【JJドラマ部】最後まで観たい2024年秋ドラマBEST5【ネタバレあり】
『ライオンの隠れ家』(TBS)公式ホームページより
2024年もあとわずか。秋ドラマはいよいよ佳境に入ってきましたが、ドラマオタクのコラムニスト小林久乃と元JJ編集長イマイズミの2人が「このドラマは最後まで観たい!」と太鼓判を押した作品をそれぞれ5本ピックアップしました。
【コラムニスト小林久乃が選んだ5本】
①ライオンの隠れ家(金曜22時/TBS系)
②わたしの宝物(木曜22時/フジテレビ系)
③モンスター(月曜22時/カンテレ・フジテレビ系)
④無能の鷹(金曜23時15分/テレビ朝日系)
⑤3000万(土曜21時25分/NHK総合)
【元JJ編集長イマイズミが選んだ5本】
①3000万
②海に眠るダイヤモンド(日曜21時/TBS系)
③ライオンの隠れ家
④無能の鷹
⑤わたしの宝物
BEST5中、4本も同じ作品をセレクト!
元JJ編集長イマイズミ(以下、イマ):さて、2024年秋ドラマの中で最後まで観たい作品をそれぞれ5本ずつピックアップしましたが…、珍しくかぶりまくりですね!
コラムニスト小林久乃(以下、小林):たしかに! 違うのは『モンスター』と『海に眠るダイヤモンド』だけですね。
イマ:今クールで40本以上ある中から選んだんですが、全部で6本しかなかったということは…。
小林:既視感のある作品や、深夜ドラマは似たようなジャンルが多かったので、数の割には選べるバリエーションが少なかったのかも。
イマ:そんな中で小林さんが1位に選んだのは『ライオンの隠れ家』ですね。私も3位にあげましたが、ヒューマンドラマにちょっとだけミステリーの味付けがあるくらいだと思ってたら、意外にミステリー要素が強めでしたね。
小林:「毎週続きが気になる」という連続ドラマらしい引っ張り方が上手ですよね。そして、ラスボス感漂う向井理(橘祥吾役)! やっぱり端役で終わるわけがなかった。
イマ:ライオン(佐藤大空)を虐待していたのは橘愛生(尾野真千子)じゃなくて…。
小林:いやー、祥吾がDV夫だったというだけのオチじゃ弱くないですか? まだ明らかになっていないX(岡山天音)や牧村美央(齋藤飛鳥)がこの事件とどう絡んでいるのかも気になります。そんなストーリー展開に引き込まれるんですけど、俳優陣も素晴らしい!
イマ:このドラマの坂東龍汰(小森美路人役)凄くないですか? ここ数年、連ドラ、映画、舞台と大忙しの人気若手俳優ですが、『ギルバート・グレイプ』(1993年)のレオナルド・ディカプリオを見たときと同じくらいの衝撃を受けました。
小林:知的障碍者の役って、本当に難しいと思います。やりすぎてもダメだし、リアリティーも持たせないとダメだし。個人的には『アルジャーノンに花束を』(2002年/フジテレビ系)のユースケ・サンタマリア(藤島ハル役)が印象深かったんですけど、坂東くんは視線の動きや指先の形に至るまで細かい演技をしていて、それがとても自然なんですよ。そのうえで美路人をとてもチャーミングに見せている。
イマ:撮影に入る前に自閉スペクトラム症の人が出てくる作品を観たり、実際に自閉症の子たちが通う学校で一緒に授業を受けたりしたらしいんですけど、やったからってできるものじゃないですよね。
小林:それを受け止める柳楽優弥(小森洸人役)の演技もいい。『ゆとりですがなにか』(2016年/日本テレビ系)で、おっぱいおっぱい言ってた風俗店の呼び込みとは180度違う、普通の市役所職員(笑)。
イマ:坂東くんには「君がどんな演技をしても対応するから安心して」と伝えたそうですよ。
小林:カッコよすぎ!
イマ:そして、私の1位は『3000万』です。これも『ライオンの隠れ家』のように、続きが気になる系のドラマで、毎週、視聴者の想像を気持ちよく裏切ってくれます。
小林:NHKのWDRプロジェクト(複数の脚本家が打ち合わせをしながら作品を完成させるシステム。Writer’s Development Roomの略)という試みが成功していますよね。とにかく脚本がよく練られているから、ストーリーの流れに無理がないし、いろんな伏線がちゃんと後半に効いてきています。
イマ:『3000万』は世の中を騒がせている闇バイトによる強盗事件が題材になっていますが、ホントにタイムリーすぎますよね。きちんと取材しているからだと思いますが、犯罪の実態や組織の構造がとてもわかりやすい。
小林:一歩間違えれば、誰でも犯罪に巻き込まれそうなところがまた怖いですよね。私が3000万を盗んだ気分になって観ているので、毎回ドキドキが止まりません(笑)。
イマ:あと、祐子(安達祐実)の夫・義光を演じている青木崇高に絶妙にイラつきませんか?(笑)。根拠もなくやたら楽観的で、いざとなると問題を先送りにする感じ。
小林:体もデカいから、うろうろしてるだけで邪魔に見える(笑)。ああいう旦那役をやらせてたら天下一品です。このドラマ、絶対ハッピーエンドはないですよね…?
