サッカー界のレジェンド・澤穂希さんの「子育て術」とは
サッカーでは出会えなかった新しい喜怒哀楽に出会う日々
子育てをしていると、子どもとぶつかることもありますし、悩みます。全部自分の思いどおりに行くことなんてありません。
サッカーも、子育ても、思い通りに行かない局面で、たくさん泣きました。でも、子育ては「自分にはこれまで、こんな感情も、こんな考え方も無かった……」なんて、新しい発見があったりして。サッカーをやっていた頃にはなかった、新しい喜怒哀楽に出会います。
そんな毎日は、悩みも多いけれど、楽しい。
たくさん泣いた分、たくさん笑っています。子育ては、サッカー同様に一人じゃできないし、周りの人に支えてもらうことも多い日々です。私は、完璧じゃないから、甘えるところは甘えるようにしています。
そして、子どもの成長は、一瞬であっと言う間。だからこそ、その一瞬を見逃さずに、自分も一緒に成長していきたいです。我が子も小学生になり、成長を嬉しく思う反面、手が離れて寂しいなという思いもあります。こんなに愛おしい存在に出会えた喜びを、今は大切にしようと思っています。
“好き”を見つけてチャンスの波に乗る準備を
私の母は、私が小学2年生の頃、女子の入団の前例がなかった地域のサッカーチームに「うちの娘で歴史を作ってください」と、監督を説得し、私が大好きだったサッカーへの道を作ってくれました。今の私があるのは、あの母の言葉があったからです。
子育てをしていると、あの子はできるのに……、と思ったこともあります。でも、子供はみな同じではないですし、一人一人個性があるから、周りを気にするよりも、その子の個性、好きなことを伸ばしてあげるのが一番です。
親があれこれ言うよりも、子ども自身が何かのきっかけで好きなことを見つけられるように手助けしたい。そしてその後は、“チャンスの波に乗れるよう準備する”ことです。
私の母は、「チャンスの波にのりなさい」というのが、口癖でした。チャンス、その波はいつ来るかわからない。だから、私は、どんなことにも全力で取り組んで準備していました。その波に乗ることさえできれば、たとえ失敗したとしても、チャレンジしたことが、経験として力になっていくに違いありません。
世界に出ても物おじせず「白は白、黒は黒」と言う子に――
私がチームのキャプテンだった頃は、「見て見ぬふりをして何とか丸くやっていこう……」ということはせず、白は白、黒は黒、とハッキリとチームの皆に示してきました。
子育てもそうです。将来、海外に行っても、自分の考えを主張できるよう、「間違ったことは間違っている」そう伝えるように、娘に言っています。そうしたら、本当に「白は白」「黒は黒」とハッキリ言う子に育ってしまって……(笑)。それには、ビックリすることもあります。
今は娘が小学生になり、少しずつ手も離れて、これからの自分について考える時間も増えてきました。そんな時間で資格をとったり、自身の未来ももう一度考えていきたい。そして、もっと先には、幸せなおばあちゃんになりたいです。
母を見ていると、孫のパワーってすごいな、と思うんです。母はずっと股関節が悪かったのですが、手術をせずにやり過ごしていたところ、孫ができた途端、手術もして一緒に遊んで、とても幸せそうにしています。
今も、母に娘を見てもらうことが多いのですが、何だか二人の世界があるんですね(笑)。だから、私も幸せなおばあちゃんになりたい。その前に、娘の反抗期とも向かい合わなくてはいけないですけれど……(笑)。
撮影/須藤敬一 ヘア・メーク/陶山恵実(ROI) スタイリスト/竹村はま子 取材/河合由樹、片山あゆみ
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