バスケ日本代表ヘッドコーチ トム・ホーバス「寝る前に鏡を見て『自分の力をすべて出したか』と聞く。それに答えられないのなら引退した方がいい」

バスケットボール男子日本代表ヘッドコーチのトム・ホーバスさん。
現役時代にトヨタ自動車などでプレーしたホーバスさんは、引退後の2010年に指導者として日本に戻り、JX-ENEOSなどを指揮されました。

卓越したリーダーシップと采配が評価され、’17年には女子日本代表ヘッドコーチに就任。’21年の東京五輪ではチームを銀メダル獲得に導きました。

東京五輪後には男子代表ヘッドコーチとなり、現在は’24年のパリ五輪に向け準備を進めています。勝負の世界で生き抜いてきた名将が、自身のキャリアを振り返りつつ、「結果」を残すための組織作りを語ります(全3回の3回目)

第2回は「チームは盆栽と一緒。毎日きれいにカットしなければ、おかしくなる」

この記事は「THE WORDWAY」の提供記事です。

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言葉③寝る前に鏡を見て、「自分の力をすべて出したか」と聞く。それに答えられないのなら引退した方が良い

Q:ホーバスさんのように常にアップデートし続けるために、何かアドバイスをお願いしたいのですが。

僕は毎日、毎日、試合が終わってから、練習終わってから寝る前に鏡を見て、「今日は自分の力をすべて出したか」と聞きます。

もし答えが「はい、やりました」だったらそのまま寝て、明日もう1回トライする。でも「いや、今日は80%ぐらい出した」だったら、それは良くないじゃないですか。それを直せないのであれば、もう引退した方がいい。簡単です。

Q:違いを分けるのは、結局は日々の過ごし方だということですか?

トップレベルのアスリートは、みんな技術とか身長とか、力のある人たちばかりですよ。それがなければ、そのレベルまでいけないんです。その先は、信じてることとか、自信があるかどうか、それがなければ代表レベルは多分入れないんです。

Q:最後に、THE WORDWAYは言葉を大事にしているメディアです。ホーバスさんが、大切にしている言葉、支えとなっている言葉を教えてください。

今は、Believe。「信じてる」は口だけでは足りないですし、結構深いものです。どこまで信じられるか。(東京五輪の)女子は100%信じた。だから決勝戦、アメリカとやったじゃないですか。

「信じてる」という言葉は、自分の力も信じています。あなたの力も信じてる。チームの力も信じてる。みんな「信じてください」「Believeして」って言うじゃないですか。でも簡単じゃないんです。口だけでは足りないです。

上手くなりたい気持ちがあれば、少しずつ自信が上がり、少しずつ強くなる。でも信じてなければ、上手くなりたい気持ちもないと思いますよ。だから簡単な言葉だけど、難しい言葉、深い言葉です。

Q:日本の選手は、「自分を信じる」ことを苦手な選手が多いのかなとも感じます。指導者として、いかにそこに向き合っているのですか?

ある選手がオリンピックが終わってから、どこかのメディアに「トムが、私以上に私のことを信じてくれた」と答えているのを聞いて嬉しかったです。だから、「僕は信じてる」「あなたの力を信じてる」と。そうすることで、少しずつ選手たちの自信が上がっていくと思います。

Q:選手を信じることが、ホーバスさんの指導、組織作りの原点なのですね。

そうです。みんなで目標を決めたら、「なんでこんな練習やってるの」「このレベルじゃダメだよ」ってなるし、「だったら明日もっともっといい練習をやろう」ってね。その状態で、鏡を見たら「今日は足りなかった、明日頑張ろう」ってなるじゃないですか。全部繋がってますよ。

米ペンシルベニア州立大卒業後、ポルトガルリーグのスポルティングを経て’90年にトヨタ自動車に入団。’94年にNBAのアトランタ・ホークス入り。その後トヨタ自動車や東芝にも所属し、2010年にJX-ENEOSのアシスタントコーチに就任。女子日本代表のアシスタントコーチなども経験し、’17年に女子代表ヘッドコーチに就任。東京五輪で銀メダルを獲得し、’21年9月に男子代表監督に就任。身長203cm。

記事提供:THE WORDWAY

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