“5人に1人が出会ってる”【マッチングアプリ】子育て世代はどう向き合う?

出会いのツールとして、コロナ禍で急成長したマッチングアプリ。「それって恋愛・婚活用でしょ」という声が聞こえてきます。「私たち結婚してるし、子どももいます」。たしかに。VERYはマッチングアプリの利用を推奨するわけではありません。ただ、否定するわけでもありません。今回はその著書『SEX』でマッチングアプリ独特の〝ヤリモク〟を題材にした短編小説を書かれているLiLyさんと、『38歳バツイチ独身女がマッチングアプリをやってみた(ヤバい)結果日記』を描かれた漫画家の松本千秋さんと共に、子育て世代とマッチングアプリの距離感について考えます。

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\いまや、5組に1組はアプリ婚/

作家・LiLyさん×漫画家・松本千秋さん
VERY世代と
マッチングアプリの距離感

【左】松本千秋さん【右】LiLyさん

──松本さんはアプリ体験を2冊のマンガ(『38歳バツイチ独身女がマッチングアプリをやってみた結果日記』)にまとめられていますが、始められたきっかけは?

松本 仲のいい同年代(当時38歳・離婚後1年)に、「結婚してる」か「恋愛には興味ありません」系しかいなくて、男子、デート、恋に興味ある女友達がすっからかんになってしまって、仕事の発注のないゴールデン・ウィークに暇つぶしに例のアプリでもやろうかな、と。女性同士でもマッチできる機能があるので、最初は近所の女の子とお友達になれたら、ご飯でも行こうかとダウンロードしたんですけど、マッチしてもメールもなし、シーンみたいな。受け身な子しかいなくて、受け身じゃなさそうなのはマルチっぽい人が多かったり。諦めて男の子にチェンジした瞬間ブワーッと。

──3分もしないうちに「99人以上の人がすでにあなたをLikeしてます」と。松本さんは年下のイケメンを「Tinder」で。

松本 Tinderは結婚願望があってやってる人少ないし、すさまじい量のメッセージで、ダウンロードした日の夜に、大学生とデートしたのが最初で、目的どおりゴールデン・ウィークは全部埋まりました。3人目に会った人がランウェイ歩いてるファッションモデル、噓やろって。私は当時渋谷区の〇〇だったんですけど、22~23歳のモデル、俳優が大量に住んでいて。街を歩いていてもなかなか見かけないけど、アプリだと在宅中のグッドルッキングなご近所さんを発見できる。

『38歳バツイチ独身女がマッチングアプリをやってみた結果日記』

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母、妻、女としてのバランス

──海外配信ドラマでは、アプリの出てこないものを探すほうが難しいくらいですね。

LiLy 『SEX』(幻冬舎)の1話目では、女性がワンナイト希望の男性の被害者ではなく、自らの意思で能動的に一夜の情事を楽しむ、ということを描きました。千秋さんのマンガとの共通点はそこだと思っていて、女性たちによる受動的ではないセックス、日本のフェミニズム、娘たちへの性教育でも遅れている部分。

──地上波ドラマでは描かれない部分。

LiLy はい。そもそも、女性に性欲があるという基本的なところが何故か日本ではまだまだタブー化されているように思います。自慰ひとつをとっても、女の子が自慰をすることに否定的な親はまだ多い。自分の性欲を恥じる感覚は、そのまま女性=男性の性欲の犠牲者という図式につながっている気がして。私はそれを不自然だと感じる。

千秋さんが女友達の枝分かれで、男に興味がない層と既婚者しかいなくなったとおっしゃってましたが、逆に私の周りには、バツイチ子持ちで再婚願望はないアラフォー女性が多いんです。普段は仕事と育児で忙しいので、恋愛では癒しと刺激を得られれば幸せ、というような。条件云々の婚活とは真逆の、まるで〝青春時代のような〟ライトなある意味ピュアなただの〝恋〟プラス〝大人のセックス〟。

──その感じは離婚してない女性にもありえるのでは?

