女優・杏さん「ベビーシッターを頼むのはちょっと……と感じるときは」

──女優の杏さんが主演を務める『私たちの声』(9月1日公開)は、各国で活躍する女性監督、女優の力を結集させた映画作品。世界中の女性へのエンパワーメントにあふれる作品です。「育児はひとりでする必要はない」「人を頼って」といわれても、なかなか響かない。そんな私たちは今どうしたらいいのか? 杏さんに聞きました。

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「人に預ける」というより「一緒に育児をする」気持ちで

──映画についてのインタビューの中で「日本では、こと育児に関してや家事という部分では女性の負担や背負う部分がかなり大きいのではないのかなと思います」と仰っていました。読者の中にも実質ワンオペ状態という人が多くて、「シッターさんを頼めばいい」とか「自分の時間も大切にして」と言われても現状ではままならない。そういう状況があるように思います。

ベビーシッターに任せるというと、子どもを見てもらう間に自分が外出したり仕事に行くというイメージが強いと思うのですが、私自身は、家でひとりで子どもを見ているときも、たまにシッターさんに来てもらったりするんです。そうしたら、ちょっと育児が楽になるというか、人手が増えるので。子どもをお風呂に入れるときも2人でやった方がずっと楽です。お出かけするときも大人が私だけだと、ひとりがトイレに行きたいって言ったときに子ども3人全員を連れて行かなきゃいけないですが、もう一人いれば融通がきくとか。子どもを人に任せて外出することに抵抗がある人も、一緒に育児をするというふうに考えたらお願いしやすいかもしれません。もちろん、お金のこともあるし、シッターを頼むほどではないという人も多いと思うのですが、発想の転換をして世の中がもう少し「他人の手を頼って一緒に子育てをしてもいい」という方向になるといいと思いました。

 

 

仕事や育児を休む「罪悪感」を振り払いたい

──色々な選択肢は増えてきましたが一歩踏み出すのが難しい状況にあったり、これくらいは我慢しなきゃと思ったりする人が多いように感じます。

自分の身体のことで病院に行くという理由でも、子どもを預けることに罪悪感を覚えるとか、育児中は友人と大人だけで会うのも難しくなるとか、子どもの体調不良で仕事を休むのが申し訳ないといった話をよく聞きます。それこそ育児中に限ったことではないと思うのですが、自分の都合で休みを取ることに、どこかうしろめたさを感じてきた経験のある人は私を含めて非常に多いと思います。必要以上の罪悪感を振り払って「私ちょっと行ってくる」と言えるような気持ちの切り替えが必要ですし、周囲もサポートがしやすいような体制に少しずつ変わっていけたらいいと思っています。

 

「断ること」「自分の気持ちを伝えること」で状況は変わる

──そういった価値観の変化は育児をする中で生じたのでしょうか? それとも海外で暮らした経験が大きかったのでしょうか?

以前から、仕事で時折海外に行く機会があったことは関係しているかもしれません。イタリアでの仕事で現地のマネージャーを訪ねたとき、「昼休みに来るのはやめてください」とはっきり言われたんです。この時間に来られるのは困る、と言われたのははじめての経験だったので、そのときは驚きました。でも、よく考えてみれば、彼女は自分の時間を守る権利があるはずです。それまでの私は、予想外の時間の来客であっても、都合を合わせることが誠実な対応だと思い込んでいたんです。自分の価値観を伝え、相手の思いを知ろうとするだけでも、風穴を開けるきっかけになり、状況は大きく変わってくるのではないかと考えています。

 

杏(あん)

2005年以降パリ・コレクションなどの国際的なファッションショーで活躍し、 2006 年ニューズウィーク誌「世界が尊敬する日本人100人」に選ばれる。 2007年に女優デビューし、『名前をなくした女神』(2011年)で連続ドラマに初主演する。 NHK連続テレビ小説『ごちそうさん』(2013年)でヒロイン役を務め、近年では映画『キングダム 運命の炎』に出演。2022年には国連WFP親善大使に就任するなど、 女優業を中心にナレーターや声優など多彩な活躍を続ける。 本作が、待望の海外デビュー作品となる。

ヘア・メーク/犬木 愛〈AGE〉スタイリング/杉本学子〈WHITNEY〉

ブラウス¥29,700 パンツ¥24,200〈ともにLE PHIL〉 パンプス¥47,300〈BRENTA〉 ネックレス¥25,300〈SASKIA DIEZ〉 リング¥37,400〈GABRIELA ARTIGAS〉 ピアス¥12,000〈MOUNIR〉 (すべてLE PHIL NEWoMan 新宿店) ・お問合わせ先 LE PHIL NEWoMan 新宿店 03-6380-1960

杏さん主演の最新映画が公開!

映画『私たちの声』

 

 

9 月 1 日(金) 新宿ピカデリーほか 全国 ロードショー

WOWOW初の国際共同作品映画『私たちの声』は、各国で活躍し、高い評価を得ている女性監督と、トップ女優がともに女性問題を描く映画作品。日本からの作品『私の一週間』は唯一無二の存在感が光る女優・杏と、『そこのみにて光輝く』『きみはいい子』など作品が国内外の映画祭でも高い評価を受ける監督・呉美保による短編映画。毎日慌ただしく働きながら2 人の子どもたちを育てるシングルマザー・ユキの暮らしを描いている。

製作・企画・プロデュース:WOWOW /配給:ショウゲート ©2022 ILBE SpA. All Rights Reserved.

取材・文/髙田翔子
撮影/秋山博紀

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