思春期の娘たちにメロメロなパパって大丈夫?専門家に聞きました

夫たちの「娘にメロメロ症候群」に注意!こんなに強い娘への愛、大丈夫でしょうか?専門家の先生にお聞きしました。

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教えてくれた先生は…

<右>臨床心理士 杉野珠理先生
臨床心理士、公認心理師、大学兼任講師。企業でのカウンセリング、親御さん向けの子育てセミナー、10代子どもたちの心理学講座の講師を務める。一男一女の母。夫は左の荒田さん。

<左>精神科医 荒田智史先生
現在は医療機関の精神科・心療内科で診療を行う。さらに就学前相談や思春期相談も受け、多くの親子と日々向き合う。杉野さんとの夫婦間同盟によって、2人の子育て中。

思春期の娘への愛には2種類があります

Q.夫たちの「娘にメロメロ」をどう思いますか?

荒田
娘と仲がいいということをお父さんたちは取り違えているかもしれませんね。“なんでも買ってあげる”とは手懐けているのと一緒。子どもとの時間が母親より少ないからこそ、父親は金銭で愛情を示すことで娘に承認されようと頑張っているのかもしれません。さらに注意が必要なのは抱っこやお風呂などのスキンシップです。密な身体的接触は6歳まで。それ以降、続けることは性的に問題です。

杉野
心理学では、思春期に父親と距離が取れていない場合、特に娘は自我が削れていくと言われています。父親は小学校入学前に、娘の成長の見通しを考えたうえで距離を保ち接することが重要になってきます。

荒田
うちの娘も6歳ですが、洗濯物の生乾きを「これパパのニオイ?」って聞いてきて(笑)。ショックに思いつつ、父親のニオイに反応するのは生物学的にも正しく、心理的自立として大切なことなんだと自分自身に言い聞かせています。お父さんは娘から嫌われる覚悟が必要なんですよね。

Q.「母の息子愛」と「父の娘愛」は何が違う?

荒田 
「父の娘愛」のほうが近親相姦のタブーを連想させ、より気持ち悪がられます。

杉野 
あと息子よりも娘のほうが家族関係に敏感で、巻き込まれやすい。そのため、溺愛されると葛藤が起こり、どんな時でも自分は大丈夫と思える自己肯定感が損われることが研究で分かっています。さらに、自律性や主体性が弱まるとも研究で示されています。

Q.きょうだいがいる場合と一人っ子の場合の違いは?

荒田 
一人っ子は特に関係がありますね。子どもへの“してあげたい度”が強くなって、お世話も増えますし、それを子どもへの愛の形として捉えている方が多いと思います。

杉野 
きょうだいの性別が異なる場合、父親の愛は無意識に娘のほうへ偏りがち。妻から見て違いは明らかでも夫自身に自覚がない。

荒田 
そうですね。私も娘だけに声色が違うと妻から言われて気づきました(笑)。

Q.私たちはどのようにすればいい?

荒田 
まずは夫婦関係を見直すことが大切。妻は夫の娘への行動に「それはやりすぎだよ」と素直に伝えられるようにならなければ。

杉野 
“夫と娘。そして蚊帳の外の妻”という家族の形では、娘に対する夫の行動を、妻は冷ややかに見てしまう。夫婦間同盟ができていない、つまり親がチームとして子どもと向き合えていないということになります。

荒田 
夫婦で話し合った後、妻は夫に娘との距離を取るように伝えましょう。よく診療で「温かい無関心」が大切だと伝えています。特に女の子のほうが家族と密になりやすいため、過剰なお世話より温かく見守る子育てに切り替えていくんです。

杉野 
私たちも何かあると夜通しで話し合ってるよね?

荒田 
そ、そうだよね…(笑)。

撮影/沼尾翔平 取材/小出真梨子 ※情報は2024年5月号掲載時のものです。

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