フェミニズムの専門家が「アラサー女性が年を取りたくないと思うのは、ある意味当然」と語る理由
ふとしたときに自分の年齢が気になったり、年を取ることに対してなんとなく抵抗を感じてしまうのはどうして?私たちが「年を取りたくない」と思ってしまう理由、加齢に対するネガティブな気持ちの扱い方について考えてみました。
フェミニズムと心理学の専門家にもお話を聞きました
ほとんどの人が「年を取りたくない」と思うのには大きな理由があるはず。専門家の先生お二人にお話を伺いました。
アラサー女性が「年を取りたくない」と思うのはある意味当然です
現代の日本では「協調性」「可愛らしさ」「美しさ」「受容性の高さ」といった「性別役割」が女性に求められていますが、これらは若い女性のほうが満たしやすいため、「年を取ると女としての魅力が下がる」という構造が生じてしまっています。
さらにアラサー女性が苦しさを感じるのは「若さ」そのものよりも、若さに伴う「自由」を失うからではないでしょうか。20代は女性が人生で一番自由に生きられる時期。恋愛も遊びも、経済面でも誰からも制限されることがありません。ところが30歳前後で「結婚」を考えたとき、結婚後の子育てや家事の負担はまだ女性が担う部分が大きく、もし結婚しなければ先の見えない社会で生涯一人で生き抜くことに。結婚するリスク、結婚しないリスクどちらも大きいという問題に直面し、苦しい選択を迫られます。自由な20代からアラサーになって「年を取りたくない」と思うのはある意味、当然ですよね。さらに女性は結婚相手によって仕事が続けられるかどうかも変わってくるので結婚は大きな賭けになります。結婚、出産にまつわるどの選択も結構キツい。だから「年を取りたくない」と思ってしまうのではないでしょうか。
一方で、女性に限らず人間は誰でも何歳であっても「年を取るのはイヤだ」と思うという研究結果も。人は年を取る過程でそれまで果たしてきた役割や社会的地位を手放して次のステージに進まなければなりません。これを「役割移行」と言いますが、自分の新しいアイデンティティを確立し、新たに役割を取得するのは心理的負荷が大きいもの。30歳という節目は女性の平均初婚年齢である29歳にも近く、「今は役割移行の時期なのだ」と客観的、冷静に捉えてみてはどうでしょうか。
30歳の誕生日や30代の毎年の誕生日に「次の10年、自分はどんな社会的役割を果たしたいのか」「プライベートの人間関係はこのままでいいのか」と、自分と向き合い切り替える機会にしてみては?年を取り、何年も仕事の経験を積んできたからこそできる役割もあります。そこに自分なりの「女らしさ」をうまく組合せることができたら、すごくいい社会的地位を確保していけるのでは。みなさんには、ぜひともそれをやってほしいです。「仕事もできて、さまざまな魅力もある女性」という役割モデルをみなさんが作っていくことで、後に続く世代も生きやすくなるはずです。
\フェミニズムの観点からお話を伺いました/
教えてくれたのは…高橋 幸さん(石巻専修大学 人間学部・准教授)
19世紀から現代までの社会思想・社会学理論を専門とし、ジェンダーの視点から社会学へアプローチした研究を発表。ポストフェミニズム、ミスコン研究なども行っている。
イラスト/naohiga 取材/加藤みれい 再構成/Bravoworks.Inc