真木よう子さん「正義の味方っぽい役には飽きちゃって…」年齢を重ねて見つけた“メリハリ上手”な生き方
10月6日より公開中の映画『アンダーカレント』にて主演を務める真木よう子さん。凛とした美しさと確かな演技力で、さまざまな映画に圧倒的なパワーを与えてきた真木さんが、40代を迎えた今、見ている景色とは? 俳優業に向き合うなかで変化したこと、幸せのために必要なことーー今の心境を、ざっくばらんに話してもらいました。
PROFILE
真木よう子(まきようこ)●1982年生まれ、千葉県出身。『ベロニカは死ぬことにした』(06)で映画初主演。2013年度の日本アカデミー賞では『さよなら渓谷』(13)の最優秀主演女優賞、『そして父になる』(13)の最優秀助演女優賞でダブル受賞を果たす。近年の主な出演作は『孤狼の血』(18)、『ある男』(22)『映画 ネメシス 黄金螺旋の謎』(23)など。
“真木よう子のパブリックイメージ”を壊したかった
―20代の頃から数々の作品で主演を務めてきた真木さん。当時と今、女優として長いキャリアを積んだことで仕事への向き合い方は変わりましたか?
いっそう役に寄り添うようになったのはありますね。人物像やそのキャラクターが生きる背景に思いを馳せるようになりました。あとは言い方を間違えるとちょっと危ないんですけど……そんなに力を入れなくていいかなってところは、うまく力を抜けるようになりました。お芝居って必要のない力を入れすぎるとあまりいい結果が出せなかったりするもの。そういうことがだんだんわかってきたというか、抜くところは抜いて、メリハリをつけるのが上手になりましたね。
―それらの変化には、何かきっかけがあったんですか?
経験から徐々に変わっていきました。でもそういうメリハリがわからないなら、それはそれでいいと思っていて。私って結構チャレンジするのが好きなんです。20代は刑事役のような正義の味方みたいな役が多かったんですけど、でもちょっともう…それも少し飽きてきたというか(笑)。30代の半ばくらいで自分のイメージと違ったり、今までやったことがないけれど演技の幅が広がるような役もやってみたくなったんです。だって実際とは違うんですから。本当の“素の真木よう子”は、正義の味方とも全然キャラが違うんです。もちろん、困ってる人をほっとけない自分もいるんですけど…今までの“真木よう子のパブリックイメージ”みたいなものをブチ壊していきたかったんですよね。過去のイメージだったり、自分の成功パターンみたいなものに固執しちゃうこともあるかもしれないけど、あえてそれを壊していきたいっていうのは、チャレンジ精神からです。いろんなことにチャレンジしたくて、面白いストーリーの作品や個性的で笑える役にも、積極的に取り組むようになったんです。
やりたいことをするために“メリハリ”は欠かせない要素
―映像のお仕事ってなかなかハードだと思うんですが、体力面や精神面で、真木さんなりに気をつけていることはありますか?
先ほどの「いい感じに力が抜けるようになってきた」っていう話にもつながるんですが、40代になると体力も自ずとなくなってくるので……。やらなきゃいけないことの優先順位をしっかり決めて、それ以外のことに一切体力を使わないようにするっていう工夫をしていますね。ここでもメリハリが大事だなって。
―例えばどんなことをしなくなりましたか?
それがですね…。オフでは本当にな〜んにもしないんですよ! 私って(笑)。仕事の優先順位が高い時は、本当にそればっかり、って感じです。
20代は何度転んだっていい。それが成長につながるから。
―逆に、今までやってしまっていたけれど、しなくてもよかったなと思うことはありますか?
自分の中で役や演じ方を凝り固めてしまうことですね。「きっとこんな感じだろう」と、自分で勝手に役のイメージを作り上げてから現場に入ることが多くて。でもお芝居って相手や現場ありきのものなので、いざ演じてみると「あれあれあれ…?」って違和感が出てくることがあるんです。監督さんや他の役者さん、スタッフさんや雰囲気によっても現場ってどうなるかはわからないもの。だから最近はとりあえずセリフだけはしっかり覚えつつ、いい意味で自分にちょっと余白というか、自由なところを作ってガチガチに固めないようになりました。
―自分の芯があって強いイメージのある真木さんですが、不安になったり、一喜一憂することはありますか?
今でも全然ありますし、若い時はもっとよくありました。でも悩んでも一喜一憂してもいいんじゃないですか? 不安になっても、そこから自分が納得できるところまで持っていけばいい。それに20代は何度転んだっていいし、間違った方向に行っても全然構わないと思う。何度転んだって、そこから成長につながるんだから。
人生は計画を立てても思い通りには進まないから…「やりたいように生きて」
―では、20代の頃に自分に向けてメッセージを贈るとしたら、今なんと言いたいですか?
私、20代の頃って女優やめたいと思ってました(笑)。「(この仕事)もういいかな!」って思ったこともあります。私はお芝居をしたいっていうところからこの業界に入っていて、別に有名になりたいわけではなかったんです。だから妙に自分が注目され出した時は、嫌で嫌で…。でも結局、働かなくちゃいけない。生活がありますからね。仕事ってそういうものだと思うんです。だから今なら「やりたいように生きろ。その時にやりたいことをやれ」って言いたいです。人生計画なんてね、なかなかうまく行かないし、未来のことを考えても無駄だから。「ちょっと行き当たりばったりくらいでいいから、やりたいことにチャレンジしろ!」と言いたいです。
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仕事への向き合い方から人生観まで、飾らない言葉でざっくばらんに話してくれた真木さん。明日公開のインタビュー後編では、公開中の映画『アンダーカレント』の見どころについて迫ります。お楽しみに!
映画『アンダーカレント』
10月6日より全国公開中
主演・真木よう子×監督・今泉力哉×音楽・細野晴臣がタッグを組み、伝説的ロングセラー漫画を超豪華キャストで完全映画化! 家業の銭湯を継いだかなえ。夫が失踪し、謎の男・堀が現れ、怪しげな探偵・山崎と出会う。ある事件をきっかけに浮かび上がるそれぞれの想いとは?
出演/真木よう子、井浦新、リリー・フランキー、永山瑛太、江口のりこ、中村久美、康すおん、内田理央ほか。
監督/今泉力哉
音楽/細野晴臣
原作/豊田徹也 「アンダーカレント」 講談社 「アフタヌーンKC」刊
公式サイト:undercurrent-movie.com
【衣装詳細】
ワンピース¥75,900(AKANE UTSUNOMIYA tel.03-3410-3599)右イヤーカフ¥143,000右イヤーカフパーツ¥35,200左イヤーカフ¥77,000左イヤーカフパーツ①¥55,000左イヤーカフパーツ②¥49,500(すべてoeau/晴海 ショールーム tel.03-6433-5395)
撮影/杉本大希 ヘアメーク/Miyuki Ishikawa(B.I.G.S.) スタイリング/藤井希恵(THYMON Inc.) 取材・文/佐藤かな子 構成/宮島彰子(CLASSY.ONLINE編集室)