宮澤エマさん「29歳で初の連ドラに。当時の壁は“自分の不安”でした」【劇場版『TOKYO MER』最新作秘話も】
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「“理想のキャリア”なんて、ないのかもしれない」。そう語るのは、俳優・宮澤エマさん。映画、舞台、ドラマとジャンルを超えて活躍しながらも、「挑戦のたびに不安と迷いがある」と率直に明かします。過酷な撮影現場で感じたプロ意識、仕事と向き合う姿勢の変化、そして「自分を信じること」の大切さ。理想と現実の間で揺れるリアルな言葉が詰まったインタビューです。
Profile
祖父は元首相・宮澤喜一、父は元駐日米主席公使。2012年に芸能界入り後、舞台・ドラマ・映画と多方面で活躍。近年はNHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』、TBS火曜ドラマ『初恋DOGs』や映画『国宝』に出演。演技力に定評がある実力派。
“理想のキャリア”なんて、ないのかもしれない。迷いながら、信じて進むだけ

――CLASSYの読者は25〜35歳の働く女性が中心です。宮澤さんの、挑戦を重ねながらキャリアを築いてきた姿は、多くの女性にとって参考になると思います。
CLASSYって、私にとっては“ちょっと背伸びした大人のお姉さん”という印象だったんです。でも最近、「あ、私ももうその世代なんだな」とふと感じる瞬間があって。
キャリアを築いているように見ていただけるのは、すごく大きな励みになりますね。
――年齢や経験を重ねる中で、仕事に対する考え方に変化はありましたか?
私は“仕事に生きがいを感じる人ばかりの家庭”で育ちました。母もずっと働いていて、家族全体がワーカホリック気質だったと思います。20代は特に、「与えられた仕事は全部やる!」というスタンスで突っ走っていました。
でも根底には、「幸せに生きるために、良い仕事をする」という価値観があるんです。仕事が私生活にもプラスに働く――そんな理想をずっと抱いていました。
コロナ禍で一度立ち止まる時間ができて、多くの人と同じように、「仕事って何だろう」「この先どうなるんだろう」と不安を抱きました。そもそも、自分の仕事は世の中に本当に必要とされているのか――そんな問いが頭をよぎったこともあります。
でも結局、「やっぱり私はこの仕事が好きだし、続けたい」と再確認することができました。ちょうどその頃から舞台に加えて映像の仕事にも挑戦するようになって、新しいフィールドに踏み出すきっかけにもなりました。
――舞台中心だった宮澤さんが、映像の世界に本格的に飛び込むようになって感じた一番のギャップやハードルは何でしたか?
舞台では、稽古を重ねながら本番に向かっていく安心感があり、現場の空気や流れもある程度予測できます。でも、映像の現場はすべてが違っていて、初対面の方と突然カメラの前で芝居をするようなこともある。そのスピード感や緊張感に、最初は戸惑いの連続でした。
最初に連続ドラマに出演したのは29歳のとき。そのときは、リハーサルも少なく、モニター越しに見ていた空気感に自分がすぐ飛び込んでいく感覚で。まるで転校初日の教室に一人で立っているような気持ちでした。
結局、一番の壁は“自分の不安”なんだと思います。その不安が映像でははっきりと表れてしまう。「ここ、不安だったな」と後から見返しても分かるほど。でも、それも含めて今は「自分を信じて飛び込むしかない」と思っています。そうして少しずつ、映像の世界にもなじんでいけたように感じています。
「まさか自分が出るなんて…」意外なジャンルとの出会いが新たな挑戦に
――宮澤さんが出演する劇場版『TOKYO MER~走る緊急救命室~南海ミッション』が公開されますが、『TOKYO MER』シリーズについては以前から意識されていましたか?
そうですね、思い返してみると、私がちょうど大河ドラマの撮影をしていた頃に、テレビドラマ版の『TOKYO MER』が放送されていたんです。撮影現場でもポスターをよく見かけましたし、周りの人たちも話題にしていて、「コロナ禍に、こんなスケールの大きな医療&レスキュードラマをやってるんだ」と強く印象に残っていました。
でも正直、自分とは無縁のジャンルだと思っていたんです(笑)。医療やレスキュー、アクション要素もある作品で、これまであまり関わったことがなかったので、まさか自分が出演することになるとは…驚きでした。
――実際に現場に入ってみて、外から見ていた印象と違ったことはありましたか?
