【古田新太さん(58)の俳優哲学】監督の注文にはとにかく応える、俳優として「できません」なんて恥ずかしくて言えない

幅広い表現力と唯一無二の存在感で“怪優”とも称される古田新太さん。不敵な風貌と佇まいでドラマや映画などで活躍している58歳は、実は、歌に踊りにアクションや笑いも満載のエンターテインメント作品で大人気の劇団☆新感線の看板俳優であり、様々な演出家たちからも厚い信頼を得ています。今年7月からは、生田斗真さん、中村倫也さんを主軸に迎えた劇団公演『バサラオ』に出演。その見どころや自身の俳優哲学、今後の展望について、じっくりと伺いました。

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家族に対する役目は全て終わったと話す古田新太さん(58)が今、役者としてやりたいこととは

小学生の頃から舞台俳優になりたかった

古田さんが俳優の道を志したのは、まだ小学生の頃。学校行事でミュージカルを観劇し、「役者になれば、なんにでもなれるな」と思ったことがきっかけだったそうです。

「“舞台俳優になろう”“ミュージカルがやりたい”と思ったけど、中学には演劇部がなかった。なので運動部に入って、バンドを組んだんです。で、高校に入って演劇部、バンドもやって、アクションもやりたかったから格闘技もやって。ミュージカルをやるのに必要だと思ってたから、クラシックバレエとタップダンスも習ってました。俳優=なんにでもなれる=なんでもできないとダメだろうなと思っていたし、とりあえず歌と楽器とアクションとダンスをやっておけば、あとは作品づくりのノウハウを覚えるだけでいい。“寿司職人になるためには、中学の頃から握ってなきゃダメだ”っていうのと一緒なのかな。自分でやれるだけのことは準備しておかないと」

1984年に大阪芸術大学舞台芸術学科ミュージカルコースに入学した古田さんは(のちに除籍)、当初、別の劇団に所属していたものの、大学の先輩の誘いで劇団☆新感線の公演に出演したのを機に、いつの間にか同劇団の劇団員に。活躍の場もラジオ、外部の舞台公演、テレビのバラエティ番組、ドラマ、映画……と広がっていきました。

「オイラは“便利”な俳優なんだと思います。歌えます、踊れます、アクションできます、楽器弾けますっていうことで、基本的に『これはできません』というNGがない。『できません』=『自分には引き出しがありません』と言っているようなもので、俳優としてそんな恥ずかしい真似はしちゃダメだと思っているので。『今回の作品のために、3か月前からトレーニングを始めました』とか言う俳優もいるけど、アクションだって普段からある程度準備しておけば、監督に言われた時にすぐやれるはずなんです。演出家や監督の注文にはとにかくお応えするというのが、オイラのモットー。そうすれば早く帰れるから(笑)」

俳優は、注文にお応えできれば早く帰れる仕事

この「早く帰れる」というのが、古田さんにとってはとても重要なことだといいます。

「だって、早く終わって飲みに行きたいじゃないですか。というか、誰だって早く帰れるに越したことはないでしょ? オイラが“俳優って、注文にお応えできれば早く帰れる仕事なんだな”と気が付いたのは、20代後半ごろかな。だから余計なことを考えずに、台本に書かれていること、監督や演出家に求められたことを、四の五の言わずにやる。“どう表現すべきか”なんて考えたところで、お客さんは俳優が考えることよりもずっと上を行ってますから。要は“そう見えればいい”わけで、俳優は準備だけはしておいて、書かれていること、言われたことをしっかりやればいい。オイラはそう思ってます」

そんな古田さんは、劇団☆新感線に参加して、今年でちょうど40年。いのうえひでのりさんが率いる関西の小劇団を、大劇場を連日満員にする人気劇団へとのし上げた立役者は、劇団の魅力をこう語ります。

「いのうえさんが演出する劇団☆新感線の世界は、『少年ジャンプ』みたいな世界なんです。敵と味方がいる漫画みたいな世界。『いのうえ歌舞伎』(神話や史実をモチーフにしたケレン味ある時代活劇シリーズ)の台本は、座付き作家の中島かずきさんが書いているんですけど、演出するのがいのうえさんだから、“原作は武論尊だけど、作画は赤塚不二夫”みたいな感じで、結果的に少年漫画になっちゃう(笑)。今回の『バサラオ』にしても、中島さんは『太平記』みたいな話を書いたつもりなんだろうけど、いのうえさんがド派手な演出をするから、どうしたって大河ドラマにはならない。我を通そうとする奴らが裏切り裏切られるっていう、わりとシリアスな展開なのに、登場人物みんなが結構間が抜けていたりするから、悪を描きながらもどこかコミカルさがついてまわる。そこが新感線らしさかなと思いますね」

信頼する生田斗真さん&中村倫也さんとの共演

今回『バサラオ』で主演を務めるのは、劇団☆新感線へはこれが5度目の出演となる生田斗真さん。幕府と帝が相争う時代を舞台に、ヒノモトと呼ばれる島国で美貌を武器に天下取りを目論む男を演じます。その参謀となる謎めいた幕府の元密偵を演じるのは、中村倫也さんです。

「10代の頃からよく知っている、非常に信頼している2人です。斗真も倫也も、ガキの頃からエンターテイメントの世界でトレーニングを積んできただけあって、演出家に無茶な注文を出されても文句を言わないんです。できようが、できまいが、言われたことを一応1回やってみるところが素晴らしい。しかも、若い頃から上品でクレバーだった2人は、より場の空気を読むのが早くなっていて、今は全体をスムーズに進行させることまで考えられるようになっている。頼もしいし、ありがたいです。昔はこっちが、頑張れ!ってケツ叩いてたけど、今回は2人に、オイラの手を引っ張ってもらおうかな(笑)」

公開情報

2024年 劇団☆新感線44周年興行・夏秋公演

いのうえ歌舞伎『バサラオ』

幕府と帝が対立する島国ヒノモトの“狂い桜”の下で、手を結んだヒュウガとカイリ。ヒュウガの美貌を武器に、二人は天下を取ろうと目論み……。

作:中島かずき
演出:いのうえひでのり
出演:生田斗真、中村倫也/西野七瀬、粟根まこと/りょう/古田新太 ほか

7月7日~8月2日:福岡・博多座
8月12日~9月26日:東京・明治座
10月5日~17日:大阪・フェスティバルホール

http://www.vi-shinkansen.co.jp/basarao/

【プロフィール】

ふるたあらた/1965年、兵庫県出身。大阪芸術大学舞台芸術学科在学中の1984年より劇団☆新感線公演に出演。いつの間にか劇団員、しかも看板俳優となる一方、関西を中心に深夜のバラエティ番組やラジオ番組でも人気を博す。外部の舞台公演や、映画、ドラマなどでも活躍し、近年では2022年に『空白』で日本映画批評家大賞およびヨコハマ映画祭の主演男優賞、2024年に松尾芸能賞優秀賞を受賞。ドラマ『鬼平犯科帳 血頭の丹兵衛』が2024年7月6日に時代劇専門チャンネル他で配信される。

撮影/加治屋圭斗 ヘア・メーク/田中菜月 スタイリスト/渡邉圭祐 取材・文/岡﨑 香 衣裳協力/カーディガン¥28,600、パンツ¥22,000/共にパゴン(問パゴン本店☎ 075-322-2391)

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