LiLy はい。子どもを産んだ後の女性って、「私はもう女としては終わったんだな」と感じる瞬間が個人差はあれど少なからずどこかにあると思っていて。母親になる前の自分との比較で。そこに夫婦のレスがきて、自分はまだ性欲がある状態だと、母として妻として女としてのバランスに苦しむことになる。だけど、もしかしたら家の外に出れば私もまだ女として見てもらえるかも、みたいな切なさを抱えている。これは既婚者の女性、VERY読者のママたちの中にもいると思います。どんなに仲が良くても夫婦間で性欲を満たし合えている人たちは、超ラッキーな少数派だと思うので。

私の場合も、レスが一番の離婚理由なんです。もちろん子どもがいるので死ぬほど悩みました。だけど、不倫は私の中では選択肢になく、まだ当時33歳で、これから一生セックスしない人生は選べなかった。でも、だからといって、結婚してるんだからアプリで羽目はずすのは不倫だよ、それってずるくない、なんていうつもりはまったくなくて、そこに至る気持ちはよくわかる。

──お2人ともTinder。

松本 Tinder以外は婚活っていうイメージがあって。結婚する気もなかったし。

──結婚願望のない既婚者向きと言えなくもない。

LiLy 今、リアルな恋愛小説を書くのにアプリを知らずには書けない。それくらい〝普通の出会い方〟として普及していて。特にコロナ禍でさらに。顔出しはせずに取材として数週間やってみたのがTinderです。女の子ともマッチして、お互い他人なので本音を聞き出せたこともあり、会わずにチャットをしているだけでも最高のインプットになりました。

タップルやwith、東カレデートやバンブルなど、恋活、婚活をしている友達からも詳しく話を聞いていますが、最も手軽=暗黙の了解でヤリモク多数のアプリがTinderというイメージです。気楽な出会いを求めている女性は少数派=顔出ししている高身長のイケメンしか実際に会うところまでいけないという印象もあるので、ルックスが良い男性が多い印象です。まさに松本さんの漫画の内容と同じで、ライトな恋(とセックス)がしたい若いイケメンと、結婚願望のない年上の女性のマッチ率は高そうです。

──それは既婚者も同じことでは? しつこいですが。

LiLy 離婚できないけどセックスはしたいから浮気をする、という女性を批判はしたくないです。不倫に共感はしないけれど理解はすごくできるから。それに、離婚するには経済力が必要だという事実もあるから……。ただ、私が思うのは、「夫婦」の定義をどこに置くかなんですよ。夫婦を「家族」と定義するならお互い浮気をしても離婚はしない。私の「夫婦」の定義は「男女」なんです。あとは「裏切りの定義」かな。私がレスでも浮気をしなかったのは、「子どもをも含んだ家族」を裏切るのが耐えられない。

「アメリカでは」という言い方は嫌われるけど、男女でセックスが途絶えたらその夫婦という男女関係は解消して、だけど父と母としては一緒に育児をしていくスタイルは珍しくないんです。日本では、私のこのかたちはマイノリティだけど……。でも、思うんです。夫婦がお互いに欲情し合う男女関係をキープしながら父でもあり母でもあり、家族みんな仲良しって、夫婦の上位何%の話ですか?って。それができれば理想ですけど、宝くじレベルの難しさかと。

『38歳バツイチ独身女がマッチングアプリをやってみた結果日記』

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全力でネットストーキング

──以前のテレクラや出会い系には暗いイメージがありましたが、いまや結婚するカップルの5組に1組はアプリ婚というくらい印象も使い勝手もブラッシュアップされました。いわゆる「普通」の出会いとアプリでの出会いと何が違うのか、「普通」の出会いだから幸せだとか安全だとか言えるのか。

LiLy 共通の知人がいない、というのが特殊だと思います。悪さしようと思えばできる。だけど、自由にもなれる。共通の知り合いにばらされるリスクがないから性癖とかもさらせますよね。でもその分、危険は多いと思いますよ。会社も名前も噓かもしれないし。

松本 私は「一線越えそうかも」と思ったら全力でネットストーキングします。

LiLy それは絶対マストだと思う。Facebookとかに名前なかったらおかしいですしね。

松本 どこぞの企業のサラリーマンとかだと、素性を突き止めるのに少し苦労しますよね。会社に電話して「なになにさんていう方いらっしゃいますか?」なんていちいち確認してられない。でも、ファッションモデルとマッチするといいですよ。ファッションモデルなんて会えないでしょう、ってみんな言うんですけど、モデルも沢山利用していますよ。それで、彼らは自分のホームページに載ってる写真を堂々と使ってる。画像検索すると事務所に飛ぶんですよ。インスタに飛べるようにしてある男子もいるし。安心安全なのでおすすめです。

──男性は独身の人が多いんですか?

