吉川ひなのさん「今、なぜ母との関係を書こうと思ったのか」

“わたしはようやく、ママのことを話せる自分になれた”

VERY NaVY6月号で3児の子育てについて語ってくれた、吉川ひなのさん。6月8日に発売された『Dear ママ』では、これまで蓋をしてきた感情やインナーチャイルドと向き合った過程について綴られています。

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——過去の経験をこのタイミングで語るのはどうしてだったのでしょうか?

 

「出来事として捉えたら過去なのかも知れないけれど、その経験を思い出したり、向き合う行為自体は「今起きていること」だと思うんです。前作のエッセイを書き終えたとき、 “次はママのことを書こう”と自然に思うようになりました」。

 

——本音を話し合う機会がないまま中途半端な形で別れが来てしまったお母さまとの関係。ママへの想いを文字にすることで、この複雑な感情にはっきりとした名前がつくかもしれない。『Dear ママ』は、そんなゴールを期待してペンを取ったと拝読しました。

 

「書き始める前は、最後号泣しちゃうような感動的な本になることを想像していました。でも、何度書き直してもそうならない。わかりやすいストーリーにはならないし、本の途中では『Dearママを書くのは失敗』と書いている原稿もあるくらい。日によっても、母親への想いは変わるし、『許す・許さない』という白黒つけるような問題でもないんだな、と気づくことができました」。

 

——“ああ、よかった。うちの子たちは私のようには、誰もなっていない”という、エッセイの印象的な一文があります。吉川さんは、自らの子育ての不安とどのように向き合ってきたのでしょうか。

 

「一番上の子を妊娠したとき “私が感じた寂しい気持ちは経験させたくない”と、覚悟を決めたようなところがあります。だから子供たちにかける言葉や行動には責任を持ちたいと思っています。それゆえに、夫が子どもを叱っているときに“どうしてそんなふうに言うの!”と、子どもの前で夫を非難するような発言をしてしまったこともありました。今思えば肩に力が入っていたかな、と思うこともあります。長い時間を一緒に過ごす中で、夫は私とアプローチが少し違うけれど、子どもたち愛しているのはもちろん共通。そして、その愛が子どもたちにしっかり伝わっていることも分かった今は、夫のかける言葉に対して、私がハラハラするということもなくなりました。夫婦のバランスが見えてきたので、安心できるし気持ちがラクになりましたね」。

——家族や子育てのこと。悩みによっては相談しづらく、抱え込んでしまう人も多い気がします。吉川さんに優しく寄り添ったのは、“本”の存在でしたね。

 

「小さい頃は少女漫画が大好きで、漫画の世界に没頭することで救われたり、夢を持てたりしました。大人になってからは、何か興味を持ったり、問題意識を感じると、それに合う本を探して読んできました。その繰り返しのおかげで、絶妙なタイミングで読むべき本と出会えてきた気がします。エッセイにも書いていますが“許す、許さない”の葛藤も、一冊の本が大きな気づきをくれました。さらに個別に知りたいことに関してはセラピストや専門的な知識を持つ人に相談することもあります。そんな中で、まだ完ぺきではないけれど、自分のインナーチャイルドと向き合うきっかけを得たことは、本書にも詳しく書きました」。

——最後に。『Dear ママ』を通じて、吉川さんが伝えたいことをぜひお願いします。

 

「大人になってからの『ぶっちゃけ話』って、結構いいな、って思うんです、私。過去の自分がそうだったから思うのですが、気持ちに蓋をして、過去の傷をなかったことのように振舞うのって、やっぱりしんどいですよね。無理に話さなくてもいいけれど、誰かに聞いてもらいたくなった時、『過去のことだし』って思わないでほしいな、とすごく感じています」。

本の紹介

『Dear ママ』

実母との関係やこれまで語ってこなかった過去について自身の言葉で執筆。過去に向き合うことで生まれた、母への想いや、日々の子育てについて赤裸々に綴ったエッセイ。

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Profile

吉川ひなのさん

よしかわ ひなの。13歳で芸能界デビュー。2012年にハワイへ移住。すべての女性と地球に寄り添うナチュラルスキンケアブランド「hinalea」をプロデュース。インスタアカウントは@hinanoyoshikawa

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撮影/酒井貴生〈aosora〉 スタイリング/宮澤敬子〈WHITNEY〉 ヘア・メーク/菊地美香子〈TRON〉 取材・文/櫻井裕美 編集/羽城麻子

※写真はVERY NaVY6月号『子育て第2シーズン、どうですか? 吉川ひなのさんインタビュー』より転載。