと思うのですが、音声メモに残すのは、片手でできておすすめです。
「離乳食を食べてくれない」
あれほど悩んだのに……!
──本の中で「離乳食を全然食べない」と悩んでいた上のお子さんはもう、きくちさんの身長も体重も超しているそうですね。
息子たちは今小1と小6になり、毎朝一緒に登校しています。子どもに「あなたが小さいときのことを書いたよ」とこの本を見せたら、「こんなんやったんや」「めっちゃおもろい」って大ウケでした。いやーけっこう赤裸々に書いたけれど怒られなくてよかったです。本にも書きましたがお兄ちゃんは離乳食を全然食べてくれなくて、当時は悩んでいたんですよね。それが今やめちゃくちゃデカくなって子ども服にはもう着られるサイズがありません。メンズのブランドで着られる服を選んでいます。「食べない……」とあれほど悩んでいた日々を返せって感じです。ランドセルもついに肩ベルトがブチッと切れちゃって、リュックで通学しています。「ここ、切れたらあかんとこやん」って思うんですけど。
──「男の子の服選びが難しい」「価格とデザインのバランスがちょうどいい服がなかなか見つからない」という悩みもよく聞くんですよ。
ワンピースやスカートが豊富な女の子に比べ、男の子の服はアイテム自体が少ないですよね。サイズが大きくなってきてからは、レディースのSサイズを着せることも多かったです。ユニセックスなデザインもけっこう豊富なのでおすすめです。
インスタに「毎日イラストを
描いて」デビュー
──きくちさんはファッションイラストがSNSなどで大人気です。いまの仕事をはじめたのはいつ頃からですか?
上の子が4歳くらいの頃、インスタグラムに毎日絵を載せていたら、出版社からお声がけいただいたのがきっかけです。妊娠後はフルタイム勤務を辞め、パートで仕事に復帰しました。入社したのはものづくりをする会社で、職人さんたちの姿を見ていると「自分も何か作りたい」「本腰を入れて働きたい」という気持ちが芽生えてきたんです。手帳に1日1枚、子育て日記とファッションイラストを描いて、インスタに練習のつもりで上げはじめたのがその年の1月1日。それから毎日投稿するようにしたら秋頃に、「本を出しませんか?」と連絡が来ました。勤めていた会社の社長に「本を出すので辞めます」って言ったら相当驚かれて(笑)。「それ、絶対騙されてるよ」「席は空けておくから戻っておいで」って心配してくれました。その後、依頼のあった一冊目の本を出したことから今のイラストの仕事をはじめたんです。
描き続けられたのは
「子育てをしていた」から
──好きなことを仕事にするからこその苦労や、育児で仕事の時間が制限されるといったジレンマはありませんでしたか?
昔からファッションが大好きで、子育てについてはもう、毎日の生活の中にネタが転がっているので、描きたいことだらけでした。以前の仕事では、書類作成が面倒だとか何かしら苦手なことや不満があったのですが、今の仕事に就いてからは作業が全く苦になりません。それは本当にありがたいことだし、好きなことを仕事にする醍醐味だと思っています。ただ、週末は息子たちの都合が優先になりがちですし、子どもの病気などでスケジュールが変わってしまうようなことはどうしてもあります。「子どもがいなかったらもっと仕事ができた」と思うことも。ただ、育児中のお母さんのためのファッションイラストを楽しみにしてくれる人も多いし、子育て中だからこそ突き詰められるテーマも多いんですよね。周囲の忙しく働いているお母さんに話を聞いたら、「子どもができてから、自分の器が、おちょこから土鍋くらいの大きさになった」と言っていてなるほどと思いました。それくらいどっしり構えていたいです。きっと子どもがいない方が時間の融通がきいて作業時間は増えるでしょう。ただ、人それぞれ与えられた役割があって、今はまず、自分にできることからやっていこうと考えるようになりました。
──今、育児が大変!という人には何と声をかけますか?
とくに乳幼児期は手がかかることが多くて、ずっとこのままの生活が続くのかな、と思ってしまうのですが、少しずつ手が離れて楽になるときが来ます。まとまって寝るようになったら、保育園や幼稚園に入園したら、4、5歳になって、着替えやトイレなど自分の身の回りのことができるようになってきたら、だいぶ過ごし方が変わってくるはず。ほんの1、2時間ずつでも自分の時間が増えてきて、生活が以前よりもうまく循環するようになるタイミングがあと少しで来るよ、と怒濤の日々を過ごすお母さんたちに伝えたいですね。
『きくちあつこ レモネードな子育てあるある日記 ~酸味と甘味が交錯する0-4歳育児~』
(講談社・1,430円)
インスタフォロワー約28万人の大人気ファッションイラストレーターきくちあつこさんの「育児あるある」本。思わず笑ってしまう赤ちゃんの行動や幼児期ならではのかわいい&困った!をイラスト&エッセイで紹介。育児中にぴったりのファッションイラスト、コーディネートのアイデアもたっぷり。子どもの言動にヘトヘトな人、毎日頑張るお疲れの人、子育て中もファッションを楽しみたい人にオススメの一冊。
◉Profile
きくちあつこさん
イラストレーター。1980年大阪生まれ。2014年頃からインスタで、ファッションイラストと育児日記を掲載開始。おしゃれなイラストやファッションセンス、かわいくて笑える育児日記が多くの女性から支持されており、インスタフォロワーは約28万人。女性誌「with」の公式サイト「with online」や子育てサイト「コクリコ」でも連載。『FASHION SKETCH BOOK』(宝島社)をはじめ著書多数。ユニクロやフェリシモなどとのコラボ商品企画も多数。男児2人の母。インスタアカウント名はoookickooo
https://www.instagram.com/oookickooo/?hl=ja
*VERY2022年7月号「酸味と甘味が交錯するレモネードな子育てあるある」より。
*掲載中の情報は誌面掲載時のものです。
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取材・文/髙田翔子 編集/フォレスト・ガンプJr