大きく印象が違ったわけではありませんが、やっぱり『MER』は“医療ドラマ”であると同時に、“ヒーローもの”のような熱さがある作品なんですよね。
特に驚いたのは、鈴木亮平さんが手術シーンのために自費で縫合練習キットを購入し、個人的に練習していたという話。それを聞いたとき「亮平さんならやるだろうな」と納得できるほど、全力で役に向き合っているのが伝わってきました。
主演がそれだけ真摯だと、共演者も自然と同じ熱量になる。だから現場全体に、画面越しにも伝わる“熱”があったんだなと思います。
――今回演じられた「武美幸」というキャラクターの見どころは?
台本を読んだ時、「これ、どう言えばいいんだろう?」と悩むセリフが多くて(笑)。武さんは優秀な麻酔科医だけど、台本には詳しい背景が描かれていません。でも、TOKYO MERに憧れ、自ら新チームに志願したことは伝わってきました。ただ、うまく活躍できずにフラストレーションを抱えていたり、江口洋介さん演じるキャラクターに不信感を持っていたりと、内面には複雑な感情があります。冷静で客観的に全体を見られる一方、情熱的な部分もあって、「冷静と情熱の間」を揺れる姿が面白いです。
事件が起きてようやく出番が回ってきたときの「来た!」という一言には、ただのセリフ以上の想いが込められていて。武さんの本気の熱が、そこに詰まっていると思います。
火山灰の中で一気に距離が縮まった、過酷すぎる撮影初日
――今回は沖縄ロケということで、大自然の中での撮影だったと思います。印象的だった出来事や、共演者とのやりとりはありましたか?
撮影初日から忘れられない体験になりました。なんと、火山灰が降るなかでのスタートだったんです。MERの車両と一緒に全速力で走って、ドアを「バンッ」と閉める…まさに“渦中に放り込まれる”ような緊張感で、自然の迫力もあってかなり過酷な一日でした。私は「火砕流が迫ってくる」シーンを演じたのですが、江口さんや亮平さんの後ろで「うわー!」と絶叫する場面では、声が枯れるほど全力で演じました。
その横には、まるでバナナのような実がなっている木があって、「これバナナですかね?」と話していたら、江口さんがなんと一口パクッと。初日でまだあまり話せていなかったので、「えっ、こんなにお茶目な人なんだ!」と一気に距離が縮まりました。
ちなみに「味は…まあまあかな」と笑ってらっしゃいました(笑)。
「限界の現場」で気づいた、“自分の姿勢がすべてを変える”ということ

――過酷な環境での撮影やチームワークの強さなど、クランクアップは感慨深い瞬間だったのでは?
長い医療用語を動きながら話したり、急にセリフが変更されたりと、現場はとにかくスピード感と柔軟さが求められる毎日でした。同じシーンを何度も繰り返す中で、集中力と気力をどう保つか…今まで経験したことのないタイプの大変さがありました。
クランクアップのとき、亮平さんに「大変じゃなかったでしょ?」と聞かれて、「いや、大変でした!」と即答(笑)。精神的に追い詰められるような辛さではなかったけれど、MERならではの独特な過酷さは確かにありましたね。だからこそ、あの現場をともにした仲間たちとの絆は、他では得られない特別なものになりました。
――今回の作品では、緊急医療事案に直面しながら人を支える役を演じました。演じる中で、ご自身の考え方や日常に変化はありましたか?
はっきりと「これが大きく変わった」と言えるわけではありませんが、医療ドラマに出演したことで、病院に行ったとき、スタッフの方々の動きや声のかけ方が自然と気になるようになって。患者としても、「自分の意思をちゃんと伝えること」がいかに大切かに気づかされました。
また、「自分にできることをやる」という作品のテーマにも深く共感しています。「どうせ無理」と諦めるのではなく、行動することで、それが小さなことでも、人生や周りに確実に変化をもたらすんだと実感しました。
そして、亮平さんの姿勢にも大きな刺激を受けました。一つひとつのシーンにとことん向き合う姿を見て、「ここまでやるのか」と。私も、もっと妥協せずに向き合いたいと心から思いました。
この作品を通して学んだのは、“自分の姿勢がすべてを変える”ということかもしれません。
information
劇場版『TOKYO MER~走る緊急救命室~南海ミッション』
8月1日公開。沖縄・鹿児島を舞台に「南海MERチーム」が結成。前作を超えるスケールで未曾有の災害に立ち向かう姿を描く。
ジャケット¥110,000(イレーヴ) ニット¥40,700 スカート¥44,000(ともにジョン スメドレー/リーミルズ エージェンシー) リング¥49,500 イヤカフ¥29,700(ともにカラットアー/イセタンサローネ東京) ネックレスはスタイリスト私物
撮影/木村敦(Ajoite) ヘアメイク/tamago スタイリスト/小林新(UM) 取材/池田鉄平 編集/越知恭子