歌手・岡本真夜さん(51)「メニエール病」「発声障害」…人生のどん底を乗り越えた今、見えるものとは?

「TOMORROW」の大ヒットから30年。歌手の岡本真夜さんが歩んできた道は私たちが想像する以上に過酷でした。そんな彼女が迎えた更年期とは?

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岡本真夜さんprofile

1974年1月9日、高知県生まれ。51歳・歌手1995年、シングル「TOMORROW」でデビュー。この曲がドラマ「セカンド・チャンス」の主題歌に起用されて200万枚以上の大ヒットに。その後も数々のヒット曲を生み出しつつ、楽曲の提供なども行い、多方面で活躍。今年の5月10日でデビュー30周年を迎え、大きな話題に。


症状はホットフラッシュ程度

今のところ、更年期らしい症状はホットフラッシュくらい。一昨年「これってもしかして……」と感じる瞬間が数回ありましたが、それ以外は取り立てて不調を感じずに過ごせています。

でも例えば、先輩のアーティストの方で会った途端に「もう更年期で、暑くて暑くて」と顔周りをあおいでいらっしゃる方がいたり、めまい(*)予防のためにサプリメントを飲んでいるお友達がいたりもして、女性はある程度の年齢になると、人それぞれの症状があらわれるものだと感じています。

症状の有無、時期など、個人差があるのが更年期。私も一昨年がピークだったわけではないかもしれないし、これからまたぶり返してくる可能性もあると覚悟はしています。でも更年期にとらわれすぎないで、会いたい人に会いに行って、やりたいことを全うする日々を楽しみながら前向きに50代前半を過ごしていけたらいいなと思っています。

【*・めまい】

更年期症状のひとつとして、めまいがあります。エストロゲンの減少によって自律神経のバランスが乱れたり、カルシウムが不足して三半規管の中の「耳石」が欠けたりすることで、めまいを誘発しやすくなることもあるそう。50歳前後でめまいが頻発する人は耳鼻科とともに婦人科でも相談を。

歌の不調に比べれば、更年期の不調なんて

— 私たち世代なら誰もが歌える「TOMORROW」が大ヒットしたのは1995年。あれから30年。今年の5月10日でデビュー30周年を迎えたシンガーソングライターの岡本真夜さん。若くしてアーティストとして大成功を収めたことで、その後の人生は私たちの想像を遥かに超えて苦難の連続だったと言います。

今という瞬間を大切に楽しんでいきたいという気持ちになっているのは、私にとって更年期にあたる45歳以降は、主に仕事の環境でいろいろなことが重なって、今思えばどん底だったから。一時期は、そこから抜け出すことさえ諦めて、デビュー30周年を迎えたらもう音楽を辞めよう、生きるうえで何よりも大切な音楽だけれど、手放そう。そう考えるほど、精神的に追い詰められていたので、どちらかと言うとそのストレスの陰で、更年期はあまり目立たなかったのかもしれません。

21歳で出したデビュー曲がいきなりヒットし、周囲からは「若くして成功して羨ましい」と言われてきましたが、私が好きな言葉は「大器晩成」(笑)。高校1年生まではピアニストを志し、急に歌が好きになり歌手を目指し、ただ音楽が好きなだけで、まだ世間も業界もよく知らない20歳そこそこの人間が、ヒット曲を出したことで周囲に形成される人間関係の良し悪しまで判断することは本当に難しいことでした。

最初の事務所を辞める際は10億円の損害賠償を求められる裁判を起こされ、一時期は写真週刊誌に追いかけられ、何が何だかわからないまま、目まぐるしく、よくない方向に変わっていく環境に振り回され、人間不信に陥りました。2010年に仕事のストレスからメニエール病を患って、三半規管に支障が出ることで声が出づらくなり、一時期は複数のボイストレーニングの先生に「発声障害」と言われたことも精神的に大きなダメージに。テレビで歌うたびに「昔の声が出なくなっている」と炎上することも、音楽活動を続けるモチベーションを削いでいきました。

加えて、関わらせていただいていたプロジェクトの中で、嘘をつかれたり、聞いていない、というようなことも重なって、メンタル的には強いはずの私でも疲弊してしまいました。思うように歌えないことと、ギクシャクする仕事環境で八方塞がりのような気持ちになり、業界に絶望していたんです。

