林真理子さん「40代は、魅力ある女になれるかどうかの分かれ道です」
日本大学理事長に就任されて早1年。仕事を「楽しい」、と言い69歳の今も進化を続ける林 真理子さんは、私たちのお手本です。40から跳び、この先の人生を豊かにするために、今私たちは何をすべきかを、お話しいただきました。
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「この先どんな人生を送りたいか、40代でビジョンを描いてください」
Mariko Hayashi
’54年生まれ。コピーライターを経てエッセイスト、小説家に。『最終便に間に合えば』で第94回直木賞を受賞。NHK大河ドラマの原作など精力的に執筆活動を続け、’18年には紫綬褒章を受章。’22年7月に日本大学の理事長に就任。
◇ 40代が魅力ある女になれるかどうかの分かれ道
40代はこの先、どんな人生を送りたいか、ビジョンを立てる時期です。寂しい60代ではなく、何歳になっても働き続け、人の役に立つ人生にしたいのなら、今が準備の始めどき。転職する、勉強し直す、専業主婦なら就職するなど、動き始めましょう。知り合いの編集者は、40代で大学院に入り、今は大学の先生をしていて、70歳以降も働けると言っています。彼女の勉強熱心さは特別ですが、そんなことも不可能ではないのです。
もうひとつ、大切なのは「誘ってもらえる人」になることです。私は、コロナが収束して、方々からお誘いをいただき、毎晩会食を楽しんでいますが、みなさん「話題豊富で楽しい」と言ってくれます。でも、20代30代では誘ってもらえないこともありました。そのとき、誘われなくても寂しそうにしないと決め、読書をしたり、話題の舞台や映画を観たり、知的好奇心を大いに満たしました。一人時間を楽しめるようになって初めて、人が寄ってきてくれるようになるのです。そして、誘いを受けたときは知ったかぶりをしない、人の悪口を言わない(人と場所を選べば悪口は最高の香辛料にもなりますが)、紹介してくれた人を大事にするなど、人間関係のマナーを守ることも大事にしています。
さらに40代になったら、“人に尽くす”ことも始めましょう。私がボランティアを始めたのも40代ですが、そんなに気張らなくても、頼まれごとをしてあげるとか、子どもを預かってあげるとか、そんなことからでいいのです。誰かの役に立つ経験は、この先の人生をきっと豊かにしてくれます。
スマートなお金の使い方をできるのが本当の大人
コロナ自粛中、口座に大金が残っているのを見て驚きました。全く買物をしなかったからで、つまりコロナ前は散財していたということです。私は、綺麗をキープするために、年齢肌のくすみを払ってくれる上質なブランドの服や、美容にお金をかけています。コロナ禍後、以前の生活に戻ったら、口座残高はあっという間になくなり、足りないくらいですけれど(笑)。
自分にもお金を使いますが、人にもよく奢ります。会食代を持つこともありますし、歌舞伎や映画のチケットは2枚買って、年下の友だちを誘うようにしています。40代は、後輩にお茶をごちそうするくらいのことを始める時期。そうして、若い人と仲良くなると、自分も若返りますし、相手はしてもらったことを意外と覚えていてくれるものです。
私はお金を使う分、働かなくちゃと思います。誰しも、収入を得る手段は確保すべきです。万が一、離婚しても子どもを育てられる収入があれば、人生を自分で決めやすくなります。育児と仕事の両立は大変ですが、今は社会が応援してくれるので、働き続けてほしいです。
結婚も仕事も子育ても、おもしろがって生きましょうよ
40代は子育てと仕事で大変な時期ですよね。私自身44歳で出産してからは、毎日3時間睡眠で娘を幼稚園に送り、向かいの喫茶店で原稿を書いたり、打合わせをしたりと大忙しでした。でも、子どもを産んでよかったと思っています。
不器用なのにバザーの準備で針仕事をしたり、先輩ママにコーヒーを買いに走ったり。こんな経験、子どもがいなければできることではないですよね。そんなふうに何でもおもしろがれるのは、「運命を楽しみなさい」ということを心がけているから。結婚する・しない、産む・産まないは自由ですが、私は、家族を持つのは楽しいと思っています。
うまくしたもので50代以降、老いへの不安や怯えを感じると、反比例して子どもが成長する喜びが増していきます。夫婦関係も、喧嘩をして嫌なら別れるという選択もありですが、「別れる、別れる」とさんざん騒いだ友人は「今、幸せ」と孫の写真を送ってきます。人生の終わりの方で、努力の結果が出ているのです。最後に幸せと思える人生に向けて今を選択してほしいと願っています。
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STORY連載エッセイ「出好き、ネコ好き、私好き」をまとめた4冊目となる最終刊。2019年〜約3年分のエッセイと、日本大学理事長に就任直後のインタビュー記事(「はじめに」)を収録したマリコ流〝美女訓〟決定版。¥1,540
撮影/天日恵美子 ヘア・メーク/赤松絵利(ESPER) 取材/秋元恵美 ※情報は2023年7月号掲載時のものです。
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