睡眠中に頭の中で爆発音が聞こえたら…「頭内爆発音症候群」かも【医師が解説】
頭の中で突然爆発音がして目が覚めたという経験をしたことはありませんか? 周囲に音はしないのに、頭の中で大きな音がしたと感じるため、不安や恐怖を感じる人もいるでしょう。その音の原因は、頭内爆発音症候群かもしれません。症状の特徴や対処法を解説します。
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1.頭内爆発音症候群とは?

頭内爆発音症候群は、寝る直前や睡眠中に突然頭の中で大きな音がする病気です。頭の中でする音はさまざまで、ショットガンや爆弾のような音、金属音、シンバルのような音、ドアをバタンと閉める音などと表現されます。
実際には周囲で音は鳴っていないのに頭の中で突然大きな音が鳴ったと感じるため、恐怖や不安を覚える人も少なくありません。
女性に多く発症する睡眠障害の一種で、音を感じても頭痛は伴わないのが特徴です。一般的には稀な病気に分類され、滋賀医科大学が滋賀県甲賀市の市職員を対象に行った調査での有病率は1.25%だったと報告されています。
2.頭内爆発音症候群の原因
頭内爆発音症候群の具体的な原因はまだ解明されていませんが、ストレスが関係していると考えられています。
体の興奮・緊張状態が続いていることで、眠りにつく際に脳の一部が活動したままになり、音を処理する脳の神経部分とズレが生じることで発生すると推察されています。
頭内爆発音症候群は自然に治ることが多いため、必ずしも受診する必要はありません。ただし、症状が重く感じる場合や、爆発音への恐怖や不安が強い場合は睡眠障害が重くなる可能性があります。その場合は睡眠外来を受診するのがおすすめです。
3.頭内爆発音症候群の対処法
頭内爆発音症候群に有効な薬物療法は確立されていません。症状を軽減するには、ストレスや不眠などを改善することが大切です。具体的な対処法を紹介します。
①ストレスを発散する
ストレスの原因を完全に取り除き、ストレスをまったく感じないようにするのは現実的ではありません。自分なりの発散方法で、ストレスを溜めないようにしましょう。
例えば、ウォーキングやサイクリングなどの有酸素運動をすると、ネガティブな気分が発散されてリフレッシュするとともに、睡眠リズムを整える効果が期待できます。また、就寝前にストレッチすると、リラックス効果が得られ、寝付きをよくすることに繋がります。
趣味に没頭することもストレスの原因から距離を置くよい方法です。ほかにも、音楽を聴く、映画を観る、頭の中の考えを紙に書き出すなど、自分に合った方法を見つけましょう。
②香りを活用する

ストレスが溜まると自律神経のバランスが崩れ、不眠を招きます。自律神経を整えるために、香りを活用して体をリラックスさせることも大切です。
自律神経には体を興奮状態にする交感神経と、休息状態にする副交感神経があります。ラベンダーやベルガモットなどのアロマには副交感神経を優位にし、心身の緊張を緩める効果が期待できます。
アロマやハーブティーなどを就寝前に取り入れると、体がリラックスモードになり寝付きをよくすることができるでしょう。アロマディフューザーなどを使い、寝室をアロマの香りで包むのもおすすめです。
③静的ストレッチをする
静的ストレッチとは筋肉や関節をじっくりと伸ばすストレッチのこと。呼吸を意識しながらゆっくり筋肉を伸ばすことで、副交感神経が優位になり、リラックス効果が期待できます。例えば、以下のような静的ストレッチをしてみましょう。
<背中の筋肉の静的ストレッチ>
(1) 手は肩幅、足は腰幅、背中は床と平行になるように四つ這いになる。
(2) 息を吸いながら目線を上向きにして背中を反らす。

(3) 息を吐きながら背中を大きく丸め、おへそを見るように目線を下げる。

(4) 呼吸を意識したまま(2)と(3)の動きを数回繰り返す。
静的ストレッチは毎日続けることが大切です。入浴後や就寝前、仕事や家事の合間など、日常生活の一部として習慣化しましょう。
④呼吸法を取り入れる
呼吸法を取り入れ、自律神経のバランスを整えることも大切です。自律神経は呼吸によってある程度コントロールできます。ストレスを感じたときに意識して深呼吸をすると、交感神経の高ぶりを抑えてリラックスしやすくなります。
また、副交感神経を優位にするには腹式呼吸が効果的です。お腹を膨らませながらゆっくりと息を吸い、お腹をへこませながらゆっくりと息を吐き出します。息を吸う時間と吐き出す時間は1:2となるようにしましょう。
腹式呼吸は、寝転んでお腹に手を置いてするとお腹の動きを感じやすくなります。就寝前に布団に入った際に行うのがおすすめです。
⑤漢方薬を試してみる
不眠を改善する効果がある漢方薬を取り入れるのも、頭内爆発音症候群の改善に役立ちます。漢方薬は不調の根本にアプローチし、心と体のバランスを整えることで不調を改善することを得意としています。
頭内爆発音症候群には「自律神経を整える」「精神の高ぶりを抑える」「眠りのリズムを整える」などの働きがある漢方薬を選びましょう。
<不眠の改善に役立つ漢方薬>
・抑肝散(よくかんさん)
エネルギーや栄養を補い巡らせることで精神の高ぶりを落ち着かせ、神経症や不眠症を解消します。イライラや緊張で眠れない人に用いられる漢方薬です。
・酸棗仁湯(さんそうにんとう)
栄養を補い、眠りのリズムを整えることで不眠を解消します。過度の心労や疲労が溜まって弱っている人に用いられる漢方薬です。
睡眠の質改善に役立つ漢方薬は他にもあるため、自分に合ったものを選ぶことが大切です。どれを選べばいいのか分からない場合は、漢方薬に詳しい医師や薬剤師に相談してみましょう。体質や症状などをもとに、自分に合った漢方薬を提案してくれます。自分に合った漢方薬を見つけて、頭内爆発音症候群の改善に役立てましょう。
<参考文献>
※ 国立大学法人滋賀医科大学「頭内爆発音症候群(EHS)は、抑うつ、不安、不眠、疲労など、 メンタルヘルスや睡眠の問題と関連」

都内大学病院、KDDIビルクリニックで循環器内科および内科に在勤。総合内科専門医・循環器内科専門医・日本睡眠学会専門医。産業医として企業の健康経営にも携わる。自身の妊娠・出産、産業医の経験を経て、予防医学・未病の重要さと東洋医学に着目し、臨床の場でも西洋薬のメリットを生かしながら漢方の処方を行う。症状・体質に合ったパーソナルな漢方をスマホ一つで相談、症状緩和と根本改善を目指すオンラインAI漢方「あんしん漢方」でもサポートを行う。
編集/根橋明日美 イラスト/PIXTA
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