【漢字】「硯=しじみ」は間違い!読めそうで実は読めない漢字3選|CLASSY.
CLASSY.ONLINEの漢字記事では、数回にわたり「画数はそれほど多くなく、見た目は簡単そうなのに読めない漢字」を集めています。今回も3つ紹介していきます。
1.「硯」
最初は、「硯」(画数12)です。何て読むでしょうか? 問題文は「ご依頼の硯をこちらで用意いたしました」。
どうでしょう、あえてヒントにならない問題文にしてみましたが、もしかして、「しじみ」と読んだ人はいませんか? 同じ「見」の要素を持ちますので、よく似ていますが、「しじみ」は「蜆」です。「蜆」も、この「硯」も常用漢字外の漢字です。こちらは、「すずり」と読みます。「墨(すみ)を水でする」ために使う書道道具の一つです。この「硯」は訓読みでは「すずり」と読みますが、音読みでは「ケン」と読みます。
「硯海(ケンカイ)」「硯池(ケンチ)」と言えば、「硯」の「墨汁」をためておく部分を指します。
2.「俤」
次は、「俤」(画数9)です。何て読むでしょうか? 問題文は「故郷の山は、開発されて、もはや昔の俤がなくなってしまった」。
正解は「おもかげ」でした。この「俤」も常用漢字外ですが、「国字」と言って日本で作られた漢字です。「国字」には訓読みだけで、音読みがないのが普通です(「働」など若干の例外はあります)。「おも」は「人の顔」、「かげ」には「姿」の意味がありますので、「人」や「風景」などの「記憶に残っている姿」を表すのは「おもかげ」です。それにしても、やはり兄弟、「弟」には「兄」の「おもかげ」が感じられるのですね。
なお、一般的な漢字表記としては、常用漢字外の「俤」よりも、いずれも常用漢字を使った「面影」を使うことのほうが多いと思われます。
3.「邪」
最後は、今回唯一の常用漢字内となる「邪」(画数8)です。ただし、常用漢字表では、音読み「ジャ」しか示されていません。では訓読みは? 問題文は「一時の誘惑に負けて、邪な思いを抱いてしまった」。
正解は「よこしま」でした。漢字「邪」を使った熟語には、「邪魔」「邪推」「邪悪」など、イメージの良くないものが並びます。「邪」は「正」の反対語で、「正しくない・害を及ぼすもの」という意味があるからです。「風邪」も、やはり「身体に悪い影響を及ぼす風(邪気)」ですね。
この「よこしま」という言葉は、発音だけだと、「横縞(よこじま)」と間違えてしまいそうですが、「よこしま」の「よこ」は、本来は「横」です。この「横」には「見当はずれで無関係な(道理に合わない)方向や場所」というマイナスの意味があります。これに付いた「しま」は、「逆さま」の「さま」と同じように「方向」を表すと考えられますから、「よこしま」で、「心が道にはずれた悪い方向を向いている」という意味になります。この「よこしま」という語がもともとあって、共通の意味を持つ漢字の「邪」にあてて読むようになったわけですね。意外とよく使う言葉なので、覚えておいてください。
9月となって夏から秋へと季節が動き、それとともに「台風」に関するニュースが多くなってきました。この「台風」、語源的には英語の「typhoon(タイフーン)」と関係があることはよく知られていますが、この言葉が日本で使われ始めた明治時代は、実は「颱風」の表記でした。これが、「常用漢字」の前身である「当用漢字」が定められた際に、ここに入らなかった「颱」の代わりに「台」が代用されて、「台風」の表記が一般的になり、現在に至ります。では、今回はこのへんで。
《参考文献》
「広辞苑 第六版」(岩波書店)/「新明解国語辞典 第八版」(三省堂)/「明鏡国語辞典 第三版」(大修館書店)/「古語林」(大修館書店)/「難読漢字辞典」(三省堂)/「1秒で読む漢字」(青春出版社)
文/田舎教師 編集/菅谷文人(CLASSY.ONLINE編集室)