青木裕子さん「自分の気持ちを伝えるのが苦手」な人におすすめの本は?

撮影/金 玖美

VERY編集部きっての読書好き・青木裕子さんの連載エッセイでは毎月のおすすめ本を紹介。アナウンサーとして経験を積んだ青木さんも「うまく話せなかった」と悩むことがあるそう。自分の気持ちを上手に伝えるためのヒントになる本は? 仕事や普段の会話にも役立ちそうです。

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「人前で話すのが苦手」な人へ。話し上手になれる方法とは?

 

アナウンサーなのに、うまく言葉が見つからない!

 

言葉を上手に使える人になりたいとずっと思っています。こうしてコラムを書かせていただいていることや、アナウンサーという前職によって、その思いは願望から目標になり、果たすべき課題のようなものになりました。「アナウンサーなんだから自分の言葉で表現することが得意でしょう」とか「言葉を綴ることが得意だから書く仕事をしているんでしょう」とか思われてしかるべきですもの。しかし、悲しいかな、なかなか胸を張って、「私は言葉を巧みに操ることができます」なんて言えるようになりません。アナウンサーの仕事では、食レポなど、その場で感じたことを即座に言葉にする仕事に、苦手意識がありました。恥を忍んで告白すると、「本当においしいものを食べたときって、おいしい! しか言葉が出ないよね」なんて言い訳でお茶を濁してしまったことが何度もあります。スミマセン。アー、ハズカシイ。

撮影/川﨑一貴〈ajoite〉

 

子どもの作文は<面白かった><楽しかった>のオンパレード

 

自分の気持ちを言葉にすること、つまり言語化って本当に難しいです。アナウンサーのように目の前にカメラがあったり、生放送で時間が限られていたりする特殊な状況ではなくとも、だれしも多かれ少なかれ“うまく言葉にできない”という経験をしたことがあるのではないでしょうか。例えば息子たちが書く作文は〈楽しかった〉と、〈面白かった〉のオンパレードです。〈ウキウキしました〉が出てきたら今日は頑張ったなという感じ。当然、語彙力の問題でもあると思いますが、読書好きな長男は同年代の中では言葉を知っているほうのはず。それでも、言葉を知っている「インプット」と、言葉をつかえる「アウトプット」は自然にはつながらないのですよね。だから、アウトプットにも練習が必要なのだと思うのです。

撮影/須藤敬一

 

「自分で自分の話を聞く」ということ

 

今回ご紹介する『こうやって頭のなかを言語化する。』は、そのアウトプットの練習方法についてとてもわかりやすく書いてある本です。どれくらいわかりやすいかというと、〈超効率メソッド〉〈超シンプルノート術〉というネーミングが大げさではないくらいの単純明快さである上、ノートの具体的な使い方が5ページに1回程の頻度でイラスト化されているくらいわかりやすい。また、興味深いのは、言語化の前提として、話を聞くということに焦点を当てていることです。コミュニケーションの基本は相手の話を聞くことというのはよく言われることですが、本書では聞く対象を自分にも向け、〈「自分で自分の話を聞く」姿勢こそが、自分の頭のなかを言語化するうえでは必要不可欠なこと〉だと説きます。言葉になっていない思いや意見を言語化するには〈自分に問う〉ことが必要だというのです。これは一見、「その場で感じたことを言葉にするのが苦手」という私の悩みや「作文がいつもつまらない」という息子の問題とは出発点が異なっているように感じられますが、よく考えるとつながっていく気もします。つまり、私も息子も日々自分に聞く習慣が身についていないから、いざ気持ちを表現する場面になって言葉が出てこないのかもしれない、「どうしてそう思ったのか」「どんな時にそう思うのか」などを日々言語化する習慣がついていれば、いざという場面でも説得力のある言語化ができるのかもしれないと思うのです。

〈継続は言語化力なり〉とは筆者の言葉ですが、この本を通して身につけたいのは、明日使えるテクニックではなくて、一生ものの力です。「一生ものの言語化力、手に入れてパワーアップしたい!」という方にぜひおすすめしたい学びにつながる一冊です。

こうやって頭のなかを言語化する。』
荒木 俊哉・著 (PHP研究所)

ベストセラー『瞬時に「言語化できる人」が、うまくいく。』の著者が、1000人以上のメソッド体験者の生の声を活かし、新しいメソッドを開発!「言語化を習慣にすること」を1日3分&3ステップで実践できる超シンプルなノート術。

 

【絵本・児童書】子どもの本のおすすめは?

 

「歴史って楽しい! 息子が戦国武将の名前をすらすら覚えてしまった本

長男が小学生になってすぐに、学校で流行っていたらしく夢中になって読んでいたシリーズです。タイトルの通り、戦国武将をはじめとする歴史上の人物たちと野球をする話のようです。“のようです”というのは、すみません、私が全巻読んだわけではなく、長男から「こんなお話でね、〇〇が出てきてね、こんなことになったんだよ」と聞いたからです(身のまわりで起きたことをなんでも熱心に話して聞かせてくれた低学年の頃が懐かしい、小6になった今は……とこれはまた別の話ですね)。それはそれは楽しそうに話をしてくれた長男ですが、私が感心したのは歴史上の人物の名前をあっという間に憶えてしまったこと。ファンタジーなので、歴史そのものを学べるわけではないのですが、名前を知ると興味もわくようで、この小説に出合ったことがその後、長男の歴史好きにつながりました。楽しく読めて、学びにつながったなんてちょっとお得な感じがしますよね。お子さんが文庫本デビューをしたらぜひ手に取ってほしい、おすすめのシリーズです。

『戦国ベースボール 信長の野球』
りょくち真太・作 トリバタケハルノブ・絵(集英社みらい文庫

小6の天才野球少年、山田虎太郎は事故にあい、地獄で豊臣秀吉のスカウトで織田信長ひきいる野球チームに入団!!  現世に生き返るため、戦国武将と真剣勝負するが、そのトンデモナイ野球にあ然! 汗と涙と笑いの戦国ベースボールが開幕!!  大人気シリーズ第1作。

 

 

最近の青木さんは?

 

梅雨の晴れ間のひととき、コーンバターの炊き込みご飯、万博の事前リサーチも。雨の季節も楽しみがいっぱいです。

梅雨の晴れ間に。ママ友とたまには昼から至福の時間。
季節ご飯シリーズ。芯まで一緒に炊き込むコーンバターご飯。
最近の愛読書(笑)。事前にきちんと調べたいタイプです。
VERY撮影の日。ヘア・メークのKIKKUさんには美容のことをたくさん教えてもらいます。
月に一度の美容院。VERYのヘア・メークでもお世話になっている塩澤さんにお願いしています。

青木裕子さん
VERYモデル。小学生2人の男の子の母。「本は紙で読む派」で、忙しい日々のなか自宅やお子さんの学校近くの書店に立ち寄るのが楽しみだとか。

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