イマ:もう250万も使っちゃってるし、盗んだ犯人をかくまってるし、そもそも祐子はフライパンで人殺してますからね。あの水死体のリアルさは、映画『孤狼の血』(2018年)のガミさん(役所広司)以来の気持ち悪さでした。
小林:地上波であれを流すとは…、NHKの本気を見ました。安達祐実と青木崇高以外のキャストが「他のドラマでなんか見たことある」って感じの知名度も絶妙で、そのおかげで物語がどう転ぶかわからなくなっているのもいい。
イマ:中でも犯罪グループの坂本を演じた木原勝利は印象深いです。アンガーマネージメントしたり、写経したり、人間臭い部分が垣間見えるのもただの悪人じゃないって感じで。
小林:登場人物全員が、完全な善人だったり悪人だったりしないところもリアリティーがありますよね。
イマ:ハッピーエンドでもバッドエンドでもいいから、このドラマには納得いく終わり方をしてほしいです。
話題の不倫ドラマとオフィスコメディーにも注目!
小林:そして、2人がかぶった『わたしの宝物』ですが、このドラマの番宣にバンバン出ていた深澤辰哉くん(冬月稜役)が初回で死んじゃうのには驚きましたね(実は生きていた)。
イマ:第1話を観終わった後、「ふっか、よくあんな笑顔で番宣できたな」って思いました(笑)。
小林:それにしても図書館って恋愛が始まりがちですよね。最近でも『海のはじまり』(2024年/フジテレビ)で図書館は重要な要素だったし。
イマ:偶然同じ本を取るとか、感情が高ぶって大きな声を出したら怒られるとか、舞台装置として使いやすいんじゃないですかね。このドラマでも、美羽(松本若菜)が思い出のしおりを挟みに来たら再会するというきっかけの場所でした。
小林:宏樹(田中圭)、うかつにも娘に「栞」って名前つけちゃいましたよね…。
イマ:「ああ! その名前だけはダメ!」って叫びました(笑)。
小林:関係ないけど、栞が産まれたシーンを観たとき、「なんかデカくない?」って思わなかった?
イマ:私も思いました! 生後3カ月くらいじゃない?って(笑)。朝ドラだと、ドラマ関係者の中に新生児がいるかどうか探して出演してもらうらしいんですけど、このドラマではちょうどいい子がいなかったんでしょうね。
小林:栞が生まれてから宏樹がモラハラ夫からどんどん良い夫に変わってきてるけど、いずれ自分の子じゃないと分かったときの葛藤が見せ場だと思います。さっきの青木崇高じゃないけど、田中圭も旦那役やらせたら右に出るものはいませんね。さすがチームピンクのキャプテン。
イマ:なんですかそれ?(笑)
小林:来年3月にトライストーンのファン感謝祭イベントで運動会があるんだけど、田中圭はチームピンクを率いるんですよ。
イマ:(ホームページを見ながら)あ、チームピンクには義母・夏野かずみを演じている多岐川裕美もいますよ。彼女も運動会出るんですかね…。
小林:そこらへんは、ぜひ確認しに行きたいところですね。って、そんな話はさておき、このドラマは宏樹が良い夫になってからがさらに面白くなりそうです。
イマ:美羽が宏樹と別れて、冬月と栞を育てるって選択は普通すぎて一番なさそうですね。宏樹がすべてを飲み込んで夫婦で育てるか、美羽がシングルマザーになって育てるか、はたまた3人で育てるか。
小林:「3人で育てる」だけはないでしょ!(笑)
イマ:そしてもう一つかぶったのは『無能の鷹』です。菜々緒(鷹野ツメ子役)の使い方が「ああ、この手があったか!」と感心しました。
小林:ああいう浮世離れしたキャラクターは菜々緒のビジュアルがないと成立しなかったかも。仕事が全くできないツメ子は通常運転なのに、周りが勝手に変わっていくというのがこのドラマの基本構造。ツメ子みたいな生き方は、悩みがなさそうでうらやましい…。
イマ:逆に会社の同僚たちは悩みだらけ(笑)。臆病でコミュ力がない鶸田(塩野瑛久)、優しさゆえに損する鳩山(井浦新)、老害になることを恐れる朱雀(高橋克実)など、会社員なら「あるある!」「いるいる!」と共感しまくりのエピソードばかりです。
小林:「上司の記憶はすぐなくなる」など名言も多い。『3000万』や『ライオン』と違って、気軽に観られるドラマとして貴重ですね。
