元テレビ朝日アナウンサー大木優紀さんが、40歳で感じた転機とは

多くの人が憧れる花形の職業「女子アナウンサー」。数百倍、数千倍という狭き門を突破してアナウンサーになったにもかかわらず、どうして彼女たちはその職から離れたのでしょうか。当時から今に至るまでの思いを語っていただきました。

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元 テレビ朝日 アナウンサー 大木優紀さん
42歳・東京都在住 株式会社令和トラベル 執行役員

平均年齢28歳の会社で女性最年長。4月より執行役員に就任。

40歳の転機。
今の会社の逆張りの発想に
衝撃と魅力を感じ、突き動かされました

40代になり子育てが落ち着き、この先のキャリアや生き方を考える――それは花形職業といわれている女子アナウンサーも同じ。テレビ朝日のアナウンサーとして活躍していた大木優紀さんは、40歳の誕生日を迎えたタイミングで、これからの人生をどう描いていこうかと考え始めました。

「30代までは上り坂、がむしゃらに仕事を頑張るという時期でした。40歳を迎えてみると、悪く言えばこれから下り坂というイメージでした」。というのも、かつては〝30歳定年説〟と言われていた女子アナ業界。40代でアナウンサーとして生きている未来が描けていませんでした。「40代の目標として、アナウンサーとして番組の名脇役になっている、と掲げました。簡単な目標に聞こえるかもしれませんが、40歳以降も地上波に出続けることは、チャレンジングな目標だったのです」。

新しい目標を掲げて邁進しようとしていた頃、ふと見つけたインターネットの記事が大木さんの人生を変えました。令和トラベル社長が書いた、会社設立の思いや採用募集を綴った記事でした。「2021年のコロナ禍真っ只中に、海外旅行事業を始めるという逆張りの発想に衝撃を受けました。そして私は友人から〝狂っている〟と言われるくらいの旅行好き。人生に彩りを与えてくれる旅行を仕事にする、ということがとても魅力的に感じたのです」。

入社して18年、一度も異動や転職を考えたことがなかった大木さん。それだけに、令和トラベルへ惹かれていることは、確信的に感じました。しかし衝動的になってはだめだと、採用に応募するのを1週間待ちました。それでもアナウンサーを辞めることに迷いはなかった大木さん。「18年もアナウンサーとして働いていると、ネガティブなこともたくさんありました。そんな時期を乗り越えて、やっとストレスなく仕事を楽しめる時期に突入していた時期でした。その環境を手放すことはもったいないかもしれないという思いもありました。ただ、今の環境と新しい環境への挑戦という選択肢が2つ並ぶと、迷いはありませんでした」。

令和トラベルはデジタルの力を活用しながらユーザーに旅行体験を提供するスタートアップ企業。テレビ業界とは異なる環境に、苦労も多かったそう。「独特のIT用語が分からず、都度Googleで検索していました。仕事で使うツールも使いこなせず、インターンの大学生に聞きながら仕事を進めるという日々でした」。また、仕事の決定権を持つということも初めての体験だったそう。アナウンサーはもらった原稿を読む、台本に沿って進行していくなど、どちらかというと受け身の仕事でした。「今の職場では、全く逆。『その担当は優紀さんなので、優紀さんが決めてください』と言われます。初めは責任が重くのしかかってきて、怖いなと思うこともありました。今では自分が会社を作り上げていくんだという新しい感覚で挑んでいます」。

初めの半年は初めての仕事に手こずったり、慣れない環境のため体調を崩すこともありました。そして1年が過ぎた頃には、やっとアナウンサー時代の仕事を生かせるフェーズまできました。「アナウンサーはある意味、専門職。原稿読みやMCなどは、横展開がきかない仕事だと思っていました。しかし、実際に広報・PRの仕事を進めていくと、伝える力や、言葉選びのチョイスなどはアナウンサー時代の経験が役に立っています。また、周りの空気や全体のバランスを読んで、発言していない人に話をふる、意見が偏っていたら反対の視点を入れてみる、などプロジェクトを進めていくうえで必要なスキルもありました」。いわゆるコミュニケーション能力は、アナウンサーの最大の武器なのかもしれないと話します。

今なお新卒のときのような気持ちで、やる気に満ち溢れていると話す大木さん「でも年齢は42歳。子育てもあるし、全力疾走ができないというもどかしさもあります」。

現在の転職に後悔はありません。「衣食住のライフラインとは違い、旅行は人生に必要なものではないかもしれません。でも、人生に彩りを与えてくれる素晴らしいもの。その魅力をもっと色々な人に伝えていきたい。海外旅行するなら令和トラベルのアプリということを当たり前にしていく。その役割を果たしていきたいと思っています」。

<2003年>
<2003年>
<2022年>

<2003年>
慶應大学を卒業後、テレビ朝日に入社。バラエティー番組のアシスタントMCやニュース番組のキャスターなど、多くの番組で活躍。

<2021年>
偶然見つけた令和トラベル社長のnote記事を読んで、「どうしてもこの会社で働きたい」と転職を決意。1週間後には採用に応募。

<2022年>
’22年1月令和トラベル入社。主に広報PRに従事。4月からは社内外の関係構築を担うコミュニケーション本部担当の執行役員に。

大好きな海外旅行と「NEWT(ニュート)」のアプリを皆さんに届けたい! その思いで引き続き、突っ走ります!
TikTokなどのSNS運用も大木さんの仕事。企画から動画出演などをこなします。アナウンサー時代のスキルが存分に生かされる業務の一つ。
IT企業独特の言葉や雰囲気に戸惑うこともありましたが、今では会社の中心的存在に。「先日、20歳のインターン生と一緒に韓国旅行に行きました!」
会社の制度を活用し、約1カ月子供とNYに滞在。その間オンラインで業務していました。
ブルネイへ家族旅行。旅行の様子は、YouTubeでも公開。

<編集後記>35歳転職限界説は昔の話!? キャリアアップに期限はない

40代で未経験の業界や部署に転職することは無謀と思いがち。ですが大木さんは「この会社で働きたい!」という強い思いでやり遂げました。それにしても、大木さんの何気ない一言から始まったという会社の【年間最大2カ月まで就労時間を減らせる】という制度。NYに滞在しながら仕事ができるなんて……羨ましい!(ライター 星 花絵)

撮影/BOCO 取材/星 花絵 ※情報は2023年6月号掲載時のものです。

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