でも4年前に今のマネージャーがつき、いいチームに導かれ、また昨年、あるボイトレの先生に出会ったことでレッスンをするたびに昔の声が戻ってくる感触をつかめました。私にとって歌うことが生きるモチベーション。それを取り戻せそうで、一筋の光が見えてきた。歌の不調に比べれば、更年期の不調なんてどんと来いって感じ(笑)。しばらく〝冬眠〟状態だった私ですが、今は未来に希望が見えてきたような気がして、気持ちがとても晴れ晴れとしています。

〝好き〟をいくつも持つこと

— これまでの人生、波瀾万丈だった岡本さん。でも歌への希望を取り戻せた今、心も体もバランスよく整ってきた気がするそう

バランスを整えるためには、自分の〝好き〟の入力先や出力先をいくつも持つことが大切だと感じています。私の心をいちばん整えてくれるのは愛猫のこしあん。猫ちゃんがいっぱい掲載されているブリーダーサイトを見るのが趣味で、ある時、とあるマンチカンに目が留まり、会いに行って、連れて帰りました。彼は猫なのに人好きがするというか。私が動くとついてきますし、宅配便の方が来ると玄関前で寝そべってお腹を出したりもします。撫でてほしいみたい(笑)。本当に可愛くて愛嬌があって、癒してくれる存在です。

愛用のカメラで写真を撮るのも好き。アルバムのジャケット撮影で訪れたパリが気に入って、年に一度のペースでひとりで滞在していますが、その間、6区のサンジェルマンなどの街の何気ない風景を撮る時間もお気に入りのひとつ。マルシェに行った帰りのカフェ、テーブルに置かれたクロワッサン。どこを切り取っても絵になるパリは光の陰影もとても美しく、夢中で撮影しています。パリなどで撮影した写真は、ファンクラブのグッズとしてのポストカードにも使わせていただいています。

また、ひとりでカフェにいる時間も大事。ゆったりした空気感があるカフェでは、ザワザワした気持ちがリセットされて無になれます。脳が静かになって感覚がフラットになると、フッとメロディが浮かぶことも。都内のいろんなカフェをチェックしてお気に入りを増やすようにしています。ドライブで自然豊かな場所に行くのもリフレッシュ法のひとつ。移動中に好きな音楽をかけていると、体からストレスが抜けていくような気がします。

歌に希望が持てれば、どんな困難でも……

— 繊細な感性ゆえ、傷つきやすく、周囲の人間関係のほころびに過敏になり、自分を追い詰めることもあったとか。敏感ゆえに不安定になりがちなメンタルを整えるためにいくつものリフレッシュ法を持っている彼女が50代を迎えた今、たどり着いたのは「とにかくストレスをためないこと」だそう。

いろんなことがあって音楽だけに集中できない環境が長く続きました。でも今ようやく環境が整って、歌のことだけを考えていい時間が持てるようになり、とても幸せを感じています。それだけで私にはストレスフリーな状況(笑)。とても心が平和なんです。

もともとマイペースで負けず嫌いな性格なので、周囲に振り回されることが多いと、ストレスがマックスになってしまう。余計な神経を使わずに済むようになってやっと自分自身が取り戻せそうな気がします。更年期は、もしかしたらこれから急に症状が出てくるかもしれない、先のことはわかりません。けれど、歌に希望が持てれば、そこだけがクリアになっていれば、どんな困難でも前向きに乗り越えていけると思います。

人生、どこからでも〝リスタート〟はできます。「TOMORROW」の歌詞ではないですが、いろんなことがあった分、今の私は確実に20代のころより、強くなっているし、優しくもなっているはずですから。

〈TOP画像〉柄シャツワンピース¥149,600ワイドパンツ¥47,300(ともにyukiko hanai)〈末尾画像〉レースホワイトジャケット¥495,000〈コレクションライン〉ロングプリーツスカート¥85,800(ともにyukiko hanai)

撮影/田頭拓人 ヘア・メーク/小野真由美 スタイリスト/伊藤万紀 取材/柏崎恵理 ※情報は2025年9月号掲載時のものです。

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