イマ:気軽に観られるドラマといえば、今回はランキングの対象にしなかったけど『団地のふたり』(日曜22時/NHK BS)は良かったですよねー。
小林:団地に住んでる幼馴染のノエチ(小泉今日子)となっちゃん(小林聡美)が、ネットで不用品を売ったお金でちょっとだけ贅沢したり、住民の網戸の張替えを手伝ったりと、とにかくたいした事件は起こらないけど、なんか楽しそうな2人をずっと見てられる。
イマ:最大の事件だった団地の建て替え話も結局流れたしね(笑)。
小林:あのドラマは50代以上の独身女性たちにとって憧憬なんですよ。気の置けない女友達がいて、毎日の小さな幸せを感じながら生きていく。簡単なようで、なかなかできない。
イマ:主演2人のキャスティングが最高ですよね。この前、『いきなり本読み!』という舞台を観に行ったんですけど、小泉今日子と小林聡美が出演していて、まさに『団地のふたり』のような自由さと仲の良さがにじみ出ていました。「なんか楽しそう」っていいですよね。
小林:50すぎると体の不調が前提だから、楽しそうに見えるってだけでもう尊いのよ…。
イマ:小林さんは「なんか楽しそう」に見えてるから安心してください(笑)。
かぶらなかったのは朝ドラ主演俳優のドラマと日曜劇場
小林:お互いかぶらなかったドラマは『モンスター』と『海に眠るダイヤモンド』ですね。
イマ:『モンスター』のどこが良かったですか?
小林:このドラマを観る理由は、趣里ちゃん(神波亮子役)一択です(笑)。
イマ:朝ドラ『ブギウギ』主演後、最初の連ドラ主演作品ですよね。共演しているジェシー(杉浦義弘役)との身長差が30㎝近くあるのも面白い。
小林:ジェシーはバラエティーで見せる面白キャラを封印してて、普通にイケメンキャラなのがちょっともったいないんですよね。
イマ:私は1話だけしか観てないので古田新太(粒来春明役)がどう絡んでくるのか分からないままです(笑)。
小林:そういえば、古田さん、この前三茶で見たよ。
イマ:私も三茶で結構飲んでるんですけど、一回も目撃したことない…。
小林:私にとっては、生涯で一番遭遇したことある芸能人です(笑)。
小林:そして、イマイズミさんがセレクトしたのは『海に眠るダイヤモンド』。
イマ:日曜劇場らしいスケールの大きな話です。そして、予算も大きい(笑)。
小林:端島(軍艦島)のセットはきちんと作りこんでますよね。台風のシーンも凄い迫力だったし。
イマ:野木亜紀子の脚本も素晴らしいんですよ。1950年代の端島を舞台にした群像劇に、現代パートのいづみ(宮本信子)が誰なのかというミステリーを絡めているので、観ていて飽きがこない。さりげなくミスリードさせるような塚原あゆ子監督の演出もさすがです。
小林:鉄平(神木隆之介)、朝子(杉咲花)、賢将(清水尋也)、百合子(土屋太鳳)の四角関係に加えて、リナ(池田エライザ)と進平(斎藤工)も進展ありそうで、恋愛模様がやたら複雑に!(笑)。
イマ:実は、今クールで一番の恋愛ドラマかもしれません。
小林:そして、赤い腕飾りの片岡凛(千景役)はやっぱり一筋縄ではいかない役でした。
イマ:お嬢さんなのにホスト狂いでしたね。って、まだ『虎に翼』ロスなんですか?(笑)。
小林:今も、LINEのプロフィール画面のBGMは「さよーならまたいつか!」(米津玄師)ですから!
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小林久乃(こばやし・ひさの)コラムニスト、編集者。正々堂々の独身。中学生から地上波ドラマを愛して30年以上、筋金入りのオタク。好きが高じてついには『ベスト・オブ・平成ドラマ!』(青春出版社刊)を上梓した。ラブストーリーが好きで、特に禁断の恋がテーマとなると視聴熱が俄然、盛り上がる。公式HPはhttps://hisano-kobayashi.themedia.jp
元JJ編集長イマイズミ 女性誌『CLASSY.』『JJ』の編集長を歴任。1クールの地上波ドラマを全録画するようになったのは、編集長になった13年ほど前から。「仕事で新しい俳優、タレントさんを覚えるため」というのが理由だったけど、見事に大ハマり。ホームドラマとラブコメ好き。韓国ドラマもやや中毒。
イラスト/lala nitta