【申真衣さん】私が入る保険、入らない保険──「もしもの時の備え方」
撮影/倉本侑磨<Pygmy Company>
子育てを通して今まで以上にお金の大事さを実感するようになったけど、お金の使い方や貯め方なんて学校では教えてくれなかったし、みんなはどうしているの……?そんなママたちの悩みにこたえるべく、元外資系金融会社勤務、現在は社長としても活躍されているVERYモデル・申真衣(しんまい)さんに、毎月読者から寄せられたお金に関する質問に答えてもらうコラム連載。第25回は「保険」がテーマです。(過去の連載はこちらから)
【第25回】今月の質問
もうすぐ出産のタイミングで医療保険や生命保険の見直しをしたいのですが、どんな保険が必要か、いまいち判断がつきません
高い生命保険より安心できる?「住宅購入時の団信」
もしものときの生活費の多くを保険でまかなおうとするのはあまり得策ではないと思います。個人的に、保険が必要な人は「シングルインカムで貯蓄がない人」だと考えています。配偶者に何かあったら収入がゼロになるので、子どもと自分の生活を守るために、と保険を考える人も多いでしょう。ただ、保険金だけで生活できる金額を設定すると、毎月の掛け金がかなり高くなり、家計の負担が重くならないでしょうか? 一番のリスクヘッジは共働きすることですが、事情により働くのが難しい場合もありますよね。
「何となく不安」「もしもの時に備えたい」という気持ちで高額の生命保険に加入するくらいなら、「何があれば安心できるか」を考えてみるのはどうでしょうか? 例えば持ち家があって、さらに住宅ローンの支払いがないとしたら、少しは心が落ち着きませんか? 住宅購入の際に加入を勧められる団体信用生命保険(団信)に入ると、契約者に万が一のことがあった場合、住宅ローンがゼロになります。生命保険や医療保険には原則入らない派の我が家もこの保険には加入しました。保険には必ず入らなくては、と考える前に、必要なお金がいくらなのか今一度考えてみると「住まいさえあれば、パート収入だけでも生活費はなんとかやりくりできそう」などと算段がつくかもしれません。
「個人年金」「学資保険」は必要?
「老後2000万円問題」などが不安で個人年金に入ったという話もときどき聞きます。ただ、大前提として「まずは自分で貯める」ことが先決。運用と保険が一緒になっている商品は手数料が高いので、できたら分けたほうがいいです。集めたお金の運用方法は、保険会社も証券会社も変わりません。だったらiDeCoやNISAなど、手数料が安い、掛け金が所得控除される投資を考えてみるのはいかがでしょうか。もしもの備えよりも、着実に貯まる方法を立ち止まって考えることをおすすめします。
教育資金も同様です。「小学校から大学まで私立に通わせる」など、必要な金額がある程度見えているのであれば、手数料がなるべくかからない方法でコツコツ貯められるのがベスト。「学資保険」など教育資金目的の保険を検討するタイミングは、出産直後が多いかもしれません。でも本当にお金がかかるのは中学生以降。学費などの負担が増えた後も月々の支払いを続けられる余力があるかどうか、想像してみてください。人生100年時代と言われる今、万が一の備えにばかり目が行ってしまい、長く生きる想定をしていないほうが危険です。今の収入から貯蓄し、長期目線で運用していくといいと思います。
撮影/渡辺謙太郎
出産の時は迷わず「大部屋」を選択しました
医療費をカバーするための保険に関しても、日本には現在「高額療養費制度」※があるので、本当に必要な人は限られているのではないかと感じます。医療保険のCMでよく聞く「差額ベッド代」は、基本料金である相部屋と個室代との差額を補填するもの。どうしても個室がいいという人以外は、相部屋を選べばそもそもの入院費用は抑えられます。
私は出産時の入院では相部屋を選択しました。追加料金を払って病院の個室で過ごすよりも、そのお金でいつか素敵なホテルに泊まるほうがいいなと思いました。私自身は大部屋でも十分だったなと感じています。「やっぱり個室でゆっくり過ごしたい」「差額は産後の楽しみにとっておきたい」など、希望に合わせて妊娠前にシミュレーションしておくといいかもしれません。
保険だけでなく、金融に関する知識を身につけるのはなかなか難しいですよね。気軽に参加できる無料の講座などもたくさんありますが、覚えておいてほしいのは、お金のことをタダで親切に教えてくれる専門家=何か契約を結んでほしいと思っているかもしれないということ。話を聞いたうえで本当に必要なものを取捨選択できるように、不安だったらどんな細かいことでも質問する、場合によっては録音させてもらって家族に相談するのも一つの方法だと思います。「もしもの時の備え」と言いつつ、保険も商品です。高い買い物ですから、納得いくまで説明を聞いてから判断したいですね。
※同月内にかかった医療費の自己負担額が高額になった場合、一定の金額(自己負担限度額)を超えた分が、あとで払い戻される制度のこと(払い戻しには一定の条件があります)。
撮影/渡辺謙太郎
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取材・文/樋口可奈子