【ディーン・フジオカさん】我が子へのメッセージ「たくさんの経験からこの世の多様性を知って欲しい」
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【ディーン・フジオカさん】「絵本は親子を繋ぐ大切なツールです」初の翻訳絵本を手掛けた思いとは?
絵本は、文化を越えた親しみやすさが魅力の一つ。
僕は、これまでいろいろな言語圏で生活をしてきましたが、
絵本は、その余白が空想をかきたて対話を生む、
世界共通に親子のコミュニケーションを繋ぐものです。
それに、教科書では説明のしようがない母音や子音の使い方、言葉のリズム、
それを体感で感覚的に子どもに馴染ませることができる優れたツールだと思うんです。
そんな自身の思いから、今回、絵本「ありさんシェフのしょうたいじょう」の翻訳にチャレンジしました。
自身の翻訳絵本を 我が子が日本語を話すきっかけに
「まずは、我が子に」という思いですが、
子ども達は英語版の原作は読んでいるものの、僕が翻訳した絵本はまだ読んでいなくて……。
実は、子ども達はまだ日本語が話せないんです。
今回、日本語の響きの心地良さにすごくこだわったので、
何より子ども達が日本語を覚えるきっかけになればいいな、と思います。
クスリと笑って、言語に興味を持ってもらえるようにと、
ダジャレも潜ませました(笑)。
原作を知る我が子も、日本語だとリズムが変わるから、
子ども達がどんな反応をするか楽しみ。
まずは、我が子に読み聞かせをしてみようと思います。
我が子へ、日本の子どもたちへ、最も伝えたいのは“多様性”
この絵本は、住む場所も食べるものも、話す言葉、感じ方も違う
ねこや犬、サメやぞう、ふくろう……と、様々な動物たちを
晩餐会にお招きするために、アリさんが
「どうしたらみんなが楽しく心地よくなる?」と
あれこれ思いを巡らせる物語。
僕が我が子に一番伝えたいことも、この絵本の軸となる多様性ということです。
僕自身、様々な国に暮らし仕事をして、国が違えば、考え方も習慣も
違うということを身をもって体験してきました。
振り返ってみると、僕が生まれた福島県の須賀川は、あの『ウルトラマン』を生み出した円谷英二さんが生まれた地で、「特撮文化」を地域資源としていたため、様々な文化を
感じられる環境だったんです。海外の方も多く、様々な文化圏や言語圏と
自然と触れ合い、僕の中に“多様性”というパレットが出来上がったのだと思います。
だから、子ども達にも、たくさんの人、たくさんの国に触れ合う機会を作ってあげたい。
旅先だけじゃなく、日常でも学校の中にとどまらず、
やったことのないことにチャレンジをさせてあげたい、そんなふうに思います。
親としての自分にできるのは、たくさんの経験に触れさせること
多様性を知ることは、振り幅を大きく持てるようになることでもあるんですね。
例えば、僕はイスラム教圏で生活や仕事をするようになって、初めてこの地ではカレンダーが土曜日始まりだと知ったんです。
それまでは、月曜日、あるいは日曜日が1週間のスタートという文化圏で生活してきた中、
僕はイスラムの暦のリズムがどこか快適だったんです。
だって、何だか気分が良くないですか? 土曜日から1週間が始まるとなると、
土曜や日曜の向き合い方も変わってきて、「何かやろう!」という気になる。
そして、水曜日や木曜日で「ああ、もうすぐ1週間が終わる」という感覚になる。
だから、僕は日本に戻った今も、ずっとスマホのカレンダーは土曜日スタートにしているんです。
そんなふうに様々な文化や経験に触れたうえで、子ども達には自身で“選ぶ”という
力を付けてほしい。
親である僕は、「コレはやっちゃダメ」「コレはやりなさい」といった
レールは敷かず、子ども達本人が自身のミライを選ぶべき。
そのために、親である僕が出来ることは、色々な経験に触れさせる
ということじゃないかな、と思います。
「ありさんシェフのしょうたいじょう」
原作は、良質な絵本を多数手がけているイタリアの出版社 TERRE DI MEZZO 社より刊行された『La piu grande cena mai vista(英題:The Biggest Dinner Ever)』。本作は、すでにイタリア、フランス、スイス、ジョージア、中国、韓国、台湾、香港、マカオなど世界各国と地域で翻訳出版されている話題作です。イラストを手がけるのは、イタリア‧ボローニャ‧チルドレンズ‧ブックフェアにて「次世代の優れた児童書イラストレーター」に選出されたロレンツォ・サンジョ氏。
Profiel ディーン・フジオカ
1980 年、福島県生まれ。俳優、アーティスト、映画プロデューサーとしてアジアを中心に国際的に活
躍。英語・中国語・日本語を自在に操り、豊かな国際感覚と言語への深い理解、繊細な表現力をあ
わせ持つ。三児の父として育児にかかわり、父親役での出演作も多い。主な出演作にNHK 連続テレビ小説『あさが来た』、大河ドラマ『青天を衝け』、『モンテ・クリスト伯 ―華麗なる復讐―』、『シャーロック』、『対岸の家事』、 映画『父と僕の終わらない歌』など。TOKYO FM『DEAN FUJIOKA New Calendar』レギュラーパーソナリティ。
撮影/田頭拓人 取材・構成/河合由樹