松本 いいえ、年が近い人だけで検索したら、知り合いの既婚者が続々出てきました。

LiLy アプリによるとは思いますが、女の人は顔出さなくてもマッチします。VERYの読者さんはリアル社会でも賢く生きている女性たちですから、アプリ使いも上手だと思います。実生活や人生が器用な人はアプリも器用に使えると思います。結局そこはスキル次第。

──距離の取り方も。

松本 実は遊んでそうな方々が多いんですかね。

──女性は浮気してもバレない。

LiLy 浮気をしただけではなく、すぐバレる程度の男性の危機管理能力のなさのほうが酷い話です。既婚者なら尚更のことです。大切な家族を傷つけるかもしれないんだから徹底的に隠蔽すればいいのに。脇の甘い不倫なんて、最低最悪です。

──バレないのが優しさだと。

松本 既婚者同士のアプリだとどっちも顔を隠してるらしいですよ。

LiLy それは顔ばれしないようにという。

松本 それで、性格合うかな、くらいでしか判断できない。顔は会ってみないとわからない。私の友人は既婚者アプリで2人の男性と会ってみたけど、ルックスが好みではなかったと残念がっていました。

──松本さんは顔で選んできたわけですね。

松本 顔でしか選ばないです(笑)。

──Pairsとかだと結構真剣な人が多いと聞きますが。

LiLy 恋愛とか婚活。実際に結婚した友達を何人も知っています。ただ、それはTinderでも同じで、出会ってしまえば後は2人の相性ですもんね。

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承認欲求のための……

LiLy さっき、「不倫をするくらいなら離婚するほうが筋が通っている」みたいなことを言ったけど、私がそうしたというだけで人にもそれを押し付けたくはないです。実際、離婚できないケースっていっぱいあるから。既婚者の場合でも男性用風俗は黙認されている風潮がありますが、女性で性欲が満たされなくて苦しんでる人、本当に多い。夫に抱いてもらえないっていう女としてのみじめさ、切なさ。または夫とセックスしたくないけど性欲はある、という悩みもある。私はnoteで会員制の「オトナの保健室」という相談室を主宰していて、女として満たされない苦しみの話題がよく出るんです。アプリは、実際トラブルになるリスクが高いから、女性用風俗は今後もっと普及していくように思います。

松本 さっきの既婚者アプリを使った友達は、旦那さんに相手にしてもらえないっていうよりも、彼女も旦那さん相手にセックスをすることに、もう興味がない。お互いにスイッチが入らなくなっちゃって「私、この先の人生、死ぬまで誰とも触れ合わないで終わるのか、と思ってやった」と言ってました。

LiLy 離婚する前、私もそう思ってました。当時32歳くらいだったのですが、自分の性欲さえなくなれば家族は幸せなんじゃないかってところまで思い詰めてしまって、瀬戸内寂聴さんとか読んで、出家も視野に入れましたから。不倫は本当にしたくなくて、出家が視野に入ったらメンタルちょっと落ち着いた夜があったり、それくらい思いつめて。

松本 女性って、最終手段に出家という手がよぎること、多々ありますよね。

LiLy それは自分の中にいる〝オンナ〟のコントロールが難しいからだと思う。〝オンナ〟って病だと思っていて。いつまで枯れないんだろうっていう恐怖。性欲もなくなって〝オンナ〟が大人しくなってくれたらピースかなとも思うけど。

松本 でも、時期によりますよ。私、今、すごく性欲ないんですよね……。

──アプリで知り合った方の一人と真剣交際されてると先日伺いましたが。

松本 ええ。困っちゃってサプリ飲んでますもん。何か効かないかなって。

LiLy アプリマンガの時期は性欲がありそうだったけれど、女性の性欲も波がありますよね。

松本 あの時期は最大ありましたね。

──あったりなかったりする。

松本 習慣化しないと止まるみたいな。コロナ禍で引きこもっていたのがよくなかったのかな? 今、せっかくパートナーがいるのにそういうスイッチが入らなくて。

LiLy それはパートナーになっちゃったから?

松本 いま、原因を探り中。何かセックスというブームが去ってる感じ。もしかしたら、漫画家になったことで仕事で承認欲求が満たされちゃってるから。前は承認欲求のためにセックスしてたのかも……。

LiLy 中村うさぎさんのエッセイがまさにそこを鋭く書いていてすごく面白くて。最近、『女という病』とか『私という病』とか読んでるんですけど、やっぱり承認欲求はキーワードなんですよね。

──アプリをダウンロードして、ワーッとLIKEがきて、というのでは承認欲求は満たされませんか?

