“向かい合う”のではなく、夫婦でともに“前を見る”|「マディソンブルー」中山まりこさん、地主晋さんインタビュー(後編)
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共通の話題が「仕事と子ども」から、また「仕事」へ。人手も増え、別々の業務を担う今でも、誰よりも話をしているのがご夫婦と言います。筆者が、思わず仲がいいですねと声をかけると、
「よくいわれるんですけど、仲いいって何だろうって。私は、イラッとしたらイラッとするよって言っているんですよ。地主さんはやさしいから言わないんですけど(笑)。ちっちゃい男なら、もう離婚だって思うかもしれないですね」と中山さんが言えば「何を言われてもあまりに気にならないんですよ。話聞いてるの? って言われるんですけど」と地主さんが返して笑い合う二人は、まさに名コンビ。そこには、子育てという共通の課題をともに乗り越えてきたという“信頼”が確実にありました。
「40代って男からすれば、責任がある割には責任を持たせてもらえなくて、他人のせいにしやすい世代なんです。自分もそうなっていたかもしれないけれど、子育てと言う共通のミッションに集中していたのがよかったのかもしれませんね。子どもがいたから自分のことばかりでなく、うまくスルーしていけたのだと思います」と、本当に男ってダメだな、もっと男も進化しないと! と嘆く地主さんは、間違いなくいい夫で、いいパパでもあったはず。それでも、と中山さんが言葉を繋ぎます。
「結婚したときにすでに子どもがいましたが、子どもがいてもいなくても、夫婦ってお互い前を向いて、近い将来をどうするかというのにフォーカスするとうまくいくんだと思うんです。向き合おうとするとどこか気に食わないという点が出てきますけど、見なくちゃいけないのは前。夫婦がすべてではなく、そこには社会があり、その社会の一部でもありますから。そして、自分自身の大事なものを持つのも必要なのかもしれませんね。目標というか、夢というか。それも、理解してもらわなくていいので、パートナーには『こんな夢を持っている』ことを一言伝えて、ただ隣にいてくれたらいいんじゃないって思います」と話すと、地主さんも頷きます。
そんな、お二人にとって「第二の子ども」ともいえるブランド、マディソンブルーは今年10周年。中山さんご本人も60歳の節目を迎えます。
「実は、ブランドを始めた時は、知ってくれる人だけ知ってもらえばいいと思っていたんです。路面店も最初はやる気がなかったほどで。でも、同世代が多かったお客様の層も今はどんどん広がり、30代、40代の方にも手に取っていただくようになって。意識はしていなかったんですけれど、自然とブランドとして新陳代謝をしているのに驚きました。他ブランドとのコラボをやらせていただいたり、特にこの3年はコロナ禍で服を作りたくても作れない苦しい時期でもありましたが、いろんな方と出会ううちに外からの刺激をもらっていたんだなと感じます。そうすると、新しいお客様にも出会いたいって思うようになったんです。フィロソフィーは変えず、もっと自分が自由になってお客様に伝えていきたいという、10年前とは違うそんな気持ちの変化に気づきました」と中山さん。
そして、もうひとつ大きな出来事が。2年前にお孫さんが生まれて、それからは夫婦の会話に「孫」が追加されたそう。孫にもまた、“いろんなもの”をもらっていると話します。
「生きるエネルギーが出てきて、今もう一度頑張ろうという気持ちになっています。コロナがあって大変ではありましたけれど、孫からもらったパワーと、お客様や作り手との新しい出会いから生まれるもの。次の10年はどうなっていくのかなって」
そんなふうに思いを巡らす中山さんに、これまでとは違うペースでもっと長距離的にいければいいと、すぐ隣から穏やかな声が。
一方で、かわいいお孫さんの話になると、相好を崩してすっかりおじいちゃんの顔になる地主さんの隣には、少し呆れるような、そして昔を懐かしむような笑顔が。
ブランドともに全力疾走してきたこの10年。でもそれは、それ以前から続く日々の道程であり、ともに人生を切り拓いてきた夫婦の歴史の一端にすぎません。次の10年、また新しいなにかを見つけるときもお二人は一緒に笑いあっているはずです。
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