11歳で映画デビュー。テクニックはそのままに24歳の初来日【王子様の推しドコロ】

vol.8 アラン・ベルさん

©Andrej Uspenski

PROFILE

Aran Bell/1998年生まれ。アメリカ・メリーランド州生まれ。4歳の頃からバレエを始め、セントラル・ペンシルベニア・ユース・バレエ団で学んだ後、父親の仕事の関係でイタリア・ナポリに。その際、週に6回ローマを訪れ、デニス・ガニオさんに師事。11歳でYAGP(ユース・アメリカ・グランプリ)最年少部門全体の最優秀舞踏賞を受賞し、16歳でアメリカの名門バレエ団、アメリカン・バレエ・シアターのスタジオカンパニーに。2016年、アメリカン・バレエ・シアターに入団。2年後には代役ながら『ロミオとジュリエット』のロミオ役で主役デビューし話題を呼び、21歳という若さでプリンシパルに昇進! 近年、若手男性プリンシパルダンサーの印象が薄い当団において、将来を担う期待の若手ダンサーとして活躍中。公式インスタグラム

あの可愛い少年がプリンシパルになって初来日

2011年に公開され、バレエダンサーを夢見る少年少女を追うドキュメンタリーという、マニアックな内容にもかかわらずヒットし、バレエファンのみならず、映画ファンなら良作と記憶している人も多い映画『ファースト・ポジション 夢に向かって踊れ!』。劇中で、イタリア在住でナポリから2時間かけてローマへレッスンに通っていた可愛らしい少年がアラン・ベルさん、当時11歳。パリ・オペラ座バレエ団のエトワールとして世界的に活躍するマチュー・ガニオさんの父で、自身も元ローラン・プティ・マルセイユ・バレエ団プリンシパルのデニス・ガニオさんに師事し、情熱的に指導するガニオさんに対し健気に頑張る姿を覚えている人もいるはず。作品の中ではYAGP(ユース・アメリカ・グランプリ。9~19歳までのあらゆる国籍の若いダンサーを対象とし、非営利で世界最大の国際バレエコンクールであり奨学金プログラム)にて最年少部門全体の最優秀舞踏賞を受賞した彼が、なんと今年の夏初来日を果たします。

Prime Videoにてレンタル・購入版配信中。©First Position Films 2011 

『ファースト・ポジション 夢に向かって踊れ!』

入賞すれば世界の名門スクールへの奨学金や、バレエ団への入学が約束される、世界最大のバレエコンクール「YAGP」。コンクールでのチャンス、たった5分に未来を賭ける6人の少年少女たちのそれまでの日々を追ったドキュメンタリー。バレエファンでなくても、厳しい境遇やレッスンにめげずに前向きに頑張る彼らの姿勢や努力に感動し勇気をもらえ、その素晴らしい踊りに圧倒されます。トロント国際映画祭をはじめとする映画祭で観客賞を多数受賞。

『ドン・キホーテ』でのバジル役

長身から繰り出す迫力ある超絶技巧は、若手の追随を許さない!

映画での11歳当時のアラン・ベルさんは、どちらかというと小柄でとにかくテクニシャン。コンクールで踊るために『ドン・キホーテ』を練習し、大人顔負けのピルエットを披露し優勝。とにかく可愛らしい印象の強かった彼も、もう24歳。身長も190㎝とずいぶんと伸び、小顔で手足も長く、王子役からコンテンポラリーまで幅広くこなすダンサーに成長しました。軸がぶれない体幹の強さで幼いころ同様、目の覚めるようなテクニックが自慢で、スピード感あふれるピルエット、伸びやかなジャンプ、そして何より若さ溢れるフレッシュな踊りで観客を魅了します。舞台のどこにいてもパッと目を引く、生まれ持っての“華”は、異例の若さでプリンシパルに昇り詰めた理由を物語っています。まだ24歳。これから役の幅を広げ、表現に深みを増していく今後が楽しみなダンサーです。

アラン・ベルの姿が見られるのは……The Artists ―バレエの輝き―

イギリスを代表するバレエ団「英国ロイヤルバレエ」、アメリカを代表するバレエ団「ニューヨーク・シティバレエ」「アメリカン・バレエ・シアター」のスターダンサーが東京に集い、贅沢なガラ公演を開催。特に、団での来日公演が少ないニューヨーク・バレエシアターとアメリカン・バレエ・シアターのダンサーが見られるのは貴重な機会なのです。芸術監督は元英国ロイヤルバレエ、ファースト・ソリストの小林ひかるさん。ロンドンとニューヨークのトップダンサーが東京で集結する公演は初の試み。ロマンチック・バレエからモダンな演目まで多彩で充実した内容は、バレエ初心者でも楽しめるプログラム構成です。アラン・ベルさんが登場するのは、プログラム1「葉は色あせて」、「眠れる森の美女」ローズ・アダジオ、プログラム2「ドン・キホーテ」、プログラム3「The Routine」、プログラム4では世界初演となるタイラー・ペック振付作品に出演予定。『The Artists―バレエの輝き―』8月11日~13日文京シビックホール 大ホールにて。詳細は公式ホームページにて。

取材・文/味澤彩子