LiLy うーん。男友達曰く、Tinderでは男の人は写真も特に見ないで8割にいいねして、マッチしてから考える、と。

松本 Twitterにはいますけどね。裏垢で下着姿の画像で「いいね」とか「よろしくお願いします」がバーッてつくのを集めて楽しんでいる女性たちが。

『38歳バツイチ独身女がマッチングアプリをやってみた(ヤバい)結果日記』

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コンサバな自分とのジレンマ

──たとえばVERY読者はどのような距離感で付き合うとよいでしょうか?

松本 リリィさんがおっしゃっていた「他の男の人を求めるんだったら私はまず離婚する」というのがマジでそうだな、と刺さったんですが、ご自身もある程度稼いでらっしゃるんだろうし、旦那さんの経済というのはやはり大きいと思うので、そうなると、ちょっとひと時の息抜きにアプリを使って、一緒にお茶を飲むぐらいの異性のお友達を作ってみたらいいんじゃないですか、という感じですかね。

──公式見解ですね?

松本 本音じゃないですw。

LiLy VERYのコンサバな感じって私の中のコンサバでもあるんです。私が育児をとおして葛藤しているのはコンサバな自分とのジレンマなんです。私は学歴で人を見ないけど、子どもには有利だからちゃんとした学校に入れたいと思ったり、常にそのコンフリクトがあります。離婚するときも、レスを理由に子供たちの最高のパパである人と離婚していいのだろうか、という罪悪感にのたうち回りました。結果的には今も元夫と離婚前と変わることなく一緒に育児をしているので大丈夫だったんですが、そりゃあ当時は不安でした。だからVERY読者の中のコンサバな方たちの、自分では脱げないコンサバがわかるんです。親から、おばあちゃんから、社会からの刷り込みからもきているし、根深いものです。

ただ、親としての多様性、結婚の多様性をもっと認めていくべきだと思います。子どもたちのためにも。お受験面接で両親が揃ってないと受からないから離婚しないとか、そんな片親家庭への差別を暗黙の了解として掲げる学校で我が子を学ばせたいか?って腹が立つんです。でもわかるんですよ。子どもにいい学校行ってもらったら親として任務を果たしたような気分になるし、何よりなんだか子どもの未来に対して安心するという気持ちも。

──VERYは先日新聞で「結婚だけが人生じゃない」と全面広告を。

LiLy 私、その広告、最高!って叫びました、見たとき。私は全然VERYタイプじゃないのに娘たちへの性教育ノベルの連載をさせていただいたり、こうして企画に呼んでいただいたり、異なる価値観の人を積極的に取り入れていくVERYのそういう知的なところが大好きなんです。読者も知的な女性の集まりだと思っています。だからこそ、VERY読者のママたちが日本の未来の価値観を変えずに誰が変えるのって言いたいです!

──「幸福度世界ナンバーワン」のフィンランドについて取材したとき、あの国では40代、50代の男女も普通にマッチングアプリを使っているということでした。マッチングアプリというのは……。

LiLy いいも悪いも、もはや普通のものだと思う。これからずっとあるもの。子どもたちの世代もやっていくもの。自分が今住んでいる〝世界線〟がバグる感覚が面白いんだと思います。普段の生活では出会えない人と出会える、普段の肩書から互いに解放され、普段つけている仮面が剝がれ、人間の裏側が垣間見えるといった楽しさがある。ただ、生活基準や世界観はなかなか一致しないから、互いに本命として考える人と出会うのは難しいとも思います。やっぱり同レベルの人というのは、自分の周りにいるものですから。

松本 パートナーがうんぬんというよりも、「いま、さみしい」ってなったら「いま、調達、ウーバーイーツ」って思ってやってましたから。

LiLyさん

作家。1981年、神奈川県生まれ。ニューヨーク、フロリダでの海外生活を経て、上智大学卒業。2006年に恋愛エッセイでデビュー後、女性心理の赤裸々な描写で女性からの圧倒的な支持を得る。2022年までVERYwebで性教育ノベル『Girl Talk with LiLy』を連載。著作多数。中学1年の男児、小学5年の女児の母。

『オトナ白書 平成ギャルから20年、
令和の東京、40代へ』

(宝島社)

『オトナミューズ』の長期連載最新刊。40代を迎えた「お母さん」と官能小説を執筆するLiLy、コンサバとアンチコンサバの振れ幅を生きる日常をスケッチ。

『BAD SEX』

(幻冬舎)

対談でも紹介された女性のための官能小説『SEX』の続編。

松本千秋さん

1980年、東京都生まれ。映像制作・編集の仕事を経て24歳で専業主婦に。27歳で離婚を切り出し、33歳で別居、37歳で離婚。2019年、『38歳バツイチ独身女がティンダーをやってみた結果日記』で「♯コミックエッセイ大賞」に入賞し漫画家デビュー。現在は『トーキョーカモフラージュアワー』シリーズが大ヒット中。

『38歳バツイチ独身女が
マッチングアプリをやってみた
(ヤバい)結果日記』

(幻冬舎)

(ヤバい)が付いている黄色いほうが続編。バツイチ38歳が50人近くの年下美男子とマッチし続ける一見イケメンパラダイスアワーだが、のめり込んでいるようで達観している妙にリアルな読後感も。

『ニュートーキョー
カモフラージュアワー 4』

(少年画報社)

テレビやSNSで話題沸騰の恋愛ショートオムニバスシリーズ最新刊。「このエピソードは私のこと」と没入型中毒者続出!

断片的な匿名読者調査メモ1

高校生時代は文通(!)きっかけで人と会っていた。リクルートの『じゃマール』を使って。今、娘がそんな方法で誰かと会うと言いだしたら全力で止めるw。

既婚者向けアプリでは、婚活アプリと同じで、見た目の好み、趣味、性格の合いそうな人を探すこともできる。自然な出会いよりも効率よく気の合う人と出会えるはずだけど。

やはり抵抗が。人の妻、母だから? でも、結婚したら一人の人と添い遂げるべきと思ってるわけでもない。倫理観だけではなく、事件などのニュース見ると怖いというのも。

アプリの話を友人にしても、シーンと。使っていても言わないだけなのかも。

夫婦であっても、年月や子どもの有無で関係が変わってきたら、お互いに割り切った別の相手がいてもいいんじゃないか、そのほうが結婚生活がうまくいくのでは、と思うことも。

N.Sさん(39歳) 会社員 子ども2歳 女の子

断片的な匿名読者調査メモ2

友達が出会い系アプリで浮気。位置情報アプリでホテルにいるのが特定されてちょっとした修羅場。アプリって面倒だなという先入観。

1歳児を育ててる友人から、「デートしたい、とにかくデートがしたい、夫以外と」とLINEがくる。その気持ちはわかる。ドキドキしたり心が高揚する瞬間が日常生活の中からすっかり失われている。

既婚者向けアプリを1個、登録しただけでメッセージが山ほど。今のところ、実際に誰かと会う予定はない。夫を含め、これまでの出会いも偶然であって必然や運命の出会いではなかった。運命みたいな気がしてたのは錯覚だということに気づいた。元彼と結婚してたら今頃……みたいな「たられば」を考えることもなくなった。東京にこれだけ男の人がいることもすっかり忘れてた。今の結婚生活がすべてではない、と考えられると、「私の人生大失敗」みたいな総括を30代くらいでしないで済む。

M.Fさん(35歳) 専業主婦 子ども5歳

編集後記

VERYはマッチングアプリの利用を推奨するわけではありません。大事なことなのでリードに続いて2回書きました。

さて、人生に意味はあるのか、という話です(話を大きくしました)。なんらかの成果・作品を、あるいはDNAを残すこと、世の中に爪痕を残すことが人生の意味でしょうか?

エントロピー熱力学第二法則に則って、宇宙には必ず「熱的死」が訪れます。それ以前に、巨大化した太陽に地球は呑み込まれるし、それを待たずに戦争か資源の枯渇によって人類は滅びているでしょう。何かを残すことが意味だとすれば、人生に意味はありません。

おいしいものを食べたときの満足感、思い切ったショッピングの高揚感、幼い子どもの寝顔を見つめる幸福感……数分後には消えてしまう、けれどもたしかにそこにあったエモさこそが、つらいことや悲しいことも含めて、人生の意味、なのかもしれません。

アプリでマッチした刺激的なパートナーと過ごした時間も、多くの場合、日常に戻れば消えてしまいます。一度だけの人生、それを必要とするかしないかは、それぞれの価値観、人生の優先順位の問題。アプリを使うか使わないかにかかわらず。

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撮影/吉澤健太 取材・文/フォレスト・ガンプ Jr. ヘア・メーク/宮本由梨
*VERY2023年5月号「私たちとマッチングアプリの距離感」より。
*掲載中の情報は誌面掲載時のものです。商品は販売終